人とくるまのテクノロジー展2022開催、表面改質技術なども展示
自動車技術会は5月25日~27日、横浜市のパシフィコ横浜で「自動車技術展:人とくるまのテクノロジー展 2022」を開催した。3年ぶりのリアル開催となる同展は、484社/1055小間の規模で開かれ、3日間で43665名が来場した。表面改質関連では、以下のような展示がなされた。
HEFグループは、HEF DURFERRIT JAPAN、TS 群馬、TS TUFFTRIDE、ナノコート・ティーエスの共同で出展。今回は、ナノコート・ティーエス 石川事業所ですでに受託加工を開始している、自動車電装機器の樹脂製筐体への電磁波シールド物理蒸着(PVD)コーティング「PROCEM™」を紹介。自動車電装機器の電磁波シールド仕様を十分にクリアしているほか耐食性が良好で、電磁波シールドめっきと比較した場合の利点として、①めっき処理が可能な樹脂基材に制約があるのに対し、PROCEM膜では、ABS・PC・ポリアミド(PA)・ポリメチルメタクリレート(PMMA)・ポリアリルアミン(PAA)・ポリイミド(PI)・ガラス繊維など、ほとんどの樹脂基材およびコンポジット基材に対して、密着性が極めて高い電磁波シールド被膜をダイレクトに成膜できること、②環境負荷が極めて小さいドライコーティングであること、③めっき皮膜では電磁波シールド性を付与するのに数十μmと厚膜にする必要があるのに対して、PROCEM膜は膜厚1~2μmの薄膜で電磁波シールド機能を付与できるため、樹脂製筐体への成膜前後の寸法変化・重量変化がないことなどをアピールした。
また、固体高分子形燃料電池(PEMFC)のバイポーラプレート(BPP)用に開発した、導電性、耐食性、密着性に優れたPVD コーティングを紹介した。ステンレス、チタン、アルミニウムといったBPPの基材を問わず、高い耐食性(陽極:1μA/cm2未満・アクティブピークなし、陰極:1μA/cm2未満)・導電性(100S/cm以上)と低い接触抵抗値(0.01Ωcm未満)を持つBPP向けコーティング(コーティング成分:Au、C、Cr)となっている。
大同メタル工業は、多種多様なエンジン軸受で使用されている樹脂コーティング「DLA02」、「DLA03」、「DLA04」を中心に同社のコーティング技術を紹介した。アルミ軸受合金上の樹脂コーティング有無での耐摩耗性の検証では、コーティングなしの場合に比べ摩耗量を約90%低減できた結果を報告。また、新たなアプローチとして、将来ニーズを想定し樹脂コーティングを超える耐摩耗性・耐食性を追求した開発中のDLCコーティングの技術を披露した。同社のDLC コーティングは製法の工夫によりコーティング下地の変形に追従できるよう物性を最適化。アルミ軸受合金上のDLCコーティング有無での耐摩耗性の検証では、DLC コーティングなしの場合に比べ摩耗量を約98%低減できた結果を報告した。
また、長年のエンジンベアリングの製造で培われた独自焼結技術によって生み出された、高性能アルミ吸音材「NDCカルム」を紹介した。アルミ粉末を多孔質に焼結した吸音材で、2~3mmの板厚で優れた吸音特性を実現するほか、一般の吸音材にはない耐水性、耐食性、耐熱性を持つ。アルミ板より軽量で、しかも金属的強度を有するため機械加工も容易にでき、部品としての供給も可能。また、電磁シールド性も持つ。新幹線の防音壁から建築用内装材、プレスラインや天然ガス圧縮機など機械用の防音ボックスまで広範に利用されている。自動車分野への適用例としてはマフラー(サイレンサー)内側への装着やエンジンルーム内壁への装着、車外騒音規制に対応するためのエンジンアンダーカバーへの装着(路面側への装着で反射音を減衰)などが見込まれるという。
大豊工業(https://www.taihonet.co.jp/)は、「第72 回自動車技術会賞 技術開発賞を受賞した「高筒内圧エンジン用Bi 合金オーバレイ軸受」を展示した。本開発品は、すべり軸受のオーバレイとして世界で初めてBi-Sb(ビスマス・アンチモン)合金を用いており、従来の純Bi オーバレイで課題となっていた耐疲労性と耐酸化性を、Sb との合金化により飛躍的に向上。さらにSb添加量の最適化により異物ロバスト性にも寄与している。これらの技術をディーゼルエンジンの軸受に用いることで、信頼性と低燃費を両立し、新排気・燃費規制に対応できる。
日本アイ・ティ・エフ( https://nippon-itf.co.jp/ )は、膜組成とプロセスに関する豊富なノウハウを持つDLCコーティングを中心にサンプル展示を行った。一般的にギヤなどの形状に密着性良くDLCを成膜することは難しいとされるが、PVD法とCVD法を組み合わせたDLCコーティング「ジニアスコートHC」は高い密着性を実現。その上で耐焼付き性を従来のCVD法によるDLC膜に対して1.6倍、耐摩耗性を2.4倍以上に向上した。「ジニアスコート HA」は、自動車部品などの耐久性をクリアする高密着力、高信頼性を実現するほか、潤滑下の摩擦抵抗低減に効果がある。
パルメソ( https://palmeso.co.jp/ )はウェットブラスト技術を応用して微細な粒子と水を投射することで、材料の表面から内部まで連続した強さデータを取得できる「MSE試験装置」の紹介を行った。今回は同装置によるアプリケーションの紹介に注力。自動車塗装におけるプロセス違いによる塗膜の機械的特性においては、サンプル2種を耐摩耗特性分布と靭性特性分布で表し、両分布を分析した結果、片方のサンプルが高速・低エネルギーの上、塗装品質も向上することを明らかにした。このほか、めっき前の樹脂表面改質層の強さ分析や超硬チップ表面コーティングの膜質分析と耐久性評価、自動車塗装の加速劣化試験変化などを公開した。同社では、装置販売だけでなく受託試験も行っている。
フィルメトリクス( https://www.filmetricsinc.jp/ )は、測定ユニットと測定ステージが一体化したコンパクトな卓上型の反射・透過・膜厚測定システム「F10-RT」の実機を展示した。 同システムは、反射率・透過率を同時に測定し、膜厚、屈折率および消衰係数を簡単に解析することができる。また、USBケーブルと電源ケーブルだけの簡単な接続、光学系の調整なしで煩わしい設定も不要なため簡単にセットアップが可能となっている。主な用途は、PETやガラス基板上のポリイミドや酸化膜、反射防止コーティング、各種光学フィルムなどのフラットパネル、ガラス、メガネ、レンズなどの光学コーティング膜、薄膜太陽電池など。