JIMTOF2024が開催、最新の表面改質技術が多数披露
世界最大級の工作機械見本市「JIMTOF2024(第32回日本国際工作機械見本市)」(主催:日本工作機械工業会(日工会)/東京ビッグサイト)が11月5日~10日の6日間にわたって、東京都江東区の東京ビッグサイトで開催された。
JIMTOF2024は、東京ビッグサイト全館を利用して総展示場面積11万8540m2で開催。中国、台湾、ドイツ、スイス、韓国、米国など19カ国・地域の企業・団体が出展し、合計出展者数が1262社/5743小間と2022年に開催した前回JIMTOF2022に比べ175社/125小間増え、60年以上の歴史で最大規模の開催となった。
工作機械は各種機械を動かすための部品を製造することから「マザーマシン」と言われるが、中でも自動車のトレンドが工作機械の要求特性に大きく影響することもあり、JIMTOF2024でも「工作機械 × 未来のMobility」という企画展示が設けられている。
ここでは、JIMTOF2024において披露された、表面改質技術の一端を紹介する。
厚地鉄工( http://www.atsuchi-ascon.co.jp/ )は、ロボット1台でブラスト処理から搬送までを可能にした「ABS-BS3-AT」の実機を展示。昨今、需要が急増しているロボットとブラスト装置を組み合わせるシステムを提案。ティーチングも含めた多品種対応が可能な点や、ロボットによりブラスト処理の高効率化、品質安定化、省力化を図れる点を訴求した。また、直接見ることのできないパイプ製品の内面をブラストする専用機「AR型」も紹介。標準機でパイプの寸法200~800(φm/m)まで対応しており、それ以外のパイプ寸法は特殊機で対応が可能だという。
エリコンジャパン( https://www.oerlikon.com/ )は、切削工具において従来コーティングであるBALINIT ALCRONA PROよりも30%以上の工具寿命を向上するコーティング「BALINIT ALCRONA EVO」を紹介した。被膜構造の最適化と硬度向上による耐摩耗性向上、被膜の靭性向上による性能向上、圧縮応力低減によるはく離リスクの低減、熱伝導率が低いことによりハイス工具のクレーター摩耗を低減することなどが特徴として挙げられるという。また、優れた耐摩耗性により、再研磨時の再研磨ストックの量は削減され、工具あたりの再研磨サイクルの回数は増加する。これにより貴重な資源を節約し、顧客は新しい工具コストを大幅に削減することが可能になるという。
神戸製鋼所(https://kobelco-coating.com/jp/)は、従来品と比べて、生成する被膜の長寿命化を達成したアークイオンプレーティング(AIP)装置「AIP-iXシリーズ」を紹介した。搭載した新型蒸発源「μ-ARC」により、被膜の金属元素のうちAl含有率が70at%以上でも立方晶を維持、硬質で表面粗度も良好なAlCrN被膜の成膜が可能。また、新型エッチングシステム「Me-FAPE」が奥まった部分の密着性を向上し、処理空間内でのエッチング性能の均一性も改善。これら搭載機能により、従来のハイエンド工具と比較して約1.5倍の寿命向上が確認されている。さらに、広範囲な操業データをサンプリング・表示可能な状態モニターシステムを採用、トラブル発生時のスムーズな原因特定に貢献する。
新明和工業(https://www.shinmaywa.co.jp/products/vacuum/)は、ダイヤモンドコーティング装置による多結晶ダイヤモンド成膜および研磨技術の提案により、切削工具だけでなく、面精度や寸法精度が要求される精密金型へもダイヤコートを可能にし、金型の超長寿命化に貢献できることを訴求した。同社のダイヤモンドコーティングはプレス金型への被覆において、水素フリーDLCに比べ15倍以上の耐久性が確認されている。そのダイヤモンドコーティングとの組み合わせで短時間研磨を、電解アシストによって短時間での平滑化を実現している。精密工具において、先端から側面までの鏡面研磨を可能にしている(特許第7212579 ダイヤモンド被膜付き部材およびその製造方法ならびにダイヤモンド被膜の平滑化方法)。
日本コーティングセンター(https://www.jcc-coating.co.jp/)は、製品の寿命や性能を向上させることにより、環境負荷を低減する「環境貢献型製品」であるコーティング技術を紹介した。中でも新製品として、デンソーと共同開発した、切削工具のリユースの回数を増やしても工具径の減少が極めて少ない、工具寿命を大幅に延長する工具再生技術「DeCoat α」を初披露した。高硬度鋼の高速・高能率切削で高い切削寿命を実現できる「プライムコート-T」などのチタン系コーティングと基材の間に、新開発の保護膜を加えたDeCoat αを施した切削工具(評価では超硬エンドミルを使用)の切削性能の検証では、5回の除膜・再コートを繰り返しても新品同様に定数加工が可能で、刃先の摩耗幅に変化がないことが確認されている。工具径の測定結果からは、DeCoat αを施した工具では3回の除膜・再コートを繰り返しても元の寸法に対する変化が±1μm以内に抑制されていることが確認されている。
