JASIS2023開催、表面試験・評価・分析機器などが展示
日本分析機器工業会と日本科学機器協会は9月4日~6日、千葉市美浜区の幕張メッセ 国際展示場で、分析機器・科学機器の総合展示会「JASIS2023」を開催した。展示会では、354社・機関、1096小間(昨年322社・機関、982小間)の出展と「新技術説明会」、「JASISトピックスセミナー」の講演が多数催された。リアル展示会への来場者は16115名(昨年12465名)、新技術説明会の聴講者数は6908名(同9884名)、トピックスセミナーの聴講者数は4991名(昨年2654名)だった。表面試験・評価機器関連では以下のような展示があった。
大塚電子( https://www.otsukael.jp/ )は、測定する人も場所も選ばずに、瞬時に対象物(フィルムやガラスなどの透明材料)の三次元情報として、光の波の情報全て(光波動場)を独自の波面センサで取得して、可視化する光波動場三次元顕微鏡「MINUK」を紹介した。観察および測定対象(以後、対象)から生じる光波動場を、結像素子を介さずに波面センサに記録して、任意の面の像を計算処理で生成する。視野700×700μm、深さ1400μmの三次元情報を対象にフォーカスを合わせることなく2秒未満(標準)で取得して、取得した三次元情報を、後から無段階で任意面を再生できる(デジタルリフォーカシング)。また、防振に優れた独自設計のため設置環境をあまり気にしないで済む。
JFEテクノリサーチ( https://www.jfe-tec.co.jp/ )は、シリコンウエハやガラス、樹脂フィルム、金属などの表面の0.1~50μmの薄膜の膜厚分布を短時間に高精度で測定・表示できる膜厚分布測定装置「FiDiCa(フィディカ)」を紹介した。面分光が可能な同社独自のイメージング分光器「インスペクター」を用い、薄膜の分光スペクトルを測定し、分光干渉法を利用した独自アルゴリズムにより、膜厚の分布を高解像度かつ高精度に測定する。従来の分光干渉法を用いた膜厚計は、点測定のため、走査して面分布を測定すると100点でも1時間以上要していたという。本装置では、150万点の膜厚データを約10分で測定することができ、大幅な効率化が図れる。測定モードは、高精細と高速の二つのモードを備えている。A4サイズの対象を高精細モードで0.2mmメッシュでは約10分間で測定する。高速モードで3mmメッシュでは約15秒間で迅速に測定が行える。
島津製作所( https://www.shimadzu.co.jp/ )は、堀場製作所と共同開発を行った「LC-Ramanシステム」の実機を展示した。同システムは島津製作所の高速液体クロマトグラフ(HPLC)と堀場製作所のラマン分光装置を融合させた計測機器。HPLCの「わける」技術とラマン分光装置の「みえる」技術の融合により、計測の精度や効率を大幅に高めるとともに未知成分の検出も期待できる。HPLCとラマン分光装置をつなぐ専門ソフトウェア「LiChRa(リクラ)」を搭載し、それぞれから得られたデータや試料情報を紐付け一元管理を行う。アプリケーションとしては、ヘルスケア分野ではバイオマーカー探索や生体中成分の分析、食品分野では糖類、脂肪酸の組成分析や新規機能成分の探索、化成品分野では合成化合物の構造推定、不純物評価、化粧品などの成分構造変化分析など。
新東科学( https://www.heidon.co.jp/ )は、直交バランスアーム方式や測定中にカバー可能な機構を採用したスタンダードモデルの摩擦摩耗試験機の実機を展示した。摩擦力を測定する荷重変換器を測定子直上に配置し、不要な機構をなくしたことにより、高いレスポンスとセッティングの誤差を排除した。また、試料テーブルの摺動方向をアームに対して直交させことにより、往路復路の荷重変動をなくし耐摩耗性評価の信頼性を大幅に向上させた。さらにY方向ステージを標準装備して13mmストロークするように設計、一度試験が終わった後もサンプルを付け替えることなく別の部分で測定が行える。オプションのトライボソフトを使用するとパソコンから簡単に条件入力、解析、さらに試験操作まで行える。
THK( https://www.thk.com/ )は、軸受に求められる機能と非磁性を高次元で両立する直動案内「LMガイド」、ボールねじ、ボールスプライン、クロスローラーリングなどの「高機能非磁性製品」を紹介した。磁気をほとんど帯びず、かつ軸受に適した硬度を持つ特殊合金「THK-NM1」を使用することで、比透磁率が1.005未満という高水準の非磁性を実現、強磁場を発生させる核磁気共鳴分析装置(NMR)や電荷を帯びた粒子を扱う透過型電子顕微鏡(TEM)などでの使用に最適。今回はまた、そうした分析装置・観察装置への試料のハンドリングを行い24時間の無人での分析や実験を実施できる、自社製ロボットやロボットハンド「ならいグリップハンド」を用いた自動化システムを提案した。
パーク・システムズ・ジャパン( https://www.parksystems.co.jp/ )は、人工知能(AI)を搭載した次世代自動原子間力顕微鏡(AFM)「Park FX40」を展示した。ロボティクスと機械学習機能、安全機能、特殊なアドオンとソフトウェアを搭載。プローブ交換、プローブ識別、レーザーアライメント、サンプルの位置調整、サンプルへのチップアプローチ、イメージングの最適化など、スキャンにおけるパラメーターおよび事前準備に関わるすべての設定を自動で行える。機械学習の積み重ねでAIによる自動機能の適正化、スキャン前の煩わしい準備の自動化、複数のポイントを目的に応じて自動測定など、自動化AFMの実現によるユーザーの利便性とパフォーマンスを向上させた。
リガク( https://japan.rigaku.com/ja )は、業界初の自己診断機能vestaeye®の搭載により、今までは測定を行わないと判断がつかなかった潜在的な問題も早期に発見し素早く対処することが可能となる示差走査熱量計(DSC)「Thermo plus EVO3シリーズ DSCvesta2」を紹介した。オートサンプルチェンジャー(ASC)付きの場合の測定条件は、単一ウィンドウで簡単に設定でき24試料までセット&1000連続測定が可能なため、測定点数が多いときや長時間の無人測定に有効。各種冷却ユニットや試料観察ユニットとも干渉せずに同時使用が可能で拡張性に優れているほか、センサの機械的強度や熱応力に強いエンボス形状で、耐久性を追求した。