ASTEC/SURTECH/nano tech2022などが開催、表面改質や表面試験・評価技術が一堂に
「ASTEC2022 第17回先端表面技術展・会議」や「SURTECH2022 表面技術要素展」、「nano tech2022国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」など12の展示会が、1月26~28日に東京都江東区の東京ビッグサイトで開催され、表面改質と表面試験・評価関連で多数の展示がなされた。
前工程・後工程を含む表面改質関連では、以下のような出展が見られた。
奥野製薬工業(https://www.okuno.co.jp/)は、アルミニウム用 高絶縁・高耐食性コーティング「Protector HB-LTC2」を紹介した。アルミニウム上に5μm程度の透明皮膜を低温硬化(100℃、20分)で形成可能で、素材の輝きを保ちつつ高級感を実現する。添加剤との併用でマットな質感に変化させることも可能。さらに、顔料による着色が可能で、基本色3色を組み合わせて多彩な色調を創出できる。この皮膜は、耐光性・耐水性に優れることから、外装・屋外向け用途に最適。低温硬化のため陽極酸化皮膜への処理が可能で、陽極酸化皮膜処理単独に比べて、極めて高い耐食性を付与できる。
東ソー(https://www.tosoh.co.jp/)は、めっき処理、プリント基板加工等で排出される産業排水中の重金属除去が可能な排水用重金属処理剤「TXシリーズ」を紹介した。汎用:TX-20、高機能:TX-55、ニッケル排水処理専用:TX-55Nと、三つのグレードをラインナップ。従来剤と比較し、硫化水素や二硫化炭素といった有害ガスがほとんど発生しないため、屋内での取り扱いも容易で、安全な作業環境保持に貢献する。すでに、めっき処理会社などでの導入実績・知見が多い。
ナノテック(https://www.nanotec-jp.com/)は、ユーザーの用途に合わせた膜設計から、専用の成膜条件作成による試作、高度・密着力など試作膜の評価、製品化・量産化への対応までをサポートする「コーティング開発試作ビジネス」をアピールした。開発試作のサンプルとして、意匠性の高いチタン(Ti)やクロム(Cr)などの金属膜を施した化粧品用などの樹脂ボトルや、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティングを施したオートバイ用フロントフォークなどを展示した。また研究開発向けに、HiPIMS法やイオン化蒸着法、ダイレクト型プラズマCVD法、DC・RFスパッタリング法など様々な成膜方式が可能なDLC成膜実験機の最新モデル「ICF-330」を紹介した。
日本パーカライジング(https://www.parker.co.jp/)は、DLC相当の性能を軟窒化で実現する特殊窒化処理「SuperiorNite(スペリオルナイト)」を紹介した。表面に酸化層を持ち、その下層に窒素化合物層、窒素拡散層を有するため、DLCを凌ぐ優れた耐焼付き性を実現するほか、摺動熱による浸炭層の軟化を抑制。900HV程度の適度な硬さを有し、処理により基材表面の粗さが大きく変化しない。すでに量産体制を構築しており、DLC代替処理として低コスト化への貢献が可能。
また、表面試験・評価関連では、以下のような出展があった。
Rtec-Instruments(https://rtec-instruments.com/?lang=ja)は、多機能摩擦試験機「MFT-5000」を展示した。摩擦試験では、試験前後のサンプルの正確な深さ、粗さの変化、実際の接触範囲を測定するため、顕微鏡での詳細な観察が重要になる。MFT-5000では、摩擦試験と顕微鏡観察を1台で行うことができるため、サンプル交換の簡略化のほか、摩耗の経時変化による評価など、高いレベルでの表面形状解析に貢献できる。そのほか、一つのプラットフォームでスクラッチ試験、インデンテーション試験、3Dプロファイラー、膜厚測定といった複数の試験が可能な新開発の表面材料試験機「SMT-5000」を紹介した。
アントンパール・ジャパン(https://www.anton-paar.com/jp-jp/)は、コンパクトナノインデンター「Hit300」を展示した。アクティブな防振ダンピングと独自の2レーザーターゲティングシステムにより1nm以内の精度を実現しつつ、幅269㎜×奥行259㎜×高さ420㎜のコンパクトサイズと低価格を実現。直感的なユーザーインターフェースによって、試料の硬さ・弾性率を手軽に求めたい、多点測定を自動で行いたいなどのニーズに手軽に対応できる。自動化により600測定/時間の連続測定が可能。
大塚電子(https://www.otsukael.jp/)は、ゼータ電位・粒子径・分子量測定システム「ELSZneo」を紹介した。ELSZseriesの最上位機種で、希薄溶液~濃厚溶液でのゼータ電位・粒子径測定に加え、分子量測定を可能にしている。新しい機能として、粒度分布の分離能を向上させるため多角度測定を採用。また、粒子濃度測定やマイクロレオロジー測定、ゲルの網目構造解析も可能にした。新しくなったゼータ電位平板セルユニットは、新開発した高塩濃度対応コーティングにより、生理食塩水などの高塩濃度環境下での測定が可能。
新東科学(http://www.heidon.co.jp/)は、触感計「TYPE: 33」を展示した。これまで官能評価の数値化へと定量化することが困難だった、肌触りや感触、なじみ感を数値化できる。三つのストレイン・ゲージを用いてX、Y、Z方向の抵抗力を検出。試料テーブルの上にサンプルを載せて指などでなぞるだけで操作でき、簡単に測定が行える。また、ハンディプローブを使用することで、試料テーブルの上に載せることができないサンプルも測定できる。そのほか、荷重変動型摩擦摩耗試験システム「HHS2000S」や摩擦摩耗試験機「TYPE:40」、ポータブル摩擦計「3Dミューズ」を紹介した。