日本スピードショア(https://speedshore.co.jp/)/ヤマシタワークス(https://www.yamashitaworks.co.jp/)は、異形状ワークを誰でも簡単に短時間で鏡面仕上げ加工できる装置「エアロラップ」を展示した。エアロラップは、ゼラチンを主成分とした食品性研磨材を核に、水分「マルチリキッド」を含有することで弾力性・粘着性を持たせダイヤモンド砥粒を複合させた研磨材「マルチコーン」を、被加工材(ワーク)表面を高速で滑走させて発生する摩擦力によって磨くもの。乾式と湿式の中間的な湿潤状態で、相手材にダメージを与えることなく、精密研磨、最終仕上げや鏡面仕上げを可能にする。各種金型部品の磨き時間短縮、切削工具の寿命延長、DLCなどドライコーティング成膜の前後処理など、さまざまな用途で使用が可能。ブースでは今回、エアロラップ汎用仕様はもちろん、自動化ロボット仕様や、本展示会が初出展となる協働ロボット仕様の稼働展示も行った。
日本電子工業(http://www.ndkinc.co.jp/)は、金属部品の表面改質に使う高周波誘導加熱装置向けの誘導加熱コイルなどを3Dプリンターで造形したサンプルを展示した。同社では、金属粉末を敷き詰めて電子ビームで溶かして固めるパウダーベッド方式の日本電子製金属3Dプリンターを導入しており、純銅粉末を用いた造形において、エネルギー効率の高い電子ビームを採用することで、高い熱伝導率と導電率を有する純銅の造形を可能にしている。無酸素銅で作られた誘導加熱コイルと同等の高品質なコイルを造形できるほか、ヒートシンクや電気部品も造形できる。造形はホットプロセスで行われるため、熱応力による反りや曲がりの発生が少なく、後加工を低減できる。金属3D造形サービスとして、①銅の試作受託造形、②顧客との共同による製品開発支援、③金属3D造形品に関する試験サービスを手掛けていることを紹介。地球環境に配慮した製品作りによって持続可能な社会に貢献していることをアピールした。
パーカー熱処理工業( https://pnk.co.jp/ )は、同社独自の次世代型自動制御ガス窒化システム「NITRONAVI®」を搭載した窒化装置「RAV-N」を広築と展示した。NITRONAVI®を適用する最大のメリットは表面相制御による機械的特性の改善にあるという。同システムは、窒化ポテンシャル(KN)制御により、鋼表面を化合物層レス、γ’相、またε相へ選択的に制御することができる。この結果、耐疲労性・耐摩耗性・耐食性等の機械的特性改善が可能になる。昨今の環境対応においても、従来のガス窒化/軟窒化で無駄に使用していたNH3ガスを処理ごとに最適化したレシピで運用することでNH3ガス使用量の圧縮が期待できるという。また、NITRONAVI®は自動で設定したKN値になるように雰囲気を制御する。この自動制御によって作業者のスキルに依存しない窒化/軟窒化処理を実現する。
不二越(https://www.nachi-fujikoshi.co.jp/)は、切削バリの極小化を実現する切削工具「バリレスシリーズ」として、アルミ合金など非鉄金属用の水素フリーDLCコート工具などの新ラインアップを紹介した。アルミ合金を含む非鉄金属は、切削加工の際に被削材が工具の刃先に凝着しやすく、バリの増大といった品質の低下や工具損傷を引き起こす場合がある。また、これらの被削材は圧縮の力を与えると変形しやすい特性があり、ドリルの先端角によって発生する圧縮の力で、鋼と比べて抜けバリが大きくなる。これに対し新開発の「DLC-REVOコーティング」は、ダイヤモンドに次ぐ膜硬さで耐熱性の高い水素フリーDLCの表面に摺動特性を付加し、低摩擦(耐凝着性向上)を実現。さらに膜厚を薄くすることで、バリレスに求められる切れ味(シャープ性)を担保している。ブースでは、DLC-REVOコーティングを施した新開発の「DLC-REVOドリルバリレス」と「DLC-REVOミルバリレス」を披露、一層のバリ極小化ソリューションを提示した。
山本科学工具研究社( https://www.ystl.jp/ )は、ブリネルやロックウェル、ビッカースといった各種硬さ試験法に使用される試験機の測定結果が正常であるかどうかを確認するための基準的試験片「高精度硬さ基準片」の紹介を行った。熱処理において硬さ管理は重要な品質管理の一種である。硬さ試験におけるISO9000シリーズ等の各種認証には、JIS・ISOに準拠した硬さ試験機の管理が必須となり、その一つに硬さ基準片を用いた管理がある。同社の硬さ基準片は、優れた質(硬さ均一性、JIS・ISOに基づいた普遍的な値、硬さ値の高い安定性)が国際的に認められており、硬さ試験機の始業前点検や間接検証に数多く使用されている。同社では、新しい反発硬さ試験eNM用の硬さ基準片およびナノインデンテーション用基準片など多数の試験片を取り揃えている点をアピールした。