トライボコーティング技術研究会は6月2日、埼玉県和光市の理化学研究所で「令和6年度第1回研究会(第151回研究会)・総会」をリアルおよびオンラインによるハイブリッド形式で開催した。
当日は、大森 整会長(理化学研究所)の開会挨拶に続いて総会が開催され、令和5年度活動報告・会計報告がなされた後、令和6年度活動計画が報告され可決・承認された。役員改選では、会長に大森 整 氏(理化学研究所 主任研究員)、副会長に熊谷 泰 氏(ナノコート・ティーエス社長)と野村博郎 氏(理化学研究所 大森素形材工学研究室 嘱託)がそれぞれ再任された。
総会後は、以下のとおり2件の講演がなされた。
・「―フェムトを計る―半導体デバイスの高精度質量ガス分析法について」車載デバイスを含め半導体デバイスでは、封止されたデバイスを破壊し検出されたガスの質量分析を行う必要がある。3D積層化している半導体デバイスや接合デバイスにおいて、ウェハと各積層間からの放出ガスのプロセス管理による歩留まり改善が目的で、ガスの成分分析や、どの工程でガスが混入したかをトレースするための分析が求められている。これに対し、真空構造材として適応するために加工後、研磨工程、還元・脱ガス工程、バリア膜形成工程を行い、超低ガス放出の極・超高真空を実現できる同社独自の0.2%BeCu材によって分析室を構成、10-15Pa・m3/s (He) の極小リークを計測することが可能(産業技術総合研究所の超微小リーク校正ユニットによって検証済み)な「破壊分析型超高感度ガス分析装置」を開発していることを報告した。
「歯科用Y-TZP表面へのナノ秒パルスレーザ/熱処理複合改質手法の提案~難削セラミックスへの加工展開~」原井智広氏(新東工業)…歯科インプラントへの応用を目的に、ナノ秒パルスレーザ・熱処理の複合改質したジルコニア表面の特性を調査した。材料学的知見としては、ジルコニアへのナノ秒パルスレーザ改質は表面の変色、還元、低温劣化の促進をもたらし、また、ナノ秒パルスレーザ改質後の変質は、追加熱処理により改善できる。生物学的知見としては、ナノ秒パルスレーザ改質による微細形状は細胞挙動に良好であり、また、追加熱処理はジルコニア表面の化学特性を改修し,生体適合性を向上させるとして、ナノ秒パルスレーザ+熱処理の複合改質のジルコニアインプラントへの有効性を示した。