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SEMICON Japan 2024

 

NIMS、オイル浄化できるDLC膜ろ過フィルターを開発

 物質・材料研究機構(NIMS)先端的共通技術部門 高分子材料ユニット 分離機能材料グループの研究者らは、中核機能部門 電子顕微鏡ステーションとの共同で、直径約1nmの細孔を持ち、有機溶媒に耐性のある極薄の多孔性カーボン膜(ダイヤモンドライクカーボン膜:DLC膜)を開発、従来のろ過フィルターと比較して、不純物の除去速度を約3桁向上させることに成功した。

 耐有機溶媒性のろ過フィルターは、超低硫黄ディーセル油の製造、オイルサンド開発での排水処理プロセス、化学工業での溶媒の再利用などに期待がかけられている。しかし、従来のろ過フィルターは、酸・アルカリ、加熱などにより劣化しやすく、細孔径が1nm程度のフィルターでは、水以外の溶媒を透過させることが困難だった。今回の研究では、高強度のカーボン膜を形成させることで、約35nmの薄さでも優れた力学的強度を有するろ過フィルターを作製することに成功した。カーボン膜の内部には、直径約1nmの流路が無数に形成され、有機溶媒を超高速で透過できる。オイルの1成分であるヘキサンの透過速度は、230 L/ h・m2・barを超えており、不純物のモデル物質として用いたアゾベンゼン(分子量:182.2)の阻止率は90%以上だった。この処理速度は、同等の性能の市販のフィルターと比較して、約3桁大きい。

 有機溶媒が配管中を流れる場合、その速度は溶媒の粘度に反比例して増大する。つまり、粘度が低い有機溶媒ほど配管中を速く流れる。今回の研究では、直径1nmという極小の流路でも、このような粘性透過が確認されることが分かった。分子スケールの流れが、粘性という巨視的な物性と関連していることが明らかになった。
高性能ろ過フィルターの模式図。 有機溶媒(トルエン)は、35 nmの薄さのカーボン膜(ダイヤモンドライクカーボン膜:DLC膜)を高速で透過するが、不純物のモデル物質(アゾベンゼン)は、膜により阻止される。このカーボン膜は、ナノ多孔性のDLCからなる。高性能ろ過フィルターの模式図。 有機溶媒(トルエン)は、35 nmの薄さのカーボン膜(ダイヤモンドライクカーボン膜:DLC膜)を高速で透過するが、不純物のモデル物質(アゾベンゼン)は、膜により阻止される。このカーボン膜は、ナノ多孔性のDLCからなる。