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表面技術協会、第76回通常総会・協会賞など各賞授与式を開催

 表面技術協会( https://www.sfj.or.jp/ )は2月28日、東京都新宿区の工学院大学で「第76回通常総会および各賞授与式」を開催した。

 当日は第75期事業報告、会計報告が行われた後、第76期事業計画、収支予算について審議、満場一致で可決された。事業報告では、第149回講演大会(2024年3月5日~6日)は工学院大学八王子キャンパスで開催したこと、第150回講演大会(2024年9月12日~13日)は北見工業大学で開催したこと、同協会が開催したセミナーの合計参加者が276名であったこと、ISO/TC107第36回総会を11月19日~22日に島津製作所で開催し、本分野新規国際規格提案などについて活発な議論が行われたことなどを報告した。事業計画では、第151回講演大会を東京都市大学世田谷キャンパスで、第152回講演大会を福岡工業大学で開催すること、ISO/TC107からの提案事項の審議、温度環境制御下での樹脂めっきの密着力測定方法に関する国際標準化、女性の協会活動への参画促進を図ることなどを確認した。

 役員改選では、前期に引き続いて会長に平藤哲司氏(京都大学 名誉教授)、副会長に蒲生西谷美香氏(東洋大学 理工学部 教授)、辻 克之氏(太洋工作所 代表取締役社長)が再任。今期より新たに菅原博好氏(デンソー 材料技術部)、八重真治氏(兵庫県立大学 大学院工学研究科 教授)が副会長に選任された。

 理事を代表して挨拶に立った平藤会長は「現在、当協会は会員の減少と事務体制の課題について、協会のサステナビリティに対して心配になるような大きな課題を抱えている。これは我々に限らずだが、どなたも変わらないとならない時代になっている。当然、当協会も変わらないとならないため、その努力はしていくつもりだ。一方、当協会の果たすべき役割はこれまでと変わらない。産学官の非常に良い交流の場を提供することが一つの大きな使命であろうと思っている。そのためには活動のブラッシュアップが大切だ。委員会や部会の活動などをより良いものにしていく。そうした価値のあるものを提供していれば需要はあるだろう。今後とも当協会の価値を高めるような活動を理事一同で行っていくので皆様のご協力をお願いしたい」と述べた。

挨拶する平藤会長
挨拶する平藤会長

 当日の席上では、「2025年度 表面技術協会 各賞授与式」が行われ、伊崎昌伸氏(豊橋技術科学大学 名誉教授)が業績「酸化物半導体層の電気化学的形成と太陽光エネルギー変換への応用に関する研究」で協会賞を受賞した。伊﨑氏は、酸化物半導体層の電気化学的形成と太陽光エネルギー変換に関し独創的および先駆的研究を展開し、優れた業績を挙げている。水溶液から酸化亜鉛層の電気化学的直接形成に世界で初めて成功した後、銅酸化物、銀酸化物、鉄酸化物、希土類酸化物層などの直接形成にも成功した。酸化物の電気化学形成反応機構を熱力学的に明らかにするとともに、異種酸化物の積層体やナノコンポジット半導体層の形成、電気化学不純物ドーピングへと展開し、酸化物形成のための電気化学反応機構を明らかにし、電気化学的製造技術を確立した。
 また、電気化学的に酸化物太陽電池を構築し、最高変換効率(当時)を達成するとともに、ナノ構造やバッファ層の導入により高効率化を図るとともに、複数の異種酸化物層を組み込んだインタースタック光電変換層を提案し、その有効性を実証した。さらに、Ni-Al合金めっき膜、マルテンサイトFe-C合金(鋼)めっき膜、ガラス基板上化学的Cu層形成技術、鉄添加酸化亜鉛透明磁性半導体層、硫化物/ZnOナノワイヤシンチレータの電気化学的形成技術の開発へと展開している。

