トヨタ自動車( https://global.toyota/jp/ )は、金属イオンを通す高分子膜(固体電解質膜)を使いめっき処理の必要な部位にのみスタンプを押すようにめっき処理を施す技術を開発した。また、新技術を活かした新しいめっき処理装置「スタンプ式めっき装置」の普及に向け、ミカドテクノスと兼松の協力により、製造・販売を行うこととした。
現在主流となっているめっき溶液が入った多数の水槽にめっき処理する部品を丸ごと浸す工程が不要となるため、排出される廃液量は約30分の1に、CO2は約3分の1に大幅に削減することが可能となる。また、めっき処理に必要な時間の短縮や工程のコンパクト化にもつながる。
同装置(写真は左右に2基設置した状態。大きさは、1基が横約1m×奥行約1m×高さ約2m)は、装置先端のヘッドの上部に溶液を入れ、めっき処理をする部位に圧着するヘッドの先端には、金属イオンを通す固体電解質膜を装着している。この構造により、基板の中のめっき処理の必要な部位にのみヘッド先端の固体電解質膜を圧着して電気を流すことで、スタンプを押すかのように、膜と接している部分にだけ金属皮膜(めっき)を形成することができる。
従来のめっき処理工程では、銅やニッケルなどめっき処理をする金属が溶けた液(溶液)に基板を丸ごと浸漬して電気を流して金属皮膜を形成するため、めっき処理前後の基板の洗浄も含めて、基板全体を浸せる大きさの多数の水槽が必要となる。基板全体をめっき溶液の入った水槽に浸すため、大量のめっき溶液を使用しなければならならず、めっき処理後に大量の溶液を廃棄する必要がある。さらに、空気中に飛散する有害成分の除去や大量の廃液の処理の設備なども含めて、大がかりな工程となっている。
同社では、環境負荷低減などに貢献するため同装置を自社の自動車生産に関わる取引先だけではなく、様々な業界で多くの企業に活用してもらうことで普及を図る。具体的には、トヨタ自動車が保有する特許とノウハウを真空プレス装置メーカーであるミカドテクノスに供与し、同社にて独自の技術を織り込んで開発したスタンプ式めっき装置を製造し、兼松を通じて販売を行う。今後2~3年を目途にモニター装置として販売し、複数の企業で実証・評価用として使用、2023~2024年頃から実用装置として広く一般向けに販売していく考え。