自動車技術会は5月24日~26日、横浜市のパシフィコ横浜で「自動車技術展:人とくるまのテクノロジー展 2023」を開催した。499社/1115小間の規模で開かれ、3日間で63810名が来場した。表面改質関連では、以下のような展示がなされた。
HEFグループは、HEF DURFERRIT JAPAN、TS 群馬、ナノコート・ティーエスの共同で出展。今回は、TS群馬で量産処理を手掛けることが決まった環境対応塩浴軟窒化プロセス「CLIN(Controlled Liquid Ionic Nitrocarburizing)TM技術」に関する、新たな用途展開について紹介した。CLINTM技術の特徴としては主に、高い耐摩耗性(耐焼付き性)、高い耐食性、黒色均一外観(意匠性)、環境対応などが挙げられ、耐摩耗性、耐食性の要求事項に対応できることに加え黒色均一外観が好感され、二輪のブレーキディスクで欧米をはじめとした各OEMに採用されている。
今回の展示では、欧州委員会(EC)が2022年11月に提案し、乗用車が2025年7月、バスやトラックなどの大型車2027年7月に規制対象となる、自動車の新たな環境規制「Euro7」において、Euro7規制対策として、新たにブレーキパッドとローターの摩擦によって排出される粉塵が規制対象に加わることから、パッドと摺動するローターの摺動面にCLIN TM技術を施すことで、高い耐摩耗性が表面に付与されることによる粒子(摩耗粉)排出量を低減できることをアピールした。また、ガス窒化処理と比較して優れた耐食性を有することや、ブレーキの異音/鳴きを低減できること、処理後歪み低減を考慮した処理プロセスとなっていることなども訴求した。
キーパーは、燃費改善、電費改善につながるゴム製品表面の低摩擦化技術を紹介した。ゴムに自己潤滑成分を練り込み、成形後に自己潤滑成分が表面に移行することで低摩擦化が可能になる「ルブラバー」は、グロメット・Oリングにすでに適用されている。
また、ゴム表面にPTFEを含有したコーティング液を塗布することで滑り性および耐摩耗性を向上させる「PTFEコーティング」(オイルシール全般に適用可能)や、ゴムの極表層の分子構造をハロゲン化させることで低摩擦化を可能にする「ハロゲン化処理」(グロメット・Oリングに適用可能)、さらに、ゴム表面に非結晶の炭素膜を形成することで滑り性および耐摩耗性を向上させる「DLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティング」(オイルシール全般に適用可能)を参考出品した。炭素膜がブロック状に形成されているためシールの変形への追従が可能で、動摩擦係数0.2の低摩擦化と同時に密封性の確保が実現できることをアピールした。
日本ピストンリングは、ピストンリングの耐摩耗性向上や摺動特性改善のために既存技術として確立している表面改質技術を活用することにより、防食や生体、電気など新たな分野への応用展開が図れることをアピールした。高硬度・低摩擦・化学安定性・耐焼付き性を付与できることからピストンリングに採用されているDLC膜が耐食性にも優れることから、耐食環境で用いられる金属製機械部品を保護できることを示した。また窒化チタン(黒TiN)膜が生体親和性に優れ表面積を増やせ静電容量を約5倍アップできることから、生体埋め込み型などのメディカルデバイスへの適用が可能であることを示した。
ブースでは、ピストンリングやギヤ部品、ボールねじ循環部品といった金属部品にDLCコーティングを被覆したサンプルや、ステンレスパイプにTiNコーティングを施したサンプル、PEEKやPETなどの樹脂材料・樹脂部品にTiコーティングを施したサンプルなどを展示した。