プロテリアル( https://www.proterial.com/ )は、高い硬度と耐食性を兼備する高硬度高耐食刃物用鋼「YBSTM1」、「YBSTM2」を開発した。切れ味と錆びにくさが同時に要求される医療用メス、カミソリ用替刃、調理用刃物、アウトドアナイフなど幅広い用途が期待できるという。
同社は、強みである金属を中心とした組織・組成制御技術を駆使することで、硬さと耐食性を兼備する高硬度高耐食刃物用鋼を開発することに成功した。YBS1、YBS2 ともに適切な焼き入れを行うことで、プロ用高級包丁の材料として使用される高炭素鋼の青紙Ⓡ2号に匹敵する非常に高い堅さが得られたという。また、塩水噴霧試験において、YBS1はマルテンサイト系ステンレス鋼SUS420J2に相当する高い耐食性を示し、YBS2は耐食性が若干落ちるものの切れ味を重視した包丁に向くマルテンサイト系ステンレス鋼GIN3と同等の耐食性を示す。これらの結果により高い硬度と耐食性を兼備する YBS1、YBS2 は、切れ味と錆びにくさが同時に要求される医療用メスやカミソリ用替刃、調理用刃物、アウトドアナイフ等への幅広い用途が期待できる。
切れ味に優れ、度重なる使用でも切れ味が落ちず、かつ錆びにくいといったメンテナンス性に優れる刃物へのニーズは時代を問わず不変のもの。刃物の切れ味は、主に硬さ、刃角度、表面粗さなどで決まるとされており、錆びにくさ、すなわち耐食性は主にクロムなどの合金元素量に依存する。一般的な刃物用鋼は、SK材や青紙2号に代表される高炭素鋼と、SUS420J2やGINⓇ3に代表される合金元素を多く含むマルテンサイト系ステンレス鋼に大別され、用途に応じて適切な硬さと耐久性を得るための鋼材が選ばれてきた。しかし、高炭素鋼は、焼入れ・焼戻しにより、800HVを超える高い硬さを示すものの、耐食性は著しく低いという課題があった。一方、マルテンサイト系ステンレス鋼は、高炭素鋼に比べて高い耐食性を示すものの、硬さが低いという課題があった。このため、従来の刃物用鋼では硬さと耐食性を高い次元で両立することは困難だったというう。