島津製作所は走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、以下SEM)大手メーカーであるチェコ共和国のTESCAN GROUP, a.s.(以下TESCAN社)と業務提携契約を結んだ。島津製作所の主力である分析計測製品のラインアップにTESCAN社のSEMを加え、今秋に日本国内で発売を開始する。
TESCAN社はSEM製造のパイオニアの1社だという。同社の本社があるチェコ共和国ブルノ市は電子顕微鏡に関わる企業や科学機関が集中しており、最先端の研究が活発となっている。TESCAN製品の堅牢性および操作性には定評があり、世界80ヵ国で累計4000台以上の販売実績がある。SEMの日本市場は2022年度で170億円規模で、近年は前年度比10%超で成長しているという。
一般的に利用されている光学顕微鏡では、光の波長より小さな物は観察できないが、SEMは光より短い波長の電子線を使うことでnm単位で高解像度の表面観察が可能で、あらゆる科学技術の研究で必須かつ基本の観察分析装置となっている。ただし「電子線を試料に照射し、試料から発生する電子を検出して試料表面の形態や組成の違いを観察する」という原理のため、帯電しやすい非導電性の試料では観察が難しくなり。TESCAN社のSEMは試料の導電性によらず、常に最適な解像度とコントラストの観察画像が得られる。
TESCAN製品による「表面観察分析」と島津製作所の分析計測機器による「成分分析」は補完的な役割を果たすため、組み合わせることで信頼性の高い一貫した分析システムを構築できるという。島津製作所は、TESCAN社との業務提携を通じて、構造生物学やナノテクノロジー、エネルギー材料、金属・鉄鋼材料などの研究開発に従事する顧客に付加価値の高いソリューションや研究プラットフォームを提供していく考え。