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SEMICON Japan 2024

 

日本機械工具工業会、「令和3年度日本機械工具工業会賞」発表

 日本機械工具工業会( http://www.jta-tool.jp )はこのほど、「令和3年度日本機械工具工業会賞」の受賞者を発表した。業界功労賞で八馬厚雄氏(酒井精工 会長)、田中啓一氏(日立ツール・現MOLDINO 元代表取締役社長)の2名が受賞したほか、技術功績大賞1件、技術功績賞3件、技術奨励賞4件、環境賞5件(環境大賞1件、環境賞1件、環境特別賞3件)が選定された。

業界功労省

■八馬厚雄氏(酒井精工 会長)

【功績の内容】

八馬厚雄氏 八馬氏は、昭和42年5月、日本工具工業会ねじ切り工具専門委員会委員に就任した。以来、現在に至るまでねじ切り工具専門委員会のメンバーとして殆どの委員会に出席し、ねじ切り工具専門委員会メンバーの模範となる大きな存在である。会社においてはタップの発明・考案により数々の特許・実用新案を取得し、独自の製品で国内だけでなく海外にも販路を拡大した。(昭和63年(1988年)12月発明功績賞受賞(大阪府))また、会員代表として平成元年に理事として就任し、現在まで工業会に長きにわたり貴重な意見を発信している。平成18年(2006年)には、永年の会社および工業会の発展への貢献により黄綬褒章を受章した。同工業会では、「今回の『業界功労賞』受賞後も、専門委員会を支援して頂き、会社の繁栄と工業会の発展に益々ご尽力を頂きたい」としている。

■田中啓一氏(日立ツール・現MOLDINO 元代表取締役社長)

【功績の内容】

田中啓一氏 田中氏は、平成22年6月、旧超硬工具協会副理事長、翌年、理事長に就任した。副理事長時代からリーマンショック後の国内市場の縮小、高齢化問題、世界と比較した教育レベルの低下、国内産業の空洞化等の問題を提起した。理事長時代は(1)主要原料であるタングステン、コバルト等価格および需給動向の早期情報入手(2)超硬工具スクラップのリサイクル促進(3)世界切削工具会議(WCTC)2013日本開催に向けた準備に注力した。また、協会始まって以来の大きな懸案となった『コバルトの特別化学物質指定』に関しては、環境委員会メンバーとともに関係諸官庁と度重なる交渉に参加し、紆余曲折はありながらも、最終的には超硬工具ユーザーは規制の対象外という協会の要望がほぼとおる結果に至った。一方、アジア圏で初開催となった2013年世界切削工具会議(WCTC2013)京都会合では、両団体により設立された日本切削工具協会(JCTA)の理事長として、成功裡に導くなど工具業界の振興発展に尽力した。

技術功績大賞

新世代コーティング「Absotech®X」の開発

■奥野 晋氏、小林史佳氏、中山裕博氏(住友電工ハードメタル)

【新規性】

Absotech®X CVD法を用い、nmオーダーでの組織制御を行うことで、従来技術では実現することが不可能であった、平均含有比率80%以上という非常に高いAl含有量のAlTiNを高硬度のf㏄構造を100%維持したままコーティングする技術を世界で初めて確立した。同技術を切削工具へ適用することで、従来のCVD材種の耐摩性と従来PVD材種の耐欠損性を兼備する、高Al含有純立方晶ナノ積層CVD-AlTiNコーティングの量産を実現した。

技術功績賞

非鉄用底刃付きスレッドミルの開発

■依田智紀氏(オーエスジー)

【新規性】

非鉄用底刃付きスレッドミルの開発 ①スレッドミルは側面切削のため、めねじ口元と奥で径差が大きくなる問題点があった。側面からの応力の影響が出にくいよう、スラスト荷重が強くなるような底刃形状に工夫した(イメージとしては突っ張り棒とおなじ)ことに新規性がある。②高能率を狙いスクイを強くし、刃数を増やすと、切りくずがつまるという問題点があった。底刃をネガにして切りくずを細かくし、2溝にすることで切りくず排出性も向上させる工夫をした。

高剛性突切り工具「TungFeed-Blade」の開発

■宮澤駿輔氏、谷口雅弥氏(タンガロイ)

【新規性】

高剛性突切り工具「TungFeed-Blade」の開発 本製品は、ツールブロックがブレードと主分力方向で当接する機構を有し、ブレードのたわみを抑制する高剛性な構造である点に新規性がある。工具高さを従来比最大2倍に向上させたブレードは、3ポケット仕様で経済性にも優れる。ツールブロックは、旋盤タレットと広い接触面積で拘束され、高能率加工にも耐えうる。ツールブロックにサイドスラストピンを設置することにより、ブレードの位置決め精度を向上と同時に、操作性も向上させた。

鋼旋削加工用CVD材種「MC6115」の開発

■佐藤賢一氏、真田智啓氏、佐藤敏博氏(三菱マテリアル)

