プロテリアル( https://www.proterial.com )の「加熱炉を使わない鋼材の焼鈍方法の発明」が、発明協会主催の全国発明表彰において、「朝日新聞社賞」を受賞した。発明者は特殊鋼事業部 安来工場 熱処理技術部 片岡 仁氏、同事業部 同工場 技術部 江口 弘孝氏。
鋼材は、加熱された温度、冷やすスピードによって、オーステナイト、パーライト、マルテンサイトなどに組織が変化(変態)する。この特性を利用して意図的に変態させるのが熱処理であり、目的に応じた適切な特性を得ることができる。前工程である熱間加工後の鋼材は、空気中で冷却されることで簡単に硬いマルテンサイト組織に変化し、 加工が難しくなるだけではなく、鋼材によっては割れてしまう場合があった。これらを解決するために、これまでは加熱炉を使用して、ゆっくり冷やすこと(焼鈍と呼ばれる熱処理)で軟らかいパーライト組織に変態させ、加工しやすくしたり、割れを防いだりしていた。しかし、この方法では加熱炉を使用するため、燃料や電気を必要としていた。
今回受賞した技術は、熱間加工後の熱間金型用鋼などの半製品鋼材において、加熱炉を使用せずにパーライト組織に変態させる焼鈍方法に関するもの。オーステナイトからパーライトに変態する際に発生する熱(変態潜熱)を利用することで鋼をゆっくり冷やし、加熱炉を使用しないでパーライト化することに成功した。具体的には、熱間加工を行った オーステナイト状態の半製品鋼材に保温槽に入れる ことで、変態潜熱を利用した焼鈍を行う。加熱炉が不要なため燃料や電気を必要とせず、それらに由来するCO2排出も削減することが可能となった。 また、保温をしながらの移動も可能で、次工程を考慮した効率の良い生産が可能となる。本技術は、すでにプロテリアル安来工場の焼鈍工程に適用を開始している。