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SEMICON Japan 2024

 

HEFグループ、フォトニクス関連3社を買収、防衛・民生用フォトニクス分野参入へ

 仏HEFグループはフォトニクス(光工学)分野のメジャープレイヤーとなりグループの多角化を推進する目的で、フォトニクス関連企業である米国ABRISA Technologies、仏KERDRY、仏FICHOUの3社を買収した。

HEF フォトニクス関連イメージ

 

 HEFはフォトニクス分野において市場調査から科学分析までの、また技術開発から大量生産までの垂直統合モデルを構築してきたが、今回新たに3社が強みとする防衛・民生用フォトニクスという戦略的分野に参入し、長年グループ内で培ってきたPVD/PECVD薄膜やフェムト秒レーザー、表面特性評価ノウハウといった専門知識を、この新分野で活用することによって、60年の歴史を持つ表面処理加工の技術革新を図り、ビジネス活動を拡げていく。

 HEFではフォトニクス分野を多角化戦略の重要な分野と位置付けており、2021年にはフォトニクス事業の売上がグループ総売上の約10%になると見ている。HEFでは戦略的ターゲット市場として防衛・医療・宇宙・デジタルにフォーカス、さらに事業を拡大していきたい考えだ。

 買収したABRISA Technologiesは2020年の売上高が23億円で従業員は142名。1980年以降、精密光学コーティングとカスタムメイドのガラス製品の設計・製造を行っており、米国カリフォルニア州にAbrisa Industrial GlassとZC&R Coatings for Opticsという二つの製造拠点を持つ(総敷地面積は12500m²)。ABRISA Technologiesは、プロトタイプから量産まで、光学ガラスの加工、切断、研磨、処理(ABRISA INDUSTRIAL GLASS)から真空薄膜蒸着によるあらゆる種類の光学コーティング(ZC&R)までを自社で一貫生産している。得意とする技術は、①透明・導電性(電気的接続を伴う)、②反射防止膜、③誘電体フィルターおよびミラー、④耐熱か・腐食防止処理、⑤あらゆる光学、フォトニクス(UV-可視光-IR)向けの表面処理で、一般産業、防衛産業向けの主な適用先としては、①超薄型ガラス製品、②一体型ディスプレイ、③光センサー用フィルター、ビューポート、④過酷な環境下で使用されるコーティングの耐久性改善などがある。

HEF 反射防止膜
反射防止膜

 

 KERDRYはまた、フランス・ランニョン市に拠点を置き、2020年の売上高が3億円で従業員は20名。光学薄膜および金属薄膜成膜専用の実用的な成膜装置を開発。その装置は精緻に制御された高真空下で様々なコーティング薄膜を蒸着・形成できる。現在、PVD装置15台が広さ1000m²以上のクリーンルーム内に設置されており、フォトリソグラフィーにも対応している。宇宙、医療、防衛、航空、デジタルマーケット、さらには高級ファッション業界や研究開発施設向けに、①メタライゼーション:電子ビーム蒸着、スパッタリング、熱蒸着、あるいはそれらの組み合わせであらゆるタイプの基板(ガラス、単結晶、有機)への導体薄膜コーティングの成膜、②UVからIRまでの光学系処理(反射防止、誘電体、インテンスブラック、ダイクロイック、フィルターなど)、③フォトリソグラフィーによるマスキングと光学アッセンブリー製造、などのサービスを提供している。

HEF フォトリソグラフィー
フォトリソグラフィー

 

 さらにFICHOUは、フランス・フレンヌ市に拠点を置き、2020年の売上高が4億円で従業員は35名。1946年以降、常にユーザーニーズに対応した高品質な光学部品を製造しており、2017年にクリーンルームを備えた2300m²の新施設に移転、これにより磨き工程、コーティング工程を統合したより効率的なレイアウトを実現している。2018年にはフランス防衛関連の中小企業向けベンチャーキャピタルDefinvest(ファンド)の支援を受けたことで継続的生産性の改善と持続的企業成長を図っている。あらゆる種類の部品や基板(プリズム、レンズ、ビューポート、ミラーなど)、また、あらゆる種類の材料(ガラス、サファイア、シリカ、金属、UVおよびIRクリスタル)を扱い、λ/20の精度で、φ1000mmまでの寸法に対応。光学系表面処理はUVからIRまで、ガラス、シリカ、クリスタル上の反射防止、セパレーター、反射、ダイクロイックセレクターのほか、一般的なインデックス基板の標準的な処理:反射防止MC400-700nmと反射アルミニウム保護膜にも対応している。主に宇宙、航空、防衛産業や、各種研究機関向けにビジネス展開している。

HEF 光学薄膜蒸着
光学薄膜蒸着

 

 HEFグループ会長のファブリス・プロスト氏は、「この3社の買収でまたとない好機をつかむことができた。3社ともに、フォトニクス分野で世界的プレイヤーになるというHEFグループの戦略に賛同しており、200名もの有能な従業員を迎えることができて本当に喜ばしい。我々が持っているプロセス/表面処理、技術的専門知識が相互に補完し合って生じるシナジー効果は、大きな原動力を生み出すだろう。そして、防衛・医療・宇宙・モビリティ・デジタル等を含む、あらゆる産業分野での新プロジェクト、ビジネスチャンスを次々と獲得していくことだろう」と語っている。