マクダーミッド・パフォーマンス・ソリューションズ・ジャパン、2024年4月、国内2 ヵ所目の拠点を名古屋に開設
マクダーミッド・パフォーマンス・ソリューションズ・ジャパンは9月12日、名古屋市中区のヒルトン名古屋で記者会見を開催、同社の主要顧客となる自動車産業へのサポート強化を目的として、2024年4月に神奈川県平塚市に次ぐ国内2ヵ所目の拠点を名古屋に開設する予定であることを公表した。
今回日本での二次投資を行うのは、表面処理剤・めっき液メーカーで米国コネチカット州に本社を置くマクダーミッド・エンソン・インダストリアル・ソリューションズで、マクダーミッド・パフォーマンス・ソリューションズ・ジャパンはその日本法人となる。米国本社による今回の戦略的投資は、重要顧客である日本の自動車部品メーカーに対し長期的にコミットする姿勢を示すもの。
新拠点「名古屋ラボラトリー」は、名古屋市守山区にある中小企業基盤整備機構の運営するクリエイション・コア名古屋内に本年10月に新設。同施設はインフラが整っていて即時利用できるものの、約4000万円を投じて試作用めっき槽のほか、耐食性を確認するためのキャス試験機・塩水噴霧試験機、デザイン・意匠性を確認するためのグロスメーター、摩擦係数を測定するCOF試験機、耐摩耗性を評価するテーバー試験機などの試験評価設備(すべて日本製を予定)の導入完了を待つ必要があることから、半年後の来年4月から本格稼働する予定としている。
現在は既存および新規顧客の担当営業として3名がリモートワークを始めているが、稼働にあたり2名の試作・実験担当者を新規採用する計画で、順次人員を増やして、地域の雇用創出にも寄与していく。
マクダーミッド・パフォーマンス・ソリューションズ・ジャパンのめっき液は、防錆・防食、装飾などを目的に、アルミホイールやフロントグリル、ドアノブ、インストルメントパネル、ファスナー部品など自動車の内・外装部品に幅広く使われている。中でも、金属材料を使用せずに、樹脂にメタリック感を与える装飾めっきは軽量化(省燃費化)の点から採用されており、より薄膜化することで軽量化に貢献している。同社は長年にわたり、中部圏9県(富山県、石川県、福井県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県)にある、50社超の一次(Tier 1)、二次(Tier 2)自動車部品メーカーをはじめとする企業にめっき液を納入している。現時点では、これら顧客に対し神奈川県平塚市の本社を拠点に技術サービスを行っているが、自動車関連企業が特に集中し、また地理的に中部圏9県のほぼ中心に位置する愛知県名古屋市に新拠点を構えることで、顧客対応の迅速化を図るとともに事業継続計画(BCP)対策を強化する狙いだ。
日本法人の役割としては大別して、①国内営業活動とめっき液納入後のアフターサービス、②日本企業の海外工場向けの営業活動、③自動車メーカーやTier1の自動車部品メーカーにアプローチして各種ニーズにマッチしためっき薬品を開発し、メーカーに図番指名してもらう「スペックイン活動」、④日本の原料メーカーの調査(調達)、⑤新製品の開発・改良(一部)、⑥同業他社の調査などがある。
名古屋ラボラトリーでは当初、この内の①国内営業活動とめっき液の納入後のアフターサービスと、⑤自動車メーカー、自動車部品メーカーの各種ニーズにマッチする新製品の開発・改良、の二つの機能を主に平塚本社と分担しつつ、時間がかかるが将来のビジネス拡大につながる③自動車メーカーに対するスペックイン活動も、並行して進めていく。
めっき液の機能・品質を保持するには、①の細やかなアフターサービスが必要とされる。めっきは各添加剤の化学反応によって、部品に必要とされる皮膜を形成する効果を発揮する。このため、マクダーミッド・パフォーマンス・ソリューションズ・ジャパンの納品するめっき液や添加剤の多くは、顧客のめっき槽で複数混合して使用される。この混合されためっき液はしかし、たとえば前工程で用いられる脱脂液の混入などによって、次第に機能が低下する場合がある。完全に劣化してしまうと液全量を廃棄しなくてはならなくなるため、同社では定期的に顧客を訪問し、めっき液のサンプルを預かって分析・評価し、顧客のめっき液が最適な状態になるように数%の添加剤を補給するなどのアドバイスを実施して、顧客の製品品質の確保と、めっき液の長寿命化によるコスト削減に貢献している。
環境規制対応を含めた日本の自動車メーカーの独自の要求に適合する、⑤新製品の開発・改良もまた、日本でしか対応できない活動の一つだ。例えば、六価クロムめっきは青白い、まばゆい色調が出せることから装飾めっきとして多用されてきたが、六価クロムがELV指令で規制対象物質となり、欧州向けを中心に三価クロムめっきへの切り替えが進められている。日本の自動車メーカーでは、欧州向けに限らず全車で三価クロムめっきに切り替える動きもある。これに対し、漆黒調の三価クロムめっき「トワイライト」やサテン調ニッケルめっき「パールブライト」が、日本で独自に開発され、エンブレムやプレートなど自動車の顔となるような部品で採用されている。
ジュリアン・ベイショア社長は、「名古屋ラボラトリーが新設・稼働することにより、自動車関連の顧客に対するアフターサービスの充実と、次世代のめっき液の開発・改良の期間短縮が図られることとなる。日本の顧客は当社の環境に優しい製品群の価値を良く認識しており、この自動車ビジネスは大きく成長し、日本での事業拡大を実現できた。日本の顧客は特に持続可能性に積極的に取り組む傾向があるため、電気自動車の市場についても当社のサービスを拡大できるものと期待している。また愛知県へ投資することで日本を拠点とする自動車部品メーカーの市場への当社の浸透がさらに加速するものと期待している。今後さらに日本の自動車業界に貢献できるよう、より一層社業の発展に尽くしていく」と語っている。