ナノコート・ティーエス( https://www.nanocoat-ts.com/ )は受託試験サービスの拠点である「トライボロジーラボ」(東京都昭島市)の試験・評価設備を拡充し、新規コーティングの開発につなげる受託試験の体制を増強している。
同社は、精密金型や精密部品、自動車部品などの摩擦摩耗(トライボロジー)問題を解決するPVD(物理蒸着)コーティングの受託加工を手掛けている。ユーザーニーズに応えるコーティングの研究開発を進める一環として、2016年9月にトライボロジーラボを開設。DLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜など硬質薄膜のしゅう動部品への適用を進める上で重要な、トライボロジー試験の受託サービスを始めた。
トライボロジーラボでは、同社が所属する仏HEFグループの「HEF型トライボメータ」を設置。機械の剛性が高く、ラボスケールから実機条件に近いパイロットスケールまで、種々のトライボロジー試験が行える。たとえば近年では、円筒と円筒を直交させて摩耗を評価するクロスシリンダー摩耗試験法を用いて、自動車のピストンピンに成膜したDLC膜などの評価を行っている。
自社開発で外販も行う表面清浄度測定器「コロナサーフ」は、コロナ放電によって電荷を付与する前後の、母材の表面電位(仕事関数)の変化を振動容量法(ケルビンプローブ)で非接触測定し、母材表面の汚染(酸化)度合いを定量評価する。測定は数分で済むため、洗浄プロセスの開発や生産ラインでの部品表面の清浄度管理、成膜前処理管理などにも利用できる。AuめっきやDLC膜の品質管理にも利用されている。
新たに導入した新東Sプレシジョン製の白色干渉顕微鏡「OPTIFIS IS-R100」は白色干渉法を用いて非接触・高精度に、三次元プロファイルでの表面形状・粗さ解析が行える。成膜前後の表面粗さ解析、DLC膜などの摩擦摩耗試験後の摩耗痕の観察、表面形態の観察など表面観察全般に使われている。
また、オプトエレクトロニクスラボラトリ製のDLC膜厚測定装置「EL2」では、DLC膜が透明性を呈する近赤外線領域の光源を用いた光干渉測定によって、DLC膜の屈折率とそれにより導出される正確な膜厚が、非接触で短時間に得られる。形状のあるサンプルの膜厚分布が測定できるだけでなく、パイプ内径上のDLC膜の膜厚、膜厚分布も簡単に測定できる。膜厚分布状態の把握により、成膜プロセスの最適化が図れる。
トライボロジーラボではコーティングの開発案件に絡んだ試験のほか、不良解析を目的とした試験が主となる。開発案件ではコーティングの試験・解析を通じて、成膜プロセスの改良にもつながってきている。そのほか、他の表面改質膜との比較なども実施し、同社のDLC膜の優位性を示すことにも寄与している。熊谷 泰社長は、「引き続き設備も拡充しながら、コーティングの受託加工と受託試験を通じて、産業界におけるトライボロジー課題の解決に貢献していきたい」と語っている。
◆カスタムメード動画はこちら
・Anton Paar社のトライボメータを用いたカスタムメード試験:185℃加熱レシプロモード試験
・Anton Paar社のトライボメータを用いたカスタムメード試験:繊維のレシプロモード試験