東陽テクニカ(https://www.toyo.co.jp/microscopy/)は、KLA 社製の超高分解能 薄膜機械的特性評価装置「iNano」を紹介した。極低荷重を高精度かつ安定に発生させる分解能3nNのInForce50型超高分解能押込みヘッドを搭載、ナノメートルオーダーの薄膜や樹脂などのソフトマターの薄膜の硬度・ヤング率を測定できる。さらに、動的押込み試験(連続剛性測定法:CSR)による硬度・ヤング率の深さプロファイル測定やナノスケールの動的粘弾性測定、硬度・ヤング率の三次元イメージングなど、多機能な薄膜機械特性評価が可能。
日本電子(https://www.jeol.co.jp/)は、卓上走査電子顕微鏡(卓上SEM)「JCM-7000 NeoScope™」を紹介した。“誰でもSEM/エネルギー分散型X線分析(EDS)を操作できる”がコンセプトの卓上SEMで、光学像を拡大すればSEM像が観察できる「Zeromag」、分析装置を立ち上げなくても観察中の視野の元素が分かる「Live Analysis」、SEM観察中に三次元観察が可能な「Live 3D」等の機能を搭載した。光学顕微鏡の隣に1台置くことで、異物分析や品質管理をよりスピーディーに、より詳細に実施できる。
パーク・システムズ・ジャパン(https://www.parksystems.co.jp/)は、人工知能(AI)を搭載した次世代自動原子間力顕微鏡(AFM)「Park FX40」を展示した。ロボティクスと機械学習機能、安全機能、特殊なアドオンとソフトウェアを搭載。プローブ交換、プローブ識別、レーザーアライメント、サンプルの位置調整、サンプルへのチップアプローチ、イメージングの最適化など、スキャンにおけるパラメーターおよび事前準備に関わるすべての設定を自動で行える。機械学習の積み重ねでAIによる自動機能の適正化、スキャン前の煩わしい準備の自動化、複数のポイントを目的に応じて自動測定など、自動化AFMの実現によるユーザーの利便性とパフォーマンスを向上させた。
フィッシャー・インストルメンツ(https://www.helmutfischer.jp/)は、微小硬さ試験機(インデンテーションテスター)「FISCHERSCOPE® HM2000」を展示した。DIN EN ISO 14577規格による微小硬さ(HMマルテンス硬さ)ならびに弾性係数の精密測定が行うことができるインデンテーションテスターで、サンプルの位置決めにはプログラミングが可能なXYステージを搭載。圧子はビッカース、ベルコビッチまたはハードメタル球を使用できる。膜厚1μm以上のPVD・CVDドライコーティングや窒化・浸炭などの表面改質層の評価に適用できる。
リガク(https://japan.rigaku.com/)は、反射型X線回折装置用の「全固体電池用充放電セル」を展示した。全固体電池正極材の充放電過程の評価はこれまで、電池セルを解体して 行うex situ測定が中心だったが、この反射X線回折用のin situセルを用いることにより、充放電状態を保ったままでのX線回折測定が可能となる。また、透過型X線回折装置用のラミネートセルアタッチメントヘッドを紹介した。
レスカ(https://www.rhesca.co.jp/)は、新規提案予定の「DLC膜の信頼性および特性試験に関する国際標準化:DLC膜のはく離耐荷重能試験(密着性・疲労摩耗)」に向け開発した、摺動型はく離強度試験機「OST3000」を披露した。DLCを中心とした硬質被膜の界面強度評価法として注目される、荷重増加型摺動試験を行う専用機として開発。耐荷重能測定や、従来の摩耗試験の効率化が可能。測定中に圧子と試料の双方を自動撮影することにより、荷重ごとの変位を画像で確認できる。
会期中は潤滑通信社(https://www.juntsu.co.jp/)の企画によるトライボロジーコーナーが設けられ、Rtec-Instruments、アントンパール・ジャパン、エリオニクス、三洋貿易、島貿易、新東科学、東陽テクニカ、パーカー熱処理工業、日本サーマル・コンサルティングといった、トライボロジー特性の評価・計測に関わる企業の技術・製品がパネル展示された。また、28日には潤滑通信社の企画で東京理科大学・佐々木信也教授によるトライボロジーセミナー「脱炭素化時代に貢献するトライボロジー技術と試験・評価技術」が行われた。講演では、持続的発展可能な社会構築のためのカーボンニュートラル・脱炭素化社会の実現に向けて、トライボロジー技術が果たす役割(省エネの深堀りと高付加価値化)や、脱炭素化時代に求められるトライボロジー試験・評価技術について解説。データの汎用性と信頼性の点からは、試験手順の標準化がなされたOptimol Instruments Prüftechnik(日本総代理店:パーカー熱処理工業)の「振動摩擦摩耗試験機(SRV)」のようなデファクトスタンダード試験機を、点のデータから面・空間のデータへといったDXのためのデジタイゼーションでは、Rtec-Instrumentsの多機能摩擦試験機「MFT-5000」のような連続した測定条件下でのデータ取得が可能な装置を、感性価値の定量化では、新東科学の触感計「TYPE: 33」やPCS Instruments(日本総代理店:島貿易)の「MTMトラクション試験機」といった官能評価との高い相関が得られる装置などを、脱炭素化時代に求められるトライボロジー特性に関する評価・分析装置として紹介した。