トライボコーティング技術研究会(会長:理化学研究所 大森 整 主任研究員)は12月12日、東京都江東区の東京都立産業技術研究センターで「令和7年度 第3回トライボコーティング技術研究会」を開催した。

当日は、大森会長の開会挨拶に続いて、以下のとおり講演がなされた。
「微粒子ピーニングα処理による形状保持型表面改質の検討」久保佑太氏(不二製作所)…摺動部材や金型の摩擦摩耗、焼付きといった表面課題に対して表面改質と形状維持の両立を目的に微粒子ピーニング(FPP)が適用されているが、精密部品に求められる形状維持が困難という課題に対して、FPPより微細な粒径20μm以下の極小ショット材を圧縮エアで高速噴射して金属表面を改質する独自のα処理を適用し、その表面改質効果と実用性を検討した。α処理は金属表層3μmに超微細粒組織を形成し硬度向上と圧縮残留応力の付与が可能で、改質層深さは10μmと浅く形状変化を抑制しやすいことを示した。トライボロジー特性の評価では、μmオーダーの微細ディンプルが潤滑油の保持と摩耗分散に寄与し、焼付きと相手攻撃性の低減に有効であることが確認。さらに、高負荷条件下で使用されるボタンダイ金型への適用事例では、エッジ部のチッピングを抑制し、未処理品に比べ部品寿命が約4倍に向上することを示した。

「表面設計コンソーシアムの活動と複合処理でできること」髙木眞一氏(神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC))…表面設計コンソーシアムは、不二WPCなど神奈川県に拠点を置く企業やKISTECなどが協働して、機械部品や金型等のメーカーやユーザーが抱える耐久性に関する技術課題やニーズに対して、最適な表面設計ソリューションを提供することを業態とする共同体。単一の技術では対応できない表面に関わるニーズに対して、専門知識を有する技術者が集まって、計測・評価を経た根拠のある合理的で最適な表面設計ソリューションを開発・提供することを目的としている。本講演では、表面に優れた機能を与えるには、ベース素材の材料設計技術や表面改質技術、その上に被覆する薄膜制御技術、さらには最表面のテクスチャ制御技術までをトータルに高度なレベルで協調させる「設計」が必要であるとする表面設計の考え方について説明したほか、本コンソーシアムが提供可能な複合表面処理事例として、WPC処理とTiN系コーティングの組み合わせによって高速加工用パンチの耐摩耗性と欠け対策を両立できた事例など数例を紹介した。






