表面改質展・真空展2024など7展が開催
「表面改質展2024」「真空展2024」「2024洗浄総合展」など7展(主催:日刊工業新聞社など)が9月18日〜20日、東京都江東区の東京ビッグサイトで開催された。表面改質関連では、以下のような出展があった。
サンエイ( https://www.hojitsu.co.jp/business/hojitsu_erin )は、防錆性・耐摩耗性に優れることから6価クロムめっき・DLCコーティング代替として「ERIN®」を提案した。ERINは「常温衝撃固化現象」を基本に開発されたセラミックコーティング(膜厚1~6μm程度)。基板加熱を行わず、常温・固化状態の微粒子が基板上に衝突しアンカー部を形成する。さらに微粒子の破砕・塑性変形により空隙のない緻密な膜を形成し、従来の表面処理ではできなかったさまざまな特徴を発現するという。同社が行ったテーバー式摩耗試験では摩耗量が硬質クロムめっき(膜厚10μmのうち)0.92μm、DLC被膜が(膜厚2μmのうち)0.63μmに対してERINは(膜厚3μmのうち)0.31μmを示したという。また、中性塩水噴霧試験においても良好な結果を示したという。
TPR(https://www.tpr.co.jp/)は、ピストンリングなど内燃機関部品の製造で培った、金属や樹脂、ガラスなどへも成膜可能な高機能DLCの受託成膜について提案した。通常DLCの特徴として挙げられる耐摩耗性や低摩擦特性ではなく、除電特性や防汚特性についてアピールした。DLCによる除電性(静電気拡散性域)の付与では、低温成膜によって耐熱性が低い樹脂製品への成膜が可能なことや、従来の除電アイテムと比較して、高い耐久性と密着性を実現できることを訴求。防汚特性の付与では、金属、樹脂製品どちらにも成膜でき、DLCの化学的安定性によって水垢が容易に拭き取り可能で、高い耐久性と密着性を実現できることを示した。
東京電子(https://www.toel.co.jp/)は日本原子力研究開発機構との共同開発による、ポンプ作用を持った極・超高真空チャンバー「0.2%BeCu合金超高真空 封止チャンバー」を披露した。超低ガス放出の0.2%BeCu合金に、真空容器の内壁を真空ポンプとして機能させる非蒸発型ゲッター(NEG)コーティングを施すことで、電源を不要とした極高真空の維持を実現。チャンバー仕様:容積6.4×10-4m3、表面積3.2×10-2m2、NEG材料:Ti-Zr-V、NEG活性化:200℃ 25時間の測定条件で、バルブ閉止前圧力1.6×10-9Paに対し、バルブ閉止後圧力5.75×10-9Paと、1カ月以上10-9Pa台を保持する結果となった。
東ソー( https://www.tosoh.co.jp/ )は、PVDやCVDコーティングなどのドライコーティングの前処理に適した炭化水素系高機能洗浄方法「HC-WSエマルジョン洗浄」の紹介を行った。この洗浄方法は、水切り剤である「HC-WSシリーズ」に水を加え、超音波等でエマルジョン化させた液中でワークの洗浄を行う。洗浄後は、HC-250もしくはHC-370で容易にリンスをすることができる炭化水素と水の両方の洗浄作用が兼ね備わっているため、油性から水溶性の汚れまで幅広い汚れを除去できるとともに、乾燥した水溶性加工油や異物等に対しても極めて優れた除去能力を発揮する。また水洗浄と異なり、錆びの心配もない。さらに、液管理が容易なことも特徴の一つだという。同社では、洗浄試験の依頼も受け付けている。
ナノテック( https://www.nanotec-jp.com/ )は、同社の受託コーティングの約6割を占める医療用のDLCコーティング(生体適合性ICFコーティング)をメインに展示を行った。生体適合性ICFコーティングは非常に硬く平滑な表面をしており、科学的に不活性で安定しており、生物に与える影響がなく、環境にもやさしい被膜となっている。このコーティングを施したチタンやステンレスの血小板付着試験では、血小板の付着が著しく低減することが確認されたという。また、低浸食性の効果も期待でき、すでに脳外科や腹腔鏡などさまざまな手術用器具への適用が進んでいる。さらに、ニッケル製の歯科矯正用ワイヤーからのニッケルの溶出防止に効果があることも報告されており、今後インプラントへの広がりも期待できるという。
不二WPC(https://www.fujiwpc.co.jp/)は、部品の耐久性、滑り・凝着対策など金属表面の特性を改善し、寿命延長を可能にする表面改質技術として、微粒子投射処理「WPC処理🄬」とダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティングについて、各種加工サンプルを展示し紹介した。WPC 処理は直径数十μm程度の微粒子を100m/sec以上の高速で投射、加工面のディンプルが油溜まりを形成し摩擦摩耗特性を大幅に向上させるほか、圧縮残留応力の付与や結晶粒の微細化により疲労強度の向上を実現する。DLCコーティングは耐摩耗性や低摩擦特性、耐凝着性、耐食性などさまざまな機能を加工表面に付与で。特に同社のDLCはFDA(米国食品医薬品局)認証を取得しているため、食品製造機器に幅広く採用されている。
ヤマシタワークス(https://www.yamashitaworks.co.jp/)/日本スピードショア(https://speedshore.co.jp/)は、異形状ワークを簡単に短時間で鏡面仕上げ加工できる装置「エアロラップ」を展示した。エアロラップは、ゼラチンを主成分とした食品性研磨材を核に、水分「マルチリキッド」を含有することで弾力性・粘着性を持たせダイヤモンド砥粒を複合させた研磨材「マルチコーン」を、加工材表面を高速で滑走させて発生する摩擦力により磨くもの。乾式と湿式の中間的な湿潤状態で、相手材にダメージを与えずに、精密研磨、最終仕上げや鏡面仕上げを可能にする。DLCなどドライコーティング成膜の前後処理などにも適用できる。ブースではエアロラップとロボットを組み合わせたシステムを披露し、エアロラップ処理の自動化を提案した。