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第9回ものづくりワールド名古屋

 

第18回 FC EXPOが開催、バイポーラプレート向けコーティング技術などが披露

 「スマートエネルギーWeek 2022 FC EXPO 春~国際]水素・燃料電池展~」が3月16日~18日、東京都江東区の東京ビッグサイトで開催された。

 トヨタ自動車(https://www.toyota.co.jp/)は、これまで燃料電池車(FCV)「MIRAI」や燃料電池(FC)バス「SORA」の販売、FC製品の開発・製造事業者(FC製品事業者)へのFCシステムの販売、さらにはFC関連の特許実施権無償提供など水素社会実現に向けた取り組みを進めてきたが、今回、燃料電池(FC)システムをパッケージ化したFCモジュールを開発し、披露した。このモジュール化により、トラック・バス・鉄道・船舶などのモビリティや定置式発電機など様々な用途のFC製品事業者に容易に活用してもらうことが可能となる。 そこで同社ではこうしたニーズに対応し、高性能化された2代目MIRAIのFCスタックやエア供給・水素供給・冷却・電力制御など各々のFCシステム関連部品を一つのコンパクトなパッケージにした。定格出力は60kWと80kWの2種、各々に縦型(TypeⅠ)と横型(TypeⅡ)の2種の計4タイプを用意している。FCモジュールは、水素タンクを含まないため、FCモジュールの汎用性を高めるべく、MIRAIで採用実績のある自動車用70MPaの複数の樹脂製高圧水素タンクと水素センサーや自動遮断弁などの安全装置をインテグレートした水素貯蔵モジュールも開発を進めており、併せて紹介した。

トヨタ自動車 水素貯蔵モジュール mst 表面改質
トヨタ自動車 水素貯蔵モジュール

 ホンダ(https://www.honda.co.jp/)は、電動モビリティとエネルギーサービスをつなぎ「自由な移動の提供」と「再生可能エネルギーの利用拡大」に貢献する「Honda eMaaS(イーマース)」のコンセプト実現に向けた手法の一つである「FCシステムの応用・展開」について展示し、これまでのFCの取組みについて紹介するとともに、今後の様々な分野・領域へのFC技術の活用の広がりを提案した。水素社会実現に向けたFCの本格普及を目指し、低コスト化を進め生産効率を高めるとともに、モビリティ領域だけでなくさまざまな分野・領域に適用させるための高い信頼性を確保した「FCパワーユニット プロトタイプ」を展示。これは、ゼネラルモーターズ(GM)とホンダで共同開発を行っている。「FC可搬型電源コンセプト」は、FCを用いた可搬型電源。FCV「CLARITY FUEL CELL(クラリティ フューエル セル)」のFCパワーユニットや、車載向け水素タンクを活用し、パッケージ化した自立型電源供給ユニットで、様々な環境・場所で人々の生活に必要な電力をカーボンニュートラルで提供する。さらに、FCスタックを複数組み合わせた「拡張型FCシステム」は、FCを自動車だけでなく様々なモビリティの動力源や建物などの電源としても用いることが可能で、システムの組み合わせにより様々な用途に合わせた出力を提供できる。

ホンダ FCパワーユニット プロトタイプ mst 表面改質
ホンダ FCパワーユニット プロトタイプ

 IHI Hauzer Techno Coating(https://www.hauzertechnocoating.com)は、燃料電池バイポーラプレートにおいても、導電性・耐食性に優れたカーボンコーティングの高スループット量産装置を紹介、燃料電池車量産フェーズに向けてその市場投入の準備が整っていることをアピールした。インライン式PVDコーティング装置「Hauzer Metalliner®」は、大量生産に適した設計がなされており、高度に自動化された工場ラインへのインテグレートも容易で、モジュールコンセプトのため生産能力増強など高い拡張性を有する。燃料電池バイポーラプレート向けカーボンコーティングでは年間1000万枚レベルもの生産が可能なため、量産フェーズに最適。また、バッチ式PVDコーティング装置「Hauzer Flexicoat® 1500」は、高い次元の拡張性を有するモジュールコンセプトで設計され、様々なコーティング技術を1台の装置に搭載することができる。燃料電池バイポーラプレート向けカーボンコーティングでは年間数十万枚の生産が可能なため、パイロットプロダクション向けに提案している。今回はIHIグループ企業でコーティング受託加工を手掛けるIHI Ionbondと共同で出展、上述の装置販売に加えて、バイポーラプレート向けにすでに実績のある二重にコーティング処理をする「DOT™」やカーボンコーティングの受託加工についても、グループとして対応可能なことを示した。

IHI Hauzer Techno Coating バイポーラプレート向けカーボンコーティング mst 表面改質
IHI Hauzer Techno Coating バイポーラプレート向けカーボンコーティング

 ニシムラ(http://www.nishimura-net.co.jp/)は、燃料電池用金属セパレータ(カソード・アノード)を紹介した。板厚0.1mmのステンレス材料(SUS316L)を均等に伸ばしながら微細な流路を成形(たとえばピッチ=1.2mm、高さ=0.5mmの流路など)。流路高さの均一性は10μm以内で、全体の反り、歪を抑えることで 後工程の溶接やシールの作業性も改善されている。高精度な金型とプレス加工、薄板成形のノウハウから作り出されるセパレータの品質レベルの高さや、セパレータの成形、溶接も社内で行いバイポーラプレートとして提供することも可能なことをアピール。また、コーティングやシール技術についてもパートナー企業との連携で、ユーザーニーズに事細かに対応できることを示した。同社ブースではIHI IonbondやSydrogen Energy(Nanofilm Technologiesグループ企業)といったパートナー企業で成膜されたバイポーラプレートのコーティングサンプルが展示された。

ニシムラ バイポーラプレートのコーティングサンプル mst 表面改質
ニシムラ バイポーラプレートのコーティングサンプル