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SEMICON Japan 2024

 

IHI機械システムなど、加工ラインに組み込める真空熱処理装置開発

IHI機械システム「インライン熱処理装置」 IHI( http://www.ihi.co.jp )とIHI機械システム( http://www.ihi.co.jp/ims )は、金属部品の熱処理工程を加工ラインに組み込むことが可能な真空熱処理装置「インライン熱処理装置」を開発、販売を開始した。

 同装置は、独自開発のミスト冷却技術を基に、これまでは加工ラインから独立していた熱処理工程を加工行程の流れの中に組み込むことにより、連続処理を可能にした。近年、増加している多品種小ロット処理においても効率的な処理を行うことで低コスト化を実現する。また、仕掛品をなくし、マテハン(マテリアルハンドリング)に関わる負荷が下がることで、生産性の大幅な向上を可能にした。

 今回、独自開発した「ミスト冷却」は、2種類のミストを制御しながら噴霧する方法で、従来の熱処理装置に使用されている油冷却の高い冷却能力と、不活性ガスを用いたガス冷却の持つ冷却速度のコントロール性の両方のメリットを有する新しい冷却技術。

 ミスト冷却は、油冷却と同じ気化潜熱を利用した冷却法だが、冷媒に水を用いることで、油冷却の倍以上の冷却能力があるという。また、粒の大きな霧で部品を超急冷させ、粒の小さな霧で冷却速度を制御することにより、油による超急冷とガスによる制御性の両方を実現させた冷却技術である。冷媒に水を用いることで、油冷では必要な部品に着いた油を洗浄する工程も不要になる。

 従来の油冷却では、大量処理を行う場合は消防法等の規制により、熱処理設備をラインとは切り離して熱処理場を別途設けるなどの必要があり、ラインでの連続処理は不可能だったが、今回のミスト冷却技術により、ラインへの組込みが可能な熱処理装置を実現させた。

 また、同装置は、コンパクト化を実現し、ユーティリティフリー設計のため、電源のみで、工場内のどこにでも設置可能で、レイアウト変更が容易に行える。

 機能としては、金属部品の一般熱処理(焼入れ、溶体化処理)だけでなく、表面処理(浸炭、窒化など)など、幅広く対応が可能な汎用装置で、多品種の部品の処理が可能。装置1台に付き、加熱室が3室備えられており、60分の加熱サイクルで、一室に10個の部品を充填して処理する場合、3室で同時に30個の処理が可能なため、最短で2分に1個の処理が行える計算になる。この処理スピードであれば、同装置を2台設置することで、従来の処理方法と同量(1個/分)の処理が可能になることから、従来設備と比較して7割弱と狭いスペースで熱処理を行うことができる。

 現在、自動車関連メーカのサンプルテストを実施中で、初年度は3台を目標に販売活動を展開する。