トライボコーティング技術研究会、ATF技術展示会を開催
トライボコーティング技術研究会(会長:大森 整 理化学研究所 主任研究員)は2月22日、埼玉県和光市の理化学研究所 鈴木梅太郎ホールでの「トライボシンポジウム『第26回トライボコーティングの現状と未来』」の開催に合わせて、同研究会発足30周年記念技術展示会「ATF(Advanced Tribo-Fair)30th 技術展示会」を開催した。
ATF技術展示会は異分野への進出、医工連携、高付加価値な表面創製に向け共創していくことを目的に開催。技術を科学する「テクニストガール」こと、声優の明里 瞳さんの司会進行のもと、パネルやサンプル展示、ショートプレゼンテーションによって、以下のとおり自社の技術をアピールした。
Rtec-Instrumentsは、転がり摩擦試験機としてモジュール交換式で摺動形態の自由度が高い多機能型摩擦摩耗試験機MFT-5000を紹介したほか、独自の高速スキャンおよび解析ソフトウェアによりコストパフォーマンスに優れた白色干渉計モデルの3Dプロファイラー「UP-2000」を紹介した。日本限定キャンペーンとして、本年度(2024年3月末日)受注受け付け分に限り、UP-2000を定価950万円(税別)で販売している。
池上金型工業は、超精密切削加工によって金型表面に虹色を発色させ、樹脂成形品にも発色効果を付与する加飾(装飾)を目的とした加工技術・樹脂成形技術である「虹色加工」や、昨年導入したフェムト秒レーザーによって製品表面をテクスチャ加工し撥水や親水の機能を付与する技術、製品表面にナノ構造を加工し、光が反射しない黒色(漆黒)の表面にする「無反射構造技術」を紹介した。
大塚電子は、光の波の情報すべて(光波動場)を独自の波面センサで取得して、可視化する光波動場三次元顕微鏡「MINUK」を紹介した。観察および測定対象から生じる光波動場を、結像素子を介さずに波面センサに記録して、任意の面の像を計算処理で生成する。視野700×700μm、深さ1400μmの三次元情報を対象にフォーカスを合わせることなく2秒未満(標準)で取得、取得した三次元情報を後から無段階で任意面を再生できる。
2022年に設立された樹研工業の合弁企業である日本ハミングバードサイエンティフィックは、透過型電子顕微鏡(TEM)用の試料ホルダーを紹介。流動液体や静止液体中の試料を原子レベルの分解能で可視化できる「液体導入用ホルダー」と、ガス中および高温(1000℃以上)での材料挙動を研究するための「ガス導入用ホルダー」、試料を連続的に傾斜させ撮影した投影像から三次元内部構造を再構成する「トモグラフィー用ホルダー」を展示した。
岩手大学 西川研究室は、水のみを加工液(クーラント)にするSDGs対応の工作機械システム「水加工システム(電気防錆加工法システム)」を紹介した。切削油の使用時の作業環境の悪化を防止するほか、廃棄の際の輸送コストを減らし、焼却処理の際のエネルギー消費とCO2排出をなくせる。「低環境負荷・高精度加工を実現する加工液に水のみを使用したマシニングセンターの開発」として「令和4年度成長型中小企業等研究開発支援事業」に採択されている。
埼玉工業大学 長谷研究室は、材料の変形・破壊時に発生する弾性波であるアコースティックエミッション(AE)のセンシングを用いた摩擦摩耗診断とトライボロジー特性評価を行っている。今回は、ワーク側および主軸側各々でのデュアルAEセンシングを用いて、切削加工時に計測されるAE信号の周波数成分変化などを監視する「加工状態モニタリング」のデモを行った。
展示会終了後は、来場者の投票によって優秀な技術展示やプレゼンテーションに対する表彰が行われた。大森 整 選考委員長から「いずれも優れた製品・技術・研究であり、それぞれ社会実装を進めていただくとともに、今回の出展者同士のコラボなども進めていただき、産業界に貢献していただきたい」との総評に続いて、プレゼンターを務めた東京都立産業技術研究センター開発本部 機能化学材料技術部 主任研究員 寺西義一氏から、「優秀技術展示賞」が1位:埼玉工業大学 長谷研究室、2位:岩手大学 西川研究室、3位:大塚電子にそれぞれ贈呈された。また、「技術展示賞」がRtec-Instruments、池上金型工業、日本ハミングバードサイエンティフィックにそれぞれ贈られた。