【新規性】

鋼旋削加工用CVD材種「MC6115」の開発 切削工具用の硬質皮膜として同社を含めAl2O3が使われていたが、結晶配向において同社従来品の10倍以上の値を示す新しいAl2O3結晶配向制御技術の適用により高速切削加工で優れた耐摩耗性を発揮することができる。さらに、積層皮膜の層間付着強度を向上させる新結合層と皮膜内の引張応力の緩和技術の適用により切削時の高い刃先安定性を実現した。

技術奨励賞                   

ハード加工用スカイビングカッタの開発

■山﨑 格氏、佐藤嗣紀氏、西野達也氏(不二越)

【新規性】

ハード加工用スカイビングカッタの開発 熱処理後の高硬度歯車の仕上げ加工において超硬スカイビングカッタを採用するが、工具の欠け、摩耗により短寿命という問題点があった。これに対し、ハードスカイビング加工に特化した、形状、コーティング、材料を採用することによって、安定した工具寿命を達成することを実現したことに新規性がある。

 

両面インサート式汎用肩削りカッタWWXの開発

■神原正史氏(三菱マテリアル)

【新規性】

両面インサート式汎用肩削りカッタWWXの開発 インサート式ミーリング工具はワークと刃先の干渉を防ぐため、切れ刃を工具外側に傾ける(2番逃げ)必要性があるが、両面インサート式の場合、分厚いため大きく傾ける必要がある。結果、切れ刃は工具外側に向き、切りくずもその方向へ生成・排出されやすい。特に壁面加工ではワーク壁面方向に切りくずが排出されることになるため、ホルダとワークとの間に噛み込み、インサート欠損やワーク壁面に傷がつくなどの課題がある。これら課題に対し、インサートブレーカで切りくずを工具内向き方向へ強制的に折り曲げ、噛み込みを防ぐ既存技術は存在するが、切削抵抗は高くなりやすく汎用的に使用することは困難であった。そこで同社では、独自の切れ刃凸形状とねじれすくい面形状を開発し、切りくずを強制的に折り曲げずに工具内側方向へ低抵抗かつスムーズに生成・排出し、噛み込みを抑制する新技術を確立した。

立壁/底面仕上げ用8枚刃エンドミルの開発

■田牧賢史朗氏、 一木順二氏、田中寛明氏(MOLDINO)

【新規性】

立壁/底面仕上げ用8枚刃エンドミルの開発 従来ロング刃長エンドミルでの立壁仕上げ加工は、刃長が長いため同時接触刃が増え、切削抵抗とその変動が大きく、壁面の倒れを抑制することは困難であった。そのため、高精度に加工するためには再加工を繰り返さなければならず、目標精度を確保するための修正工数増加に課題があった。そこで同時接触刃を考慮した外周刃設計(外周ねじれ角38°、刃数8枚刃、ap0.5D、刃長1D)を採用することで、切削抵抗の変動を最小化し、ロング刃長エンドミルに対して加工能率を損なわずに、再加工なしで高精度な立壁仕上げ加工を実現できるところに新規性がある。さらにコーナR刃の刃付け方法を工夫することで、底刃とコーナR刃のつなぎ目をシームレス化し、従来底面仕上げ加工時に課題であった不均一なカッターマークや白濁化を抑制することができ、高品位な底面仕上げ加工も可能となる。

超硬合金高能率加工用エンドミルの開発

■齋藤拓信氏、渡邉昌英氏(ユニオンツール)

【新規性】

超硬合金高能率加工用エンドミルの開発 超硬合金加工用エンドミルとして同社従来品の「UDC-Fシリーズ」があるが、工具寿命と加工能率には改善の余地があった。被削材が超硬合金であることから加工能率の向上は困難と思われていたが、今回の開発品である「UDC-Hシリーズ」では高能率加工に耐えうる新しい刃先処理と、耐摩耗性を強化した改良型ダイヤモンド皮膜を採用することで工具寿命と加工能率を両立して向上させたことに新規性がある。

環境賞

【環境大賞】

■京セラ

 140点満点中120.7点、新型コロナウィルス感染の拡大によって世界経済が大きく低迷し、各社得点が伸び悩む中、得点率86.2%と極めて高い評価結果だった。環境マネジメントシステムに基づく高レベルの組織的な仕組みが構築されており、地球温暖化防止、廃棄物削減等、環境活動に積極的に取組まれ、改善の推進力も高いと判断された。これらの環境活動は、他社の規範となり、2021年度環境大賞にふさわしいと判断された。

【環境賞】

■MMCリョウテック

 同社は2021年度に同協会に入会したが、140点満点中106点と高い評価結果だった。これまでの環境を考慮した継続的な活動や それを維持する仕組みづくりなどの結果が反映され、得点率76.0%という高評価だった。特に地球温暖化防止に対する評価が高く、他社の模範となり賞賛に値すると判断された。

【環境特別賞】

■東陽

■日本特殊陶業株式会社

■ユニオンツール

 総合評価では環境大賞、環境賞の2社に及ばないものの継続して環境調査指標が向上しており、賞賛に値すると判断された。二酸化炭素排出量が生産高原単位で2018年度以降3年連続大きく減少している、総廃棄物量が5年連続減少している、埋め立て処分量が極めて少なく、再資源化率もほぼ100%を継続しているなど、これらは他社の模範になるものであると判断された。