ISAS-TPI薄膜(ロールフィルム) カネカ( http://www.kaneka.co.jp )は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の横田力男博士を中心とする材料開発グループとの共同研究において、従来、高分子膜材料として唯一、宇宙機に利用されてきた耐熱性ポリイミド(PI)に、宇宙環境耐性を損なうことなく、新たな特性として加熱融着性を付与したPIを開発した。
この高耐熱・熱融着性PI(Institute of Space and Astronautical Science - Thermoplastic Polyimide:ISAS-TPI)は、同社の保有するPIの合成技術に加え、JAXAを中心とした複数の企業との協業により厚さ7.5μmのロールフィルムの加工に成功し、2010年5月に種子島宇宙センターから宇宙空間に打ち上げられた世界初の小型ソーラー電力セイル「IKAROS」の薄膜材料として、同社の超耐熱PIフィルム「APICAL-7.5AH」とともに採用された。
ISAS-TPI薄膜は、優れた耐熱性および機械特性により、IKAROSの宇宙空間における正方形状φ20mの大規模展開および航行実験の成功へと導いた実績がある。IKAROSの成功により、ISAS-TPIは近未来の太陽光発電衛星や宇宙大型薄膜構造体等の開発に必須の高分子材料となるものと期待されているという。
すでにJAXA内では次期大型ソーラーセイル開発の検討が進んでおり、ISAS-TPIの本格採用に向けて、①耐引裂性の付与②長期間の宇宙環境で使用可能な接着剤および融着剤としての用途展開③紫外線耐性の改善および透明性の付与(薄膜デバイスの表面保護膜への用途展開)④そして接着特性、加工性の改善の四点を開発目標として掲げて研究に取り組んでいく。