サーフテクノロジー、PFAS対策で非粘着/撥水/親水セラミックコーティングの取扱いを開始
サーフテクノロジー(https://www.microdimple.co.jp)は、パーフルオロアルキル(PFOA)およびポリフルオロアルキル(PFOS)など有機フッ素化合物(PFAS)の規制が日本国内でも本格化しつつある中、食品工場で適用されPFAS対策の施されていないフッ素樹脂コーティングの代替となる非粘着性を有しつつ、フッ素樹脂よりも耐摩耗性の高いセラミックコーティング「Infinityシリーズ」の取扱いを開始する。
サーフテクノロジーではPFAS対策強化を見据え、早くからフッ素樹脂コーティングの代替として粉体などの滑り性を向上させ洗浄性を高められる「マイクロディンプル処理(MD 処理®)」の提案を進めており、PFAS 問題への自主対応を強力に進める食品業界において篩やホッパー、フライヤーなど幅広い用途で採用が拡大してきている。また、最近ではMD処理®による細菌・ウイルス・カビの抑制効果も認められてきている。
そして今回さらに、食品業界で実績のある非粘着・耐摩耗性を付与するYMM 製セラミックコーティング「Infinityシリーズ」の販売を開始しフッ素樹脂コーティングの得意とする非粘着用途をカバーしつつ、さらに耐摩耗性を高めるという付加価値を提供すべく、YMMとInfinityシリーズの販売総代理店契約を結んだもの。
セラミックコーティングInfinityシリーズはもともと大東化成が2010年ごろから取扱いを開始、フッ素樹脂コーティングの代替として、食品工場での適用実績は少なくなかった。しかし、同社の組織上の問題からユーザー対応が停滞していたことから、2020年に食品輸送事業を主体とするYMM(旧社名:YMMフードサービス)へと大東化成から事業が譲渡され、YMMがコーティング事業部を新設してInfinityシリーズを販売することとなった。
だが、YMMに事業譲渡された時点で食品工場への販売ルートはほとんど途絶えており、食品工場においてフッ素樹脂コーティングを代替し強化できる可能性のあるInfinityシリーズの適用を進める方策がない状況にあった。そこでMD処理®やDLCコーティングなどの食品工場での採用が拡大しているサーフテクノロジーの名声を耳にしたYMMの経営陣が、サーフテクノロジーに対し、食品分野で構築された同社のネットワークを通じてのInfinityシリーズの拡販を願い出た。
下平英二・サーフテクノロジー社長は、「2022年12月に東京ビッグサイトで出展していた展示会の当社ブースをYMMの社長、会長、コーティング事業部長が突然訪ねてきた。その後もYMM経営陣の二度の来社があり、YMMのコーティングを売ってほしいと言う。三顧の礼ではないが、ノンフライめんの蒸熱工程での付着抑制などでInfinityシリーズが使われていたが入手できないと顧客から聞いていたこともあり、PFASの規制が急速に進む中でのフッ素樹脂コーティング代替のためのラインナップ増強も目的に、Infinityシリーズの販売総代理店を務めることを決めた。フッ素樹脂コーティングが大幅に値上げする傾向にあることもあり、フッ素樹脂コーティングと同等程度の非粘着性と優れた耐摩耗性を付与できるInfinityシリーズの価格優位性は、当社の食品分野でのネットワークを通じて適用を広げられると考えている」と語る。
今回、サーフテクノロジーが取扱いを開始するのは、非粘着・耐熱・耐摩耗性セラミックコーティング「Infinity 530(YMM製品名:Infinity 330改)と、撥水性セラミックコーティング「Infinity 531(YMM製品名:Infinity GL-1)」、親水性セラミックコーティング「Infinity 532(YMM製品名:Infinity GL-2)」。
Infinity 530 はファインセラミックス(SiO2)を原材料に使用した平均膜厚20μmの無機系コーティングで、フッ素樹脂コーティングと同等の非粘着性を有しつつ、フッ素樹脂コーティングでは対応できない450℃の高い耐熱性と鉛筆硬度9H の高い耐摩耗性を実現する。ゾルゲル複合材料技術(アルコキシド系ゾルを加熱などによりゲル状態とし、セラミックスなどを合成する化学操作の一つ)の適用で有害な有機バインダーを含まずに高い密着性を実現できる、安全なコーティングとなっている。
Infinity 530 は表面に非粘着性を付与できることから、チャーハンや卵焼き、ハンバーグなどケチャップや調味料などが多用される、フッ素樹脂コーティングが適用されてきたアプリケーションで、さらに耐摩耗性を付与でき、非粘着の効果を持続できる。また、水蒸気が浸透しない耐スチーム性を有することからは、水蒸気で蒸すノンフライめんのくっつきなども防止できる。
一方、Infinity531、Infinity 532 はポリマーを含まない完全無機質な膜厚1μmのセラミックコーティング。Infinity 531は撥水性に優れ、Infinity532は親水性に優れる。水と有機溶媒からなる反応液中において、加水分解、脱水縮合させた後、200℃以下の温度でガラス化。Infinity 530で必要とされる下地処理のサンドブラスト処理が要らないため、母材を傷つけることがないほか、下地処理が必要ない膜厚1μmの薄膜のため刃物などの薄物に適用できる。また、内径0.5mmといった細い配管の内面でも耐腐食性向上を目的とした適用実績があり、配管内面のアプリケーションにも提案を進める。
Infinity531、Infinity 532 は膜厚1μmの薄膜のため、MD処理®による微細な凹凸をトレースでき、MD処理®が実現する滑り向上や付着抑制、洗浄力向上といったテクスチャーの形状効果を持続できる保護膜としても、有効と見られる。サーフテクノロジーでは、MD処理®の保護膜として耐摩耗性の高いDLCコーティングの採用実績も多いが、DLCコーティングを使うだけの耐久性が必要のない用途では、比較的低コストのテクスチャー保護膜としても、Infinity531、Infinity 532が利用できる。
これまでMD処理のアプリケーション開拓を手掛け、今回Infinityシリーズの販促を担当することになったサーフテクノロジーの新井正彦氏は、「粘性のある食品を扱うローラーの表面などにはフッ素樹脂コーティングの被覆が多用されてきたが、Infinity 530はフッ素樹脂と同等程度の非粘着性を付与でき、フッ素樹脂以上の耐摩耗性によって非粘着性を持続できる。また、Infinity531、Infinity 532 は(ブラスト処理を伴わない)平滑な薄膜のため、ふき取りが容易で衛生的に優位。いずれも、多くの点でフッ素樹脂コーティングの代替が狙えると思う。PFAS対策は必至で、評価し置き替えるには時間を要するため、早期に着手すべき。MD処理®は食品分野では比較的新しい技術になるが、早くからPFAS対策に取り組む食品メーカーは積極的に試験評価し採用している。MD処理®の販促に際して実施したように処理の性能やメリットが分かる試験動画をInfinityシリーズでも制作するとともに、MD処理®とInfinityシリーズとの複合処理のテストピースを作製し食品メーカーに提出して評価してもらうことなどにより、フッ素樹脂コーティングの代替を加速させていきたい」と意欲を語っている。