メインコンテンツに移動
第9回ものづくりワールド名古屋

 

富士工業技術支援センター、「高耐久性金型のための高度コーティング技術の開発」の研究成果を発表

研究発表のもよう 静岡県工業技術研究所 富士工業技術支援センター( http://www.iri.pref.shizuoka.jp/fuji/ )は、4月17日、静岡・富士市の同センターで、平成21年度~23年度にかけて実施された県新成長戦略研究「高耐久性金型のための高度コーティング技術の開発」の研究成果を発表した。

 このプロジェクトは「日本有数のものづくり県」とする静岡県が、ものづくりに欠かせない金型の長寿命化・高機能化を実現するために「高度コーティングプロジェクトスタッフ」を組織し、コーティング企業と金型使用企業で3者共同研究開発を行ったもの。研究の対象は同県が生産額2位を誇り生産性の高速化が求めらているダイカスト金型と、比較的生産量の多いプラスチック金型のコーティング技術とした。

 冒頭に講演を行った同センター・高度コーティングプロジェクトスタッフの真野毅氏は、「金型の長寿命化を実現する高度コーティング技術の開発」と題して、プロジェクトの成果概要を発表。ダイカスト金型の研究成果では、溶損や焼付きなどによる寿命低下の原因について分析し、耐熱・耐摩耗性に優れた多層コーティング技術を開発。開発したコーティングを用いた金型を実際の生産現場で試験し、寿命の改善による生産性の向上やメンテナンス性改善による現場作業の負担軽減などの効果を実証したと報告した。プラスチック金型では、従来金型の劣化要因を分析し、非粘着コーティング技術を開発。開発したコーティングは従来金型の2倍以上の長期耐久性を実現し、製紙・医療分野など幅広い業種の県内企業から問い合わせや利用が増加していると報告した。

 引き続き、個別の研究成果発表に移行し、同センター・高度コーティングプロジェクトスタッフの田中翔悟氏が「ダイカスト金型用高耐久コーティング技術の開発」(mst2012年4月号に詳細)と題して講演。PVDコーティング技術(物理気相蒸着)によるアルミダイカスト金型の耐久性向上に関する研究発表を行った。研究では、耐久性低下の原因を焼付きと溶損にあること明らかにし、多層複合コーティングにより溶損の抑制、焼付きの大幅減少を確認し、生産性向上を実現するコーティング技術を開発したことなどを試験結果を交えて発表した。

 また、同センター・高度コーティングプロジェクトスタッフの高木誠氏は「高耐久性金型のための高度コーティング技術の開発―耐久性に優れた非粘着性コーティングの開発―」と題して講演。樹脂成型用金型において、従来多用されているフッ素樹脂コーティングと対比させながら、フッ素化合物を用いて離型性・撥水性を兼ね備えた非粘着性コーティングの開発状況を発表した。研究では、フッ素樹脂コーティングの劣化状態を熱的劣化や物理的変形や摩耗、下地との剥離が原因であると解説。開発したコーティングでは、高温化ではフッ素樹脂と同等の性能、耐久性ではフッ素樹脂以上に摩耗や破損が見られないことが実機テストにより明らかになったと報告した。

 続いて同プロジェクトのコーティング開発企業として参画したビヨンズ 産業機械事業部金型課長の植松佑介氏が「共同研究によるオリジナルコーティングの商品化」と題して、先の発表で行われたコーティング技術を「QLIMAQ LELLYONシリーズ」として商品化し、非粘着性コーティング「LELLYON TF」では、従来同社にはなかった特性のコーティング技術として粉末圧縮やゴム、プラスチック成型金型や粘着テープ用カッターなど新たな業界や製品への展開が可能となり、新規顧客開拓の足掛かりになっていると報告した。

 今回の発表は、富士工業技術支援センターの平成24年度研究発表会の一環として行われた。