「第16回 国際水素・燃料電池展FC EXPO 2020」が2月26日~28日に東京都江東区の東京ビッグサイトで開催された。水素・燃料電池の研究開発、製造に必要なあらゆる技術、部品・材料、装置、および燃料電池システムが出展される中、HEF DURFERRIT JAPAN、ナノコート・ティーエス、TS群馬、TS TUFFTRIDEの4社はHEFグループとして出展。今回は特に、固体高分子形燃料電池(PEMFC)のバイポーラプレート用に開発した、導電性、耐食性、密着性に優れた最新のPVD(物理蒸着)コーティングを披露した。
PEMFCは発電源であるセルを直列に重ねた構造で、セルとセルを仕切るセパレータは、表裏両面をそれぞれ流れる水素ガスと酸素ガスを完全に遮断して各々のガスの流れを制御するとともに、発生した電気を効率良く伝える役割を担う。水素ガス通過面(アノード側)、酸素ガス通過面(カソード側)および化学反応の結果生じる発熱を抑えるための冷却水流路と一体化したセパレータは「バイポーラ(両極型)プレート」と呼ばれ、バイポーラプレートの基材には、機械的物性、高い電気伝導性、高いガス遮断性といったセパレータに要求される性能を満たすアルミニウムやチタニウム、ニッケル、ステンレス鋼等の合金が用いられるが、金属表面で発生する電気化学的な腐食への対処が必要になる。この腐食問題を解決するアプローチとしては、バイポーラプレート表面を導電性、耐食性に優れたコーティングで被覆する手法がある。
これに対しHEFグループでは、ステンレス、チタン、アルミニウムといったバイポーラプレートの基材を問わず、高い耐食性(陽極:1μA/cm2未満・アクティブピークなし、陰極:1μA/cm2未満)・導電性(100S/cm以上)と低い接触抵抗値(0.01Ω.cm未満)を持つバイポーラプレート向けコーティング(コーティング成分:Au、C、Cr)を開発している。
成膜面を最適な状態にする自動洗浄ラインから、最大の生産効率を実現する専用治具、生産性を最大化する最先端の成膜装置、確かな品質保証とトレーサビリティーを実現する自動カメラ検査装置といったすべての専用生産設備は、フランスで設計・開発・製造され、日本で受託加工を行う際にはナノコート・ティーエスに設置される。
PEMFCバイポーラプレート用PVDコーティングはいずれも、2020年米国エネルギー省(DOE)技術仕様(IA(アノード電流)/ピーク、IC(カソード電流)/ピーク、ICR(界面接触抵抗))をクリア。システム出力や活動領域、活動地域に応じてすでに検証済みの種々のソリューションを提供できるほか、HEFの研究開発センターのサポートのもとでユーザーに最適な新しいコーティングを共同開発できることをアピールした。