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第9回ものづくりワールド名古屋

 

大陽日酸、工業炉向けの水素-酸素バーナの開発を開始

 大陽日酸( http://www.tn-sanso.co.jp )は、水素ガスを燃料として用いる工業炉向けの水素-酸素バーナの開発を開始した。

 同社では水素-酸素バーナを工業炉へ適用するに際して、①水素の1Nm3あたりの低位発熱量は天然ガスに比較して約27%小さいため、天然ガスと同じエネルギーを得るためには多くの流量が必要となる、②水素を燃料とすると火炎温度が高く燃焼速度も大きいため、バーナ近傍が高温になりやすくバーナへの熱負荷が大きい、③火炎温度が高くNOx排出濃度が高くなる、④天然ガスを燃焼させる場合より輻射伝熱が小さい、の課題から、従来のバーナ設計を見直し十分に安定した燃焼が可能な構造を見極める必要があると考えている。

 同社ではこれまで、いくつかの水素-酸素バーナの試験を実施している。まず110kW規模(天然ガス10Nm3/h、水素38Nm3/h相当)の酸素バーナに関して炉内燃焼試験とその数値解析を実施し、炉内温度を評価した。酸素バーナの設計・製作に関してはこれまで培った天然ガス-酸素バーナの知見を応用した。天然ガス専焼と水素ガス専焼の条件で比較したところ、実験においても数値シミュレーションにおいてもほぼ同等の炉内温度を得ることができた。この結果により、実際の炉において水素-酸素バーナを使用する場合、天然ガス-酸素バーナと同等の加熱能力を期待できる。また、シミュレーションの精度を確認できたため、今後は顧客実炉へ水素-酸素バーナを導入した際の予測が可能となった。

バーナ試験炉
バーナ試験炉
実験結果(炉内の温度分布)
実験結果(炉内の温度分布)
数値シミュレーションの結果(バーナ中央断面の温度分布)
数値シミュレーションの結果(バーナ中央断面の温度分布)

 さらに、550kW規模(天然ガス50Nm3/h、水素190Nm3/h相当)の酸素バーナに関して、大気開放場における燃焼試験を実施した。その結果、天然ガス専焼から天然ガスと水素の混焼、水素専焼と燃料を変えても十分に安定した火炎を得ることが可能となり、550kW規模までの水素-酸素バーナの設計・製作に目処を付けることができた。

水素-酸素バーナの火炎
水素-酸素バーナの火炎

 同社では、これまでに開発した水素-酸素燃焼技術をベースに、今後は低NOx化、スケールアップなどの課題解決に取り組み、各種の工業炉向けに様々な顧客ニーズに対応できる最適な水素-酸素バーナの開発を行い、実機への導入を提案していく。