日本熱処理技術協会(JSHT)は5月27日、28日の2日間、東京都目黒区の東京工業大学 大岡山キャンパスで「第97回(2024年春季)講演大会」を開催、約300名が参加した。今回は、河上・赤見記念講演1件と特別記念講演1件、研究発表奨励賞対象講演(Jセッション)13件、一般講演7件、シンポジウム「ショットピーニング処理の有する無限の可能性」での基調講演1件と依頼講演8件の発表がなされた。
27日は西本明生 大会実行委員長(関西大学)の開会挨拶に続いて、Jセッションの講演が行われ、真空浸炭焼入れやプラズマ窒化、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)成膜などに関する13件の研究成果が発表された。
また、河上・赤見記念講演として、2019年度の同協会「技術功績賞(林賞)」を受賞した大林巧治氏(アイシン)が「水焼入れに憧れ,鑑みて ―焼入れのメカニズムと本質―」と題して、これまでの焼入技術の取り組みや熱処理CAE、油焼入れと水焼入れ、温度分布・熱処理変形の制御、水系焼入れの団体焼入れへの適用による波及効果などについて講演を行った。
さらに、特別記念講演として、第65回本多記念賞を受賞した三島良直氏(東京工業大学名誉教授・日本医療研究開発機構 理事長)が「金属系構造材料の特性向上に資する材料設計手法の探求」と題して、L12型金属間化合物を例に、耐熱高強度金属系構造材料の組織制御による強化や実用耐熱合金開発への応用などについて講演を行った。
続いて、中部支部主催のイノベーション活動として31チームが参加した第3回熱処理コンテストの総合結果が報告された。一般構造用圧延鋼材SS400にそれぞれ工夫を凝らした熱処理やコーティングを施し、ロックウェル硬さ(HRC_150kg)とビッカース硬さ(HV_300g)の合計が競われ、3522HV(3117HV+41.2HRC)の硬さを実現し優勝したアイコクアルファ「楽ラク熱処理チーム」から取り組みに関する紹介がなされた。
その後、2023年度協会賞表彰式、60周年記念特別功労賞の表彰式、研究発表奨励賞の表彰式が行われた。Jセッション13件から若手研究者および技術者の研究発表を奨励することを目的として35歳以下の優秀な発表者を表彰する「研究発表奨励賞」には、最優秀賞に東京工業大学・益川琢磨氏らの「Fe-Ni合金のマルテンサイト変態に及ぼす外部拘束の影響」が、優秀賞には九州大学・大瀧真登氏らの「SUS304の温間加工によるオーステナイトの熱的安定化」と中日本炉工業・田中隆太郎氏らの「アクティブスクリーンプラズマ窒化における処理温度が窒化層形成および鋼の寸法に与える影響」が受賞した。
28日には、CVD法によるコーティングや微小球反発試験による硬さ評価など7件の一般講演に続いて、日本熱処理技術協会とショットピーニング技術協会との連携企画である「ショットピーニング処理の有する無限の可能性」をテーマとしたシンポジウムが開催され、ショットピーニング技術協会会長の當舎勝次氏による基調講演「ショットピーニング処理の歴史と様々なピーニング効果」や「微粒子ピーニングによる食品の付着抑制等と抗菌性」など8件の依頼講演が行われた。
両日とも、「企業技術情報展示会」が併設され、アイ・アール・システム、堀場製作所、アプロリンク、山本科学工具研究社、新東工業、ティーケーエンジニアリング、光産業創成大学院大学(アステック開発)、日本電子工業、パルステック工業、不二製作所の10社が出展した。