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SEMICON Japan 2024

 

表面技術協会、第74回通常総会・協会賞など各賞授与式を開催

 表面技術協会( https://www.sfj.or.jp/ )は2月28日、オンライン会議システムを利用したリモート方式により「第74回通常総会および各賞授与式」を開催した。

第74回通常総会のもよう
第74回通常総会のもよう

 当日は第73期事業報告、会計報告が行われた後、第74期事業計画・収支予算について審議、満場一致で可決された。事業報告では、第145回講演大会(3月8日~9日)は新型コロナウイルス感染拡大の状況を踏まえオンライン方式で開催したこと、第146回講演大会(9月6日~7日)は埼玉工業大学との共催により対面開催したことなどを報告した。事業計画では、第147回講演大会を千葉工業大学津田沼キャンパスで開催することや第148回講演大会を山形大学米沢キャンパスで開催すること、ISO/TC107からの提案事項の審議を行うことなどを確認した。

 役員改選では、前期に引き続いて会長に松永守央氏(北九州産業学術推進機構 理事長)、副会長に幅﨑浩樹氏(北海道大学 大学院工学研究院 教授)、山本渡氏(山本鍍金試験器 代表取締役社長)が再任。今期より近藤英一氏(山梨大学 大学院総合研究部 教授)、鈴木一徳氏(スズキハイテック 代表取締役社長)が副会長に選任された。

 理事を代表して挨拶に立った松永会長は「会員数が減少している問題がある。将来計画委員会でも話し合われているが、当協会は特に女性会員が非常に少ない。今年度もう一度各委員会で対策を検討していきたい。研究課題としてはカーボンニュートラルとCASEを含めた新しいモビリティの問題、5Gの問題など色々と表面技術が関わる問題がある。こうした問題についても表面技術誌やセミナーを通して発信していきたい。会員増加にもつながるはずだ」と述べた。

挨拶する松永会長
挨拶する松永会長

 当日の席上では、「2023年度 表面技術協会 各賞授与式」が行われ、各賞選考委員長が受賞者と業績、受賞理由を述べた。協会賞には、安住和久氏(北海道大学 大学院工学研究院 特任教授)が業績「金属の表面処理に関する実験的および理論的研究」で受賞。安住氏は腐食防食および表面処理分野において研究開発を行ってきた。腐食科学分野においては、鉄やチタンなどの不働態皮膜の半導体的性質に関する研究において分光エリプソメトリー、光電流スペクトル、インピーダンススペクトル、電気抵抗法などを活用して、nmオーダーの極薄膜である不働態皮膜の光学物性と不働態電場保持機能の解明、皮膜の厚さおよび構造と電子物性との関係などを明らかにした。またカップリング電流マッピングによるすきま腐食、大気腐食などの腐食進展解析、光電気量マッピングによる金属中水素透過挙動解析など、各種の腐食現象可視化技術を開発している。このほか、高レベル核廃棄物地下埋設環境におけるコンテナ候補金属材料、特に極低酸素濃度環境における銅の腐食挙動解析を進めてきた。近年は、マルチ埋込み電極によるコンクリート鉄筋の腐食挙動解析、氷点下での腐食現象解明に取り組み、カップリング電流マッピングによる氷下の鋼表面の腐食挙動の可視化、積雪下腐食モニタリング、実環境における大気腐食モニタリングなどを実現している。
 表面処理分野においては、アルミニウム、マグネシウムなどの難めっき軽金属合金への耐食めっき前処理に関する研究を進め、アルミニウムの2回ジンケート前処理機構の解明、マグネシウム合金への化成処理および無電解めっき前処理、銅ナノ粒子析出活性化処理を併用したイオン液体浴からのマグネシウム上へのアルミニウムめっきの実現、薄層複合対極からの合金析出など新規めっき法の開発を行った。また、量子計算による電析素過程の解析、イオン液体浴からのチタン合金析出の効率化、イオン液体相変化におけるインピーダンス挙動解析と3成分系相図作成への応用などの新たな手法を開発した。さらに、液中大気圧プラズマの解析と応用、二酸化炭素の電気化学的還元の効率化に関する研究、導電性ポリマー多層膜の製膜と応用、各種pHセンサの開発など、幅広い分野にわたり研究業績をあげている。

