サーフテクノロジー(https://www.microdimple.co.jp/)は、日本発明振興協会と日刊工業新聞社が表彰する「第47回(2021年度)発明大賞」において、「細菌・カビ・ウイルスの増殖を抑制する表面処理技術」で考案功労賞を受賞した。受賞者は、同社の西谷伴子・研究開発部 研究員、熊谷正夫・取締役 技術部長、下平英二・代表取締役社長の3名。
同社独自の微粒子投射処理「マイクロディンプル処理®(MD処理®)」が基材表面に微細凹凸(マイクロディンプル)を形成することにより、基材表面に抗菌・抗カビ・抗ウイルス性を付与できること、有機・無機抗菌剤を使用しないため安全性が高いこと、コーティングや印刷による構造と違い、はく離による機能損失がなく耐久性が高いこと、さらに、ステンレス鋼で実績がありその他金属表面にも応用が可能なほか、曲面にも適用できること、などが評価されての受賞となった。
MD処理は食品用粉体の付着抑制や滑り性向上、洗浄性の向上などに効果を発揮することから、食品製造設備に共通する異物混入や衛生面での微生物対策、フードロス対策の手法の一つとして採用が拡大している。
一方で西谷氏を中心とする研究開発グループによって、MD処理を施した基材において、大腸菌や黄色ブドウ球菌に対する抗菌性能が付与されることやカビの増殖を抑制する効果、さらには新型コロナウイルスを不活性化する効果が得られることが確認されている(図1、図2、図3)。
今回の受賞にあたり下平社長は、「当社は、“キーテクノロジーのMD処理を常に進化・発展させることで安心・安全に食品ロスや生産性の悪化、エネルギーロスといった問題を解決し、さらなる環境負荷低減につなげ、社会の発展に貢献すること”を理念としている。そのコアとなる技術で発明大賞という大きな賞をいただけたことは大変うれしく、技術の今後の広がりに期待したい」と語っている。
熊谷氏はまた、「食や医療といった人間生活の安全衛生、さらには環境負荷低減に寄与すべく、地道にコツコツと取り組んできたことが評価されたものと思う。当社で開発した技術を食品分野はじめ産業界に広く普及させていくことで、カーボンニュートラル、省エネ、省資源に大きく貢献できる。これからの地球について真剣に考えることは、企業としての責務だ」と述べる。
抗菌性に着目したバイオミメティクス(生物模倣)研究の第一人者である関西大学 伊藤 健教授の研究室で研究を進める西谷氏は、「MD処理による抗菌効果や抗カビ効果、抗ウイルス効果について検証はしたものの、それらの効果発現メカニズムについては解明できていない。引き続き、各メカニズムの解明に努めていくが、伊藤教授のもとで抗菌効果発現のメカニズム解明を優先的に進めたい。薬剤耐性菌への対策は、抗菌薬ではいたちごっことなり、MD処理による形状効果の方が有利と考えている。抗菌効果発現のメカニズムを解明しつつ、技術の一層の向上に努めていきたい。技術が目に見える形で評価されることは少ないが、今回の受賞により技術のお墨付きをもらえたものと、うれしく感じている」と語っている。