東芝は、生産ラインでの外観検査において製品が高速に搬送される中、製品表面のμmサイズの微小な欠陥(キズなど)を広い撮像視野でリアルタイムに可視化・判別する光学検査技術「OneShotBRDF®」を開発した。本技術は微小欠陥の有無に加え、深さも推定することが可能。
この技術は、製品表面からの光の方向を色で識別して(データ化し)μmサイズの微小欠陥を判別する。搬送中の製品を高精度に撮像できる「ラインカメラ」に対応し、光学フィルターを変更することで、凹凸の3Dデータを取得することも可能。また、同社独自の画像解析技術と組み合わせることで、取得画像から微小欠陥を自動判別することもできる。
本技術の特徴は、搬送方向とそれに直交する幅方向で、機能を分離したことにある。搬送方向には、光の方向に応じて色を対応させる光方向識別機能を持たせる。幅方向には、全視野を取得する機能を持たせる。これにより、全視野で欠陥を鮮明化することができるようになったという。
同社は、上記機能を実現するために、搬送方向は平行光で、幅方向は拡散光となる独自の照明と、ラインカメラのレンズの前に設置したストライプ状の多波長開口で光学系を構成した。欠陥のない平滑な被検物に照明を照射すると、光は搬送方向には平行を保ったまま正反射される。それらの光は、多波長開口の幅方向に一様な色の中心ラインを通過し、すべて同じ色として撮像される。一方、被検物に欠陥がある場合、照明光はさまざまな方向に散乱する光となる。多波長開口は搬送方向には色が変化するフィルターとなっているため、それらの光は多波長開口の搬送方向へも広がり、光の方向に応じて異なる色となって撮像される。つまり、欠陥は平滑な周囲とは異なる色となり、鮮明化される。また、照明は幅方向には拡散光となっているため、レンズの有効径に制限されることなく、広い視野で撮像することができる。
この技術を用いることにより、ラインカメラの広い視野にわたって微小な欠陥を色で鮮明に識別することができるようになった。さらに、取得画像の各画素をRGB色空間でのベクトルとして扱う独自の解析技術により、微小な欠陥を自動で識別できるようになる。これらにより、生産ラインにおいて搬送される製品を、リアルタイムで高精度に外観検査することができるようになる。
同社は今後、本技術をシステムに組み込み、システム全体としての有効性を高め、さまざまな生産工程への早期導入を目指す。さらに、AI技術に基づく画像処理と組み合わせ、適用範囲の拡大を進める。