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SEMICON Japan 2024

 

日本熱処理技術協会、2022年秋季講演大会を開催、イノベーション活動を報告

 日本熱処理技術協会(https://jsht.or.jp/)は11月24日と25日の両日、名古屋市熱田区の名古屋国際会議場での対面参加とオンライン参加によるハイブリッド形式で、「第94回(2022年秋季)講演大会」(実行委員長:大林巧治・中部支部長(アイシン))を開催した。オンライン参加を含め約200名が参加して、一般セッションとシンポジウムセッション、田村・川嵜記念講演を含む全35件の講演がなされたほか、企業展示会が盛況裡に行われた。

日本熱処理技術協会 94回講演大会 開催のようす
開催のようす

 24日の開会の挨拶に立った大林実行委員長は「昨日(23日)のサッカーワールドカップでは日本がドイツに劇的な逆転勝利をおさめた。本講演大会でも、特に若い方々にサッカーワールドカップのパワーに負けないようなアグレッシブな発表をお願いしたい。また、久しぶりの対面開催となるこの機会に、質疑応答や意見交換、人材交流を活発に行っていただきたい。」と述べ、本誌取材に対し今講演大会の特色について次のように語った。

 「本講演大会は全てが見どころだが、一つ新しい試みとしてイノベーション活動である新企画『熱処理コンテスト』と『ねつ・が~る』の紹介がある。中部支部では、‟明るく、楽しく、熱く“をスローガンに、熱処理技術に関する学術・技術の発展を通じ、熱処理技術・モノづくりに取り組むすべての人の成長と、サスティナブルで豊かな社会の実現に貢献することを使命に掲げており、これまではセミナー中心の典型的教育活動を実施してきた。しかし参加者も企画する我々幹事も‟明るく、楽しく、熱く”の要素が少ないと考え、中部支部で2つの新企画を試行することにした。
 一つは、支給された試験片に自由に熱処理を施し強度を競う『熱処理コンテスト』で、中部支部発信の企画ながら全国から23チームに参加していただけた。多種多様な熱処理が施され、大企業のチームを抑えて、鳥取県金属熱処理協業組合のTeamTorinetsuが優勝し、コンテストは大変盛り上がった。参加者からは‟熱処理屋冥利に尽きる“、”若手に参加させたい”、‟熱処理の難しさ・面白さをあらためて感じた“など、熱い意見をいただいた。今大会内でのイノベーション活動報告では、その反響から開催が決まった第2回熱処理コンテストの新課題やスケジュールの発表を行い、その場で多くの方々に次回出場の表明をいただいた。
 もう一つは、熱処理に関わる女性からこれまでの歩みを含め自由に自己紹介をしてもらう企画『ねつ・が~る』。これまで8名の『ねつ・が~る』が紹介されており、様々な環境で、女性特有の課題を抱えながらも、職場上司や同僚の支援を受けながら熱処理技術や技能向上への取り組みが聞けて、女性に限らず多くの皆さんの参考、励みになると思う。イノベーション活動に期待していただきたい」。

日本熱処理技術協会 94回講演大会 イノベーション活動について語る大林実行委員長
イノベーション活動について語る大林実行委員長

 24日午後、大林実行委員長を座長にしたイノベーション活動報告では、鈴鹿工業高等専門学校の黒田大介氏から、イノベーション活動のねらい、概要説明と、下記8名の「ねつ・が~る」についての紹介がなされ、また、自薦・他薦を問わない「ねつ・が~る」の募集がなされた。
【ねつ・が~る】
・No.001 NTN 先端技術研究所 佐藤美有さん
・No.002 アイシン 生産技術本部 素形材生技部 舟本三恵さん
・No.003 トヨタ自動車 素形材技術部 表面改質技術室 古賀光絵さん
・No.004 鳥取県金属熱処理協業組合 製造課 高周波窒化係 係長 提嶋恭子さん
・No.005~008 アイシン 岡崎工場 マイルド浸炭ギヤ加工課
      新垣伶実さん、岩元成美さん、河津祐香さん、衣川優紀さん

 次いで、NTNの大木 力氏より、「第1回熱処理コンテスト」の結果、熱処理技術解説と全体考察が発表され、続いて、初代チャンピオンの鳥取県金属熱処理協業組合Team Torinetsuを代表し、川上昭徳氏が「第1回熱処理コンテストへの挑戦」と題して、強さを得るための熱処理技術確立に向けた取組みや、優勝したサンプルの分析・考察などについて発表した。

