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第18回岩木賞に、TOTO、宇都宮大学、コニカミノルタジャパン・日本食品化工・新東科学・ハイロックスが受賞

 トライボコーティング技術研究会、未来生産科学研究所(FPS)などからなる岩木賞審査委員会は、「第18回岩木トライボコーティングネットワークアワード(岩木賞)」を発表した。岩木賞は、表面改質、トライボコーティング分野で著しい業績を上げた個人、法人、団体を顕彰するもので、当該分野で多くの功績を残した故 岩木正哉博士(理化学研究所 元主任研究員、トライボコーティング技術研究会 前会長)の偉業をたたえ、2008年度より創設されたもの。今回から新たに、環境に配慮し、省エネルギー化、省資源化、代替資源化や地球温暖化防止につながるトライボコーティング技術を表彰対象とする「環境賞」が新設された。

 18回目となる今回は、TOTOが業績名「水垢汚れを抑止する DLCコーティング技術とそれによる浴室鏡の開発」により大賞に輝いた。また、宇都宮大学の鄒 艶華氏が業績名「磁気研磨法による微細複雑形状部品の表面仕上げ技術の開発」により優秀賞を、コニカミノルタジャパン・日本食品化工・新東科学・ハイロックスが業績名「計測試験技術を駆使した新しいバイオマスプラスチック材の車体部品への適用促進技術の構築」により第1回目となる環境賞を共同受賞した。

大賞「水垢汚れを抑止する DLCコーティング技術とそれによる浴室鏡の開発」

 水道水に含まれるケイ酸は、鏡の表面で脱水縮合し、鏡の主成分である酸化ケイ素と一体化して水垢となる。水垢が堆積すると、鏡が白い鱗状の汚れで覆われ、視認性低下を引き起す。水垢の付着・体積による問題に対し同社は、浴室鏡に10nmの極薄膜のダイヤモンドライクカーボン(DLC)をコーティングする技術を開発、この薄さにより透光性を維持したまま水垢の固着を防ぐことが可能となり、簡単な清掃で鏡の映り込みを回復させる機能を実現した。DLCコート鏡の生産においては、高密度プラズマ発生器と高電圧直流電源を組み合わせた専用の装置を開発し、最大2mの大判鏡にも高速で成膜できる生産体制を構築した。同社ではこれまで累計200万枚のDLCコート鏡の生産・販売を達成しており、DLCの民生分野への用途拡大に貢献した。その技術の新規性と市場性などが評価されての大賞の受賞となった。

優秀賞「磁気研磨法による微細複雑形状部品の表面仕上げ技術の開発」

 半導体製造装置用の部品など様々な分野で微細複雑形状部品を必要とする製品が増えており、それに伴い微細複雑形状部品をナノレベルかつ高効率に仕上げる精密加工技術が求められている。しかし従来の研磨技術では複雑形状の隅々まで研磨が行き届かず、十分な精密仕上げが困難という課題がある。そこで鄒氏は、新たに変動磁場を利用した磁気研磨法を開発。交番磁場中における磁気研磨スラリーのダイナミックな挙動を利用し、微細複雑形状部品の表面を効率的に仕上げることが可能なほか、磁気研磨スラリーにはミクロンサイズの磁性粒子を用いるため部品表面にダメージを与えることなく、ナノレベルの仕上げを実現できる。半導体部品や3D造形した複雑微細部品の精度向上に寄与する高精度表面仕上げが可能になることが期待されて優秀賞の受賞となった。

環境賞「計測試験技術を駆使した新しいバイオマスプラスチック材の車体部品への適用促進技術の構築」

 自動車のCO2削減を目的に軽量化のための部品の樹脂化が進展、特に内装部品においてはタルク強化ポリプロピレン(PP)樹脂が適用されているが、使用時の引っかきや擦れに伴う傷が目立ちやすい「白化現象」が問題となっている。これに対し、日本食品化工は、でん粉70%含有バイオマスプラスチック「スタークロス 70PPi」を開発、プラスチック使用量の削減に加えて、鉛筆硬度試験の結果などからタルク強化PPよりも耐傷付き性が高く白化しにくいことが確認されている。しかし鉛筆硬度試験のみでは定量的評価手法とは言い難いため、PP単独、タルク強化PP、スタークロス 70PPiの3種サンプルに対し、新東科学の摩擦摩耗試験機で摩擦摩耗試験・鉛筆硬度試験を実施し、コニカミノルタの分光測色計および二次元色彩輝度計を用いて上記試験により傷が付いた箇所の見え方を数値化して、比較評価した。また、新東科学の摩擦摩耗試験機でスクラッチ試験を実施しスクラッチ痕の状態などをハイロックスのデジタルマイクロスコープで比較評価し、白化しにくいというスタークロス 70PPiの特性が確認された。各社の知見を結集して最適な評価方法の提案を実現したことの新規性や独創性が評価され、環境賞の受賞となったもの。

 第18回岩木賞の贈呈式と受賞業績の記念講演は、2026年2月20日に埼玉県和光市の理化学研究所 和光本所で開催される「第28回『トライボコーティングの現状と将来』シンポジウム」(通算160回研究会)で行われる予定。