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協会賞を受賞した安住氏

 また技術賞では、馬渕豊氏(宇都宮大学 大学院地域創生科学研究科)ら3名が業績「AEを用いた潤滑下におけるDLC膜の密着力評価方法の開発」で受賞。開発された技術は、汎用的な摩擦試験機にDLC膜のはく離を検知するアコースティックエミッション(AE)センサを加えることで、エンジン実部品と相関のある密着力を計測する簡易的な評価方法である。課題解決のポイントは、エンジンにて高負荷条件で頻繁に生じるはく離現象の再現のため、ドロップレット等による表面欠陥の影響の緩和策として先端曲率の大きい3/8inchベアリング鋼球を圧子とした点である。また、無潤滑下での摩擦係数の変動や異物に対する感受性を潤滑下での試験条件に変更することで抑制し、AEのみによる膜のはく離検知を可能とした点である。さらに、密着力評価の際にDLC膜の適用先の油種を用いる場合もあるため、異なる油種の影響に関する解析を行った。その結果、試験後の表面粗さと摩耗による曲率変化を把握し潤滑パラメータλで整理することで、油種違いでのはく離荷重を補正比較する手法を確立した。本技術は、汎用のPin/Disk試験機にAEセンサとアンプのみを装着することで実現可能であり、わずかな投資でDLC膜の密着力を評価できる。本技術の普及のため学会発表や解説記事の執筆がなされており、2022年5月にISO4821すべり軸受-潤滑状態でのDLCコーティング部品の動的接着試験方法として発行された。本技術の確立によりDLC膜の研究・開発が促進され、機械の効率化によるCO2削減やメンテナンス費の削減、性能の向上が期待される。

技術賞を受賞した馬渕氏
技術賞を受賞した馬渕氏

 同じく技術賞で高徳誠氏(JCU 総合研究所)ら4名が業績「ポリイミドへの無電解めっき技術の実用化」で受賞。スマートフォンに代表される小型携帯情報端末には、薄くて折り曲げ可能なフレキシブル回路基板(FPC)が多用されており、絶縁層としてのポリイミドフィルム上に銅の導体層を形成したフレキシブル銅張積層板(FCCL)をもとに製造されている。FCCLの一種であるスパッタ材は、スパッタリング法によりポリイミド上に直接NiCr/Cuシード層を形成し、その後硫酸銅めっきにて導体層を形成している。スパッタ材はポリイミド/導体層界面が極めて平滑で微細配線形成に有利であるが、高価である課題を抱えていた。一方、安価なシード層形成方式として無電解めっき法がある。ポリイミド上無電解めっきプロセスで長年実用化を妨げていたのは熱負荷後の密着強度の低下である。本技術では、その原因がめっき触媒をポリイミド表面に吸着させるためのアルカリ改質層の厚みにあることを明らかにし、めっき触媒にカチオン系末端基を有する塩基性アミノ酸Pd錯体を用いることで10nm以下の薄い改質層へもめっき析出が可能となった。また、これに伴い密着強度は市場要求の150℃168時間後0.4kN/mを達成した。さらに、FPC製造時の配線はく離問題も改質層ナノレベル化が有効であることを明らかにし、量産技術の確立に貢献した。その後、生産性向上のためロール・ツー・ロール式無電解めっき装置の開発に取り組み、めっき触媒のローラー転写・めっき析出、めっき皮膜欠陥が課題であったが、めっき液硫によるフィルムの非接触ターンで解決している。

技術賞を受賞した高徳氏
技術賞を受賞した高徳氏

 受賞者、業績などの一覧は以下のとおり。

協会賞

・安住和久氏(北海道大学 大学院工学研究院 特任教授)
業績「金属の表面処理に関する実験的および理論的研究」

功績賞

・横井昌幸氏(元 大阪府立産業技術総合研究所)
・高島敏行氏(北海道科学大学 顧問、北海道科学大学 名誉教授)

論文賞

岡井和久氏(JFEスチール)、中野博昭氏(九州大学)
業績「亜鉛めっき鋼板の耐白錆性に及ぼす化成皮膜成分複合化の影響」
(表面技術 第72巻 第5号 295~302ページ)

技術賞

・馬渕豊氏(宇都宮大学)、池原賢亮氏(日産自動車)、保田芳輝氏(堀場製作所)
業績「AEを用いた潤滑下におけるDLC膜の密着力評価方法の開発」

・高徳誠氏・松本守治氏・宮田実香氏・福本ユリナ氏(JCU)
業績「ポリイミドへの無電解めっき技術の実用化」

進歩賞

・松本歩氏(兵庫県立大学 大学院工学研究科 助教)
業績「無電解プロセスによるシリコンの表面処理と高感度レーザー分析への応用」
(表面技術 第69巻 第12号 628~632ページ ほか)

技術功労賞

・及川悦男氏(日本プレーテック)
・蘇武岳彦氏(日鉄テクノロジー 研究試験事業所)
・西本信幸氏(東洋鋼鈑 下松事業所 品質統括部)
・大山隆雄氏(JFEスチール 表面処理研究部)
・池田真二氏(メテック 生産部)
・原英樹氏(元 サーテックカリヤ)

会員増強協力者

・井上泰志氏(千葉工業大学 工学部)
・蒲生西谷美香氏(東洋大学 理工学部)
・坂本幸弘氏(千葉工業大学 工学部)