日本熱処理技術協会 94回講演大会 第1回熱処理コンテスト優勝の鳥取県金属熱処理協業組合を代表して講演した川上昭徳氏(左)と、ねつ・が~るNo.004の鳥取県金属熱処理協業組合の提嶋恭子さん(右) mst 表面改質
第1回熱処理コンテスト優勝の鳥取県金属熱処理協業組合を代表して講演した川上昭徳氏(左)と
ねつ・が~るNo.004の鳥取県金属熱処理協業組合の提嶋恭子さん(右)

 イノベーション活動報告の最後には、トヨタ自動車の西田幸司氏から「第2回熱処理コンテスト」の開催案内と課題発表が行われた。第2回熱処理コンテストの競技内容と新課題、規定は以下のとおりである。
【第2回熱処理コンテスト】
・課題:各1チームにつき以下の材質(および規定形状・規定寸法)の3点曲げ試験片を3本支給。3点曲げ試験における耐荷重が最も大きくなるよう熱処理等を実施し試験片1本を事務局に提出、事務局にて3点曲げ試験が実施され、最大耐荷重が評価
・試験片の材質:SPCC
・熱処理は自由で、試験片の厚さおよび幅の寸法変化が±0.1mmの範囲内であればショットブラスト、表面硬化処理、コーティング、平面研磨も可
・参加申込み受付開始:本年11月28日
・参加申込み受付締切:2023年1月20日
・参加者への試験片発送:2023年2月6日(予定)
・熱処理を施した試験片の提出締切:2023年3月31日
・参加費(税込):7000円/1チーム
・参加資格:1チームに1名以上の正会員、学生会員が参加、または維持会員(ただし、維持会員は1口1チーム参加可能とする)
・結果発表:2023年4月に愛知県技術開発交流センターで開催される「第13回中部支部講演大会」内で発表予定

 さらに24日には、同協会会長の奥宮正洋氏(豊田工業大学)による田村・川嵜記念講演「窒素を活用した熱処理の展望」が行われ、カーボンニュートラル等の課題から期待される窒素の有効活用として、高温のオーステナイト相中に窒素を浸入させた後に焼入れを行い浸炭同様に鋼表面の硬さを向上させつつ圧縮残留応力を付与し疲れ強さを向上させる「浸窒焼入れ」のプロセスなどについて解説したほか、アルミニウムの表面硬化熱処理への窒素の有効活用や窒化アルミニウムの機能材料への応用についても発表された。

日本熱処理技術協会 94回講演大会 奥宮会長による田村・川嵜記念講演のようす mst 表面改質
奥宮会長による田村・川嵜記念講演のようす

 25日には「自動車部品の熱処理技術」をテーマに、大林実行委員長を座長にシンポジウムが開催され、日産自動車の塩飽敬之氏より自動車の電動化と生産技術について概観する基調講演のほか、全5件の熱処理(強化) 技術,装置技術、CAE技術などについての講演がなされた。

 また会期中は、熱処理関連製品、装置を扱う13社(旭千代田工業、ミクニ機工、マコー、アイエムティー、DOWAサーモテック、パルステック工業、山本科学工具研究社、IHI機械システム、日綜電工業、メタルヒート、メトロ電気工業、中外炉工業、堀場製作所)による企業展示会が併設された。

日本熱処理技術協会 94回講演大会 企業展示会場のようす mst 表面改質
企業展示会場のようす

 例えば、メトロ電気工業は、スズキ、中部電力と共同開発し「平成27年度 省エネ大賞 省エネ事例部門 資源エネルギー庁長官賞」を受賞した「赤外線ヒーター式HIGH POWER金型加熱器」を出展した。加熱時間短縮、均一加熱、温度制御が容易、安全性向上、作業環境の改善、金型メンテナンスの低減、製品不良率の低減、設置が容易、CO2削減など、金型の予備加熱の従来方式であるガス燃焼方式における課題解決に伴う各種メリットの発現をアピールした。

日本熱処理技術協会 94回講演大会 メトロ電気工業「赤外線ヒーター式HIGH POWER金型加熱器」 mst 表面改質
メトロ電気工業「赤外線ヒーター式HIGH POWER金型加熱器」

 山本科学工具研究社は、JIS鉄鋼材料から代表的な材料を選定し、第1類から第7類に分類、これらに厳正な熱処理を施した「代表的な金属標準顕微鏡組織を現出した標本集(解説書付属)」を紹介した。大学や企業などにおいて熱処理後の金属組織を理解するための教材として有効利用が可能とアピールした。

日本熱処理技術協会 94回講演大会 山本科学工具研究社「代表的な金属標準顕微鏡組織を現出した標本集のCD-ROM」 mst 表面改質
山本科学工具研究社「代表的な金属標準顕微鏡組織を現出した標本集(解説書付属)」