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SEMICON Japan 2024

 

神戸製鋼所、燃料電池セパレータ用チタン圧延材が市村産業賞 功績賞を受賞

 市村清新技術財団主催の「第55回(令和4年度)市村賞」において、神戸製鋼所の佐藤俊樹氏、淺 勇輔氏、トヨタ自動車の萱嶋 浩一氏が燃料電池セパレータ用チタン圧延材「NC(Nano-Carbon composite coat)チタン」で「市村産業賞 功績賞」を受賞した。NCチタンは、同社の技術開発本部と素形材事業部門が材料を開発し、機械事業部門の持つ設備技術を融合し、トヨタ自動車とともに世界で初めて量産化に成功したもの。今回の受賞テーマとしては「水素社会実現に貢献する燃料電池向け表面処理チタン材の開発」となる。

NCチタンのコンセプト(断面イメージ図)
NCチタンのコンセプト(断面イメージ図)

 市村賞は、我が国の科学技術の進歩、産業の発展に顕著な成果をあげ、産業分野あるいは学術分野の進展に多大な貢献をされた個人またはグループを表彰し、市村産業賞、市村学術賞、市村地球環境産業賞、市村地球環境学術賞の4分野が設けられている。市村産業賞は、優れた国産技術を開発し、産業分野の発展に貢献・功績のあった技術開発者に贈呈する表彰で、本年4月17日に帝国ホテル 東京で贈呈式が開催された。

 カーボンニュートラルに向けた水素社会実現のためには燃料電池自動車(FCEV)の普及拡大が求められており、基幹モジュールである燃料電池を大量に供給する必要がある。燃料電池1台に対して、その主要部品であるセパレータは数百枚搭載されるが、既存セパレータは生産性の低さが課題であり、燃料電池の大量供給の妨げとなっていた。
 
 同社はチタン表面の酸化被膜中に導電性のカーボン粒子を分散含有することでナノメートルオーダーの緻密な被膜”Nano-Carbon composite coat”を開発した。さらに、表面処理の生産性を高めるコイル状チタン材への連続表面処理技術も確立した。NCチタンは、プレス成形でも皮膜がはく離せず、燃料電池内部の酸性腐食環境でも表面導電性を維持することが可能となる。

 既存セパレータは、切板状態のセパレータを1枚ずつ表面処理する必要があり生産性に課題があった。同社は本技術により、表面処理を高速・高効率化し、生産律速であったプレス成形後の表面処理工程を省略できるプレコート型セパレータの実用化を世界で初めて実現した。その結果、セパレータの生産性が大幅に改善され、燃料電池の大量供給が可能となった。NCチタンは2020年に量産を開始し、同年12月にトヨタ自動車より発売のFCEV“MIRAI”に独占的に供給されている。今後、乗用車に限らず、商用車や鉄道、船舶等へ適用を拡大し、水素社会実現への貢献が期待される。

NCチタンと燃料電池セパレータの外観
NCチタンと燃料電池セパレータの外観