表彰される伊崎氏
表彰される伊崎氏

 また技術賞では、東新邦彦氏(日本製鉄 技術開発本部 鉄鋼研究所 表面処理研究部)ら5名が「接着性、耐食性に優れるクロメートフリー化成処理鋼板の開発」で受賞。研究グループは、インフラ分野の新補強工法であるコンクリート補強工法を代表する鋼板接着技術に適した接着性に優れた化成処理皮膜の開発を進めた。長期耐食性に優れるZn-11%Al-3%Mg-0.2%Si合金めっき鋼板を母材とし、この表面に接着剤を用いた鋼板接着工法に適したクロメートフリー皮膜を開発した。開発した皮膜は、造膜成分としてジルコニウムイオン、防錆成分としてバナジウムイオン、密着性を実現する成分としてりん酸イオンから構成される無機成分処理液に、表面自由エネルギー変化を伴う水系エマルジョン樹脂を混合することで化成処理皮膜表層に樹脂粒子を濃化させ、従来難しかった接着性と耐食性がともに優れた化成処理皮膜である。
 本技術は、高耐食性めっきと組み合わせることでより高い耐食性を有しメンテナンスフリーのニーズに応えており、後のさらなる展開に期待ができることから技術賞としてふさわしい内容であると判断された。

左から、表彰される東新氏、莊司浩雅氏、森下敦司氏、中村文彰氏、植田浩平氏
左から、表彰される東新氏、莊司浩雅氏、森下敦司氏、中村文彰氏、植田浩平氏

 同じく技術賞で野崎匡文氏(奥野製薬工業 総合技術研究部)ら2名は「薄膜高耐食性Zn-Ni-SiO2複合めっきとシリカ系薄膜コーティングハイブリッド技術の開発と実用化」で受賞。本技術は塩化浴Zn-Ni合金めっきに着目し、SiO2ナノ粒子を添加したZn-Ni-SiO2 複合めっき浴を開発するとともに、さらなる耐食性向上を実現するためゾル・ゲル法を用いたシリカ系薄膜コーティングを適用したものである。Zn-Ni-SiO2複合めっき皮膜は従来のZn-Ni合金めっき皮膜の半分の膜厚で同等以上の耐食性を発揮するが、6価クロムなどの有害物を使用しないシリカ系薄膜コーティングと併用することでさらなる耐食性付与を実現した。
 現在、自転車部品や釣り針等のレジャー部材に適用され部材の軽量化およびコスト削減に大きく貢献しており、今後より一層の適用拡大が期待できることから、技術賞としてふさわしい内容であると判断された。

左から、表彰される野崎氏、日野 実氏
左から、表彰される野崎氏、日野 実氏

 受賞者、業績などの一覧は以下のとおり。

協会賞

・伊﨑昌伸氏(豊橋技術科学大学 名誉教授)
業績「酸化物半導体層の電気化学的形成と太陽光エネルギー変換への応用に関する研究」

功績賞

・林 秀考氏(元岡山大学)
・佐藤 讓氏(東北大学 名誉教授)

論文賞

・莊司浩雅氏・東新邦彦氏・森下敦司氏・植田浩平氏(日本製鉄 技術開発本部)
「接着性に優れたクロメートフリー化成処理皮膜の開発」
(表面技術 第74巻 第11号 584~588ページ)

技術賞

・東新邦彦氏・莊司浩雅氏・森下敦司氏・植田浩平氏(日本製鉄 技術開発本部)、中村文彰氏(同 薄板営業部)
「接着性、耐食性に優れるクロメートフリー化成処理鋼板の開発」
・野崎匡文氏 (奥野製薬工業)、日野 実氏 (広島工業大学)
「薄膜高耐食性Zn-Ni-SiO2複合めっきとシリカ系薄膜コーティングハイブリッド技術の開発と実用化」

進歩賞

・岩井 愛氏(北海道大学 大学院工学研究院)
業績「塩基性電解質を用いたアルミニウムのアノード酸化に関する研究」
(第143回講演大会要旨集 24~25ページ ほか)
・中島大希氏(UACJ R&Dセンター)
業績「アノード酸化を利用したアルミニウム表面の機能化に関する研究開発」
(表面技術 第75巻 第7号 339~345ページ ほか)

技術功労賞

・目黒篤志氏(日鉄テクノロジー 研究試験事業所(富津) TSセンター)

会員増強協力者

・石﨑貴裕氏(芝浦工業大学 工学部)
・伊藤麻美氏(日本電鍍工業 代表取締役社長)
・柳下宙士氏(三進製作所 代表取締役社長)