山陽特殊製鋼( https://www.sanyo-steel.co.jp/ )は、独自のニッケル・モリブデンフリー高強度肌焼鋼“ECOMAXシリーズ”の新たなラインナップとして「ECOMAX5」を開発した。同品は、シリーズの特長である優れた強度が部品の小型・軽量化設計への期待に応えることに加え、新たな合金設計によって、ユーザーにおける部品製造工程の省略や簡略化を可能とし、CO2排出削減に寄与する。
同品は、従来のECOMAXシリーズと同等以上の高強度を有していることに加え、ユーザーでの部品製造工程における各種熱処理工程(焼なまし、焼ならし、浸炭処理)の省略もしくは簡略化への適合性をさらに高めている。これらにより、ユーザーにおけるコストダウンに加え、大幅なCO2排出削減への貢献が期待できる。
自動車用ギヤ・シャフト等の小型・軽量化
高い強度が求められる部品には、一般的に、ニッケルやモリブデンなど希少で高価な合金元素を添加または増量した材料が用いられている。ECOMAX5を含むECOMAXシリーズは、鋼の本来の性能を最大限に引き出す高清浄度鋼製造技術をベースに、クロムやシリコン等の合金バランスと鋼材製造時の操業条件を最適化したことで、省合金でありながら大幅に強度を向上し、特に、ギヤ歯面のはく離損傷(ピッチング)に対しては、一般的な肌焼鋼(JIS SCM420)の5倍以上の長寿命を実現している。部品の疲労強度が向上することで、自動車用をはじめ各種機械ユニットのさらなる小型・軽量化に寄与することが期待される。
部品工程の簡素化・省略によるCO2排出削減
肌焼鋼を用いた部品製造工程では、冷間鍛造を行う際、材料を軟化させるために「焼なまし」が施される。肌焼鋼をはじめとする合金鋼の焼なましでは、通常800°C程度のオーステナイト組織となる領域まで加熱した後に、長時間を要する徐冷を経て、炭化物を球状に析出させて材料を軟化させる。ECOMAX5は低温領域の短時間保持によって徐冷を経ずに、従来方法に対し1/2以下の処理時間で炭化物を球状化させて軟化させることができる。 また、焼なましによる球状炭化物が均一に分散して存在することから、冷間鍛造における高精度成型が行いやすくなり、ニヤネット成型の相性が良くなる。 加えて、浸炭処理時の結晶粒粗大化が抑制される特性は、一般的な肌焼鋼や他のECOMAXシリーズの鋼種に対し優れていることから、冷間鍛造後、浸炭焼入れ前に通常施される焼ならしの省略と浸炭温度の上昇による処理時間の大幅な短縮が期待される。