メインコンテンツに移動

メカニカル・サーフェス・テック主催の講演会・交流会「DLC・ダイヤモンドコーティングの技術と産業応用」が開催

 メカニカル・テック社『メカニカル・サーフェス・テック』編集部は9月26日、東京都丸の内のTKPガーデンシティPREMIUM東京駅丸の内中央で講演会「DLC・ダイヤモンドコーティングの技術と産業応用」を開催した。

 本講演会では、耐摩耗性や潤滑性、付着抑制など基材表面にさまざまな機能を付与できるダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティングおよびダイヤモンドコーティングの技術と、それら薄膜の各種特長を活用した自動車、切削工具、地熱発電での適用についての3件の講演が行われたほか、講演の合間に薄膜・トライボロジーの試験・計測機器メーカーによる2件のショートプレゼンがなされた。

9/26 DLC・ダイヤ膜講演会 講演会のようす mst 表面改質
講演会のようす

講演1「自動車におけるDLCコーティングの技術と適用」糸村大輔氏(デンソー)

 小型・軽量化、省エネ、燃費向上、リサイクル性、高性能化といった自動車における課題に対して、多様化する機能を低環境負荷・低コストでグローバルに提供するための被膜開発の取り組みについて説明。尿素インジェクターにおけるニードルの摩耗抑制のためのDLC成膜の事例では、尿素水作動試験ではく離が発生した課題に対して、はく離メカニズムを究明した上で、密着力向上に向けて中間層材料を比較・検討し、密着力の発現メカニズムを明らかにし、高密着力のWC中間層を適用した事例を紹介した。

9/26 DLC・ダイヤ膜講演会 講演する糸村氏 mst 表面改質
講演する糸村氏

講演2「ダイヤモンドコーティングの技術と切削工具における適用」村澤功基氏(オーエスジー)

 切削工具に使われる単結晶、多結晶、電着ダイヤモンドなどの特性について解説した後、同社の微結晶/粗結晶のダイヤコートをそれぞれ処理した切削工具について、切削性能の比較、加工面粗さの比較を実施。CFRPの加工には粗結晶のDGコートより靭性の高い微結晶のDIAコートの方が適し、加工面粗さではDIAコートがDGコートよりも良好との結果を示した。そのほか、粗結晶のHDGコート初採用品のセラミックス・ガラス加工用超硬ドリル「DIA-MXD」による炭化ケイ素やジルコニア、石英ガラスの加工事例を紹介した。

9/26 DLC・ダイヤ膜講演会 講演する村澤氏 mst 表面改質
講演する村澤氏

ショートプレゼン1「大塚電子の製品・技術紹介」森田 祥氏(大塚電子)

 工具や自動車部品上のDLC膜の膜厚を非接触・非破壊で1秒程度の時間で測定できる顕微分光膜厚計「OPTM」について紹介したほか、測定者や測定場所に縛られず高精度な膜厚計測が可能なハンディタイプの測定器「スマート膜厚計」、フィルム製品などの膜厚をライン上において面でとらえることができる「ラインスキャン膜厚計」、さらには、今まで見えなかったものが見える最新の光波動場三次元顕微鏡「MINUK」を紹介した。

9/26 DLC・ダイヤ膜講演会 講演する森田氏 mst 表面改質
ショートプレゼンを行う森田氏

ショートプレゼン2「トライボロジー試験機の紹介」國井卓人氏(Rtec-Instruments)

 モジュールを交換することでさまざまな試験方法を実行できる多機能型トライボメーター「MFT-5000」を用いて、ISO 20502(引っかき試験によるセラミックコーティングの密着性測定)に準拠したスクラッチ試験を実施し、金属板へのDLC膜の密着性を評価した事例を紹介した。最初のき裂が出現した臨界荷重Lc1点、最初の層間はく離が発生した臨界荷重Lc2点、完全な層間はく離が発生した臨界荷重Lc3点について、インライン統合3Dプロファイラーによるスクラッチ痕の状態を併せて示し、装置の有用性をアピールした。

9/26 DLC・ダイヤ膜講演会 講演する國井氏 mst 表面改質
ショートプレゼンを行う國井氏

講演3「地熱発電システムにおけるDLCコーティングの技術と適用」中島悠也氏(富士電機)

 再生可能エネルギーの中でも電力系統の安定化に大きく寄与する地熱発電の優位性と、シリカスケールの付着による出力低下の課題について解説。シリカ付着を抑制して高出力を維持し収益性を向上させる目的で、化学的に析出付着するシリカに対してDLCによる低付着化を行った。シリカの析出付着モードに対して低付着なDLC化学構造を明確化したほか、DLC表面へのシリカ低付着化モデルを解明した。DLCによるスケール抑制効果を実証した取り組みを紹介、さらなる長尺化に向けた管内成膜プロセスを開発中とした。

9/26 DLC・ダイヤ膜講演会 講演する中島氏 mst 表面改質
講演する中島氏

 

 講演会終了後は、講師と参加者による交流会が催され、表面改質分野の横断的な情報交換と人的交流が、和やかながら活発に執り行われた。