表面技術協会 高機能トライボ表面プロセス部会(代表幹事:岐阜大学 上坂裕之氏)は昨年12月15日、大阪市東住吉区の東研サーモテック イノベーション事業部 オープン・イノベーション・センター(O・I・C)で、第27回例会を開催した。今回は、岐阜大学工学部附属プラズマ応用研究センターとの共催となり、第6回c-ARPプラズマセミナーとの合同開催となった。

当日はまず、上坂代表幹事の開会挨拶に続いて、東研サーモテック イノベーション事業部長の髙橋 顕氏より、同社のコーティング事業とOIPの紹介がなされた。
東研サーモテックは、1939年設立の金属熱処理およびドライコーティング(DLC・PVDコーティング)受託加工のリーディングカンパニーで、硬さを自由自在に操る金属熱処理では85年の歴史を持ち全従業員の86%が厚生労働省管轄の国家資格である金属熱処理技能士を取得している。また、DLCコーティングの売上は国内トップを占め、金属熱処理とDLCコーティングとで量産を手掛ける唯一の企業と言える。ここでは、1986年に治工具類へのTiNの加工に始まり、2000年代初頭からディーゼルエンジン部品をはじめとする自動車部品へのDLCの量産を手掛けるようになったドライコーティング事業の変遷について紹介。また、今後、電動化・EV化が進み表面改質の対象となる部品点数の減少が見込まれる中で、金属素材に新たな価値を付与するドライコーティング技術とそれらの関連技術をさらに進化すべく2024年にイノベーション事業部を立ち上げ、非自動車分野あるいは全く新しい分野へのチャレンジを開始したことを説明した。同社では、自動車メーカーや自動車部品メーカー向けのビジネスモデルである「サプライヤーチェーン型」から、企業が顧客やパートナーと連携してデータと技術を活用し相互に価値を創出し合う関係性・仕組みを作る「バリューネットワーク型」への拡張を呼びかけており、髙橋氏は、「ドライコーティングの研究開発(R&D)拠点として開設し将来的な技術リソース獲得と販路開拓を目指すオープン・イノベーション・センター(O・I・C)は、さまざまな業界の方々を招待して議論を深める共創の場なので、是非活用していただき、一緒に次世代の価値を創っていきたい」と呼び掛けた。

その後、工事が完了したO・I・C第1期エリアとO・I・C第2期エリアの見学会が行われた。
第1期エリアで参加者は、マイクロ波プラズマCVD方式でDLCコーティングの高硬度化と成膜速度向上を実現したアリオス製の成膜装置や、約10000HVという高硬度の多結晶ダイヤモンドコーティングを大面積に高密着で成膜できる熱フィラメント(HF)CVD方式の新明和工業製の成膜装置「SPC 300」(写真)を見学した。

また、DLCコーティングなどの先行試作や研究開発用として各々思想の異なる成膜装置を導入したO・I・C第2期エリアでは、CARC+蒸着源など最新プロセスを導入したIHIハウザーテクノコーティング製の成膜装置や、ユーザー仕様に基づく独自被膜を成膜できるため、実験装置として有用な独立型3列円筒カソードを有するPLATIT製の成膜装置、また昨年10月に導入したばかりの四つの蒸発源が搭載可能で、緻密な膜が成膜できるHIPiMSや、面粗度が良い厚膜の成膜が可能なスーパーファインカソードやカーボンARC蒸発源などを自由に搭載でき、さまざまな研究開発が量産機ベースの装置で検証可能になる神戸製鋼所製の成膜装置「AIP-S40型HYBRID(特殊仕様)」(写真)を見学した。

O・I・Cの見学会に続いては、以下のとおり講演が行われた。
「大気圧非平衡高周波プラズマ処理による金属・樹脂異材接合の実現」竹中弘祐氏(大阪大学 接合科学研究所)…大気圧非平衡高周波プラズマジェットを用いた金属異材直接接合における、プラズマ照射処理が接合強度に与える影響を調べた。金属材料へのプラズマ照射の効果としては、酸化被膜が形成され、金属材料の表面の極性が高くなり分子間力が増大するものの、SUS304は表面に酸化物層を形成し樹脂との接合強度が増すが、A5052では表面に生成した水酸化物、MgOが脆弱な被膜で接合に悪影響を及ぼす可能性があるなど、金属の種類によって表面の酸化挙動に違いがあり接合に影響することから、金属材料に対する最適な表面処理を施すことが重要、とした。また、有機材料へのプラズマ照射の効果としては、新生面の露出と極性官能基の付与がある。せん断強度が10倍以上違っていても極性官能基の付与量が同じで、プラズマ密度・処理温度が異なっていてもエッチング深さが同じであれば同等の接合強度が得られたことから、新生面の露出が接合強度を増大させる可能性を示した。
「環境に応じた低摩擦·耐久性薄膜設計に関する研究」裵 水旼氏(岐阜大学 工学部附属プラズマ応用研究センター)…表題のテーマに関連した研究として、まずCr添加DLC膜によるエンジン低摩擦化に関する研究を紹介、DLC膜にMoDTCと化学的親和性の高いCrを添加することによる摩擦低減効果について、摩擦試験とトライボフィルムの分析を実施、トライボケミカルメカニズムの考察を行った。また、高湿度・Si-DLCによるアルミニウムの低摩擦化の研究では、高湿度の条件下でオイルベース潤滑剤の代替として機能するとされるSi-DLCについて、水蒸気環境下における摩擦特性を調べて報告した。さらに、マクロスケール摩耗低減を指向した多層膜の設計に関する研究では、弾性プロセスを通じて接触エネルギーを吸収し減衰させる多層膜として、低摩擦・耐摩耗性を担うDLCと鋼への強い密着性などを担うCrの対を積層させた多層膜を設計、自製のマクロトライボメーターで摩擦試験を実施し、多層膜のトライボロジー特性を検証した。






