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表面技術協会、第77回通常総会・協会賞など各賞授与式を開催

 表面技術協会( https://www.sfj.or.jp/ )は2月27日、東京都新宿区の工学院大学で「第77回通常総会および各賞授与式」を開催した。

 当日は第76期事業報告、会計報告が行われた後、第77期事業計画、収支予算について審議、満場一致で可決された。事業報告では、第151回講演大会(2025年3月12日~13日)は東京都市大学 世田谷キャンパスで開催したこと、第152回講演大会(2025年9月9日~10日)は福岡工業大学で開催したこと、同協会が開催したセミナーの合計参加者が300名であったこと、ISO/TC107(金属及び無機質皮膜)の国内審議団体として特別委員会の中にISO規格検討専門委員会を置き国際規格の制定などに協力したことなどを報告した。事業計画では、第153回講演大会を関東学院大学 横浜・金沢八景キャンパスで、第154回講演大会を鈴鹿工業高等専門学校で開催すること、ISO/TC107からの提案事項の審議、温度環境制御下での樹脂めっきの密着力測定方法に関する国際標準化、女性の協会活動への参画促進を図ることなどを確認した。

 任期満了に伴う役員改選では、今期より会長に野田和彦司氏(芝浦工業大学 工学部 教授)、副会長に瀬戸一洋氏(JFEテクノリサーチ 代表取締役社長)、邑瀬邦明氏(京都大学 大学院工学研究科 教授)が新たに選任された。菅原博好氏(デンソー 材料技術部)と八重真治氏(兵庫県立大学 大学院工学研究科 教授)は前期に引き続いて副会長を務める。

 理事を代表して挨拶に立った野田会長は「平藤前会長をはじめ、第76期の理事の方々から宿題をいただいている。私も協会に入会して30年以上が経過した。長い年月の間に、皆様が守ってこられた大切なこともあると思うので、進化はしなければならないが、皆さんが守られてきたものを大事にしていければと思っている」と述べた。

挨拶する野田会長
挨拶する野田会長

 当日の席上では、「2026年度 表面技術協会 各賞授与式」が行われ、鷹野一朗氏(工学院大学 工学部 教授)が業績「ドライプロセスによる各種材料表面の高機能化付与技術の開発」で協会賞を受賞した。鷹野氏は、半導体以外の材料に対するイオン注入研究の発展期にイオン注入と蒸着を併用したイオンミキシング技術に携わってきた。当初対称とした材料はTi系の TiN、TiC、TiAlNなどの硬質膜の作製と基板との付着性について研究を行ってきた。特に各種遷移金属材料へのN2+イオン注入による窒化物の作製については、化学的な影響が大きく関わっていることを明らかにした。近年は、スパッタリング法による TiO2を中心とした光触媒材料の研究、Cu2Oの低温形成や金属酸化物を用いた透明太陽電池の研究、プラズマやイオンビーム照射による表面改質に関する研究において成果を挙げている。その一例として、高機能モバイル機器への対応として、5G以降の高周波数に対応したプリント基板として有望なPTFEの表面改質にイオンビームを応用し、金属薄膜の付着性向上に成功している。また、光触媒材料に関してはドライプロセスとウェットプロセスを融合した新たな技術展開にも踏み出している。以上のように鷹野氏は、イオンビーム処理などのドライプロセスにより、材料表面の機能改善や高機能化に関する先導的な研究を長年にわたり精力的に進めてきた。このような研究活動は、各種材料表面の改質、新材料創出などの分野において、表面技術の進歩、発展に顕著な貢献をした。

表彰される鷹野氏
表彰される鷹野氏

 また論文賞では宋 翰聞氏(日本工業大学)ら5名が題目「ボロンドープ多結晶ダイヤモンド膜の反応摩耗特性の評価」で受賞。この論文は、CFRP加工用工具の耐摩耗性向上において重要とされるボロンドープダイヤモンド膜について、化学的安定性が影響する反応摩耗に注目し、その特性を詳細に解析してメカニズムを考察するとともに、ボロン添加による耐酸化性の向上と反応摩耗の抑制を実証したことで、学術・産業の両面から高い評価を受けた。評価を受けた一つのポイントとして、試料作製から評価に至るまで系統的かつ丁寧な研究が行われていることが挙げられる。ボロン添加量を精密に制御した膜合成から、TG-DTAを用いた耐熱性評価、そして摩擦速度や酸素濃度をパラメータとした摩耗試験に至るまで、緻密な実験設計により現象の因果関係を一つずつ明確にしている。学術的価値は、SUS304 との摺動におけるダイヤモンド膜の摩耗を化学的安定性が関与する複合的な反応摩耗の観点から詳細に解析した点に認められる。ボロン添加がダイヤモンド膜の酸化を抑制し、高温下での化学的安定性を維持するという知見は、関連分野の研究において、今後の材料設計指針に大きな影響を与える可能性がある。産業的価値は、工具の激しい摩耗を課題とする CFRP加工現場において、本論文が示した知見は次世代コーティング工具開発における具体的な解決策となり得るものであるという点に認められる。機構解明のさらなる深化が期待されつつも、その実用展開への即応性が今回の受賞を決定づける重要な要素となった。

左から、表彰される宋氏、竹内氏
左から、表彰される宋氏、竹内氏

 技術賞では、高橋尚久氏(サクラ工業)ら6名が業績「ナノ膜SixONy技術開発」で受賞。本技術は、独自開発の「DCマグネトロン反応性スパッタリング法による真空パッチ処理装置」を用い、アモルファスの酸窒化ケイ素膜を形成する技術である。これにより 500℃×24時間の耐熱性を備えたナノオーダーの無色透明ガスバリア膜を実現している。本技術により形成された皮膜は、屈折率と膜厚制御によって無色透明から干渉色を利用した多色まで対応可能なこと、さらに50℃以下の低温成膜を実現したことで、プラスチックや工具鋼の変質・変形を防止するとともに,成膜後の冷却時間を必要せず、さらにDLC被膜に匹敵する800HV以上の硬度を備えている。また、装置の自公転機構に加え、治具による回転機構を追加することで、三次元形状のワークに均一な加飾を可能としている。

前列:表彰される高橋氏 後列:左から、表彰される寺田氏、熊切氏、右原氏
前列:表彰される高橋氏 後列:左から、表彰される寺田氏、熊切氏、右原氏

 受賞者、業績の一覧は以下のとおり。

協会賞

・鷹野 一朗 氏(工学院大学 工学部 教授)
業績:「ドライプロセスによる各種材料表面の高機能化付与技術の開発」

功績賞

・眞保 良吉 氏(東京都市大学 名誉教授)

・兼松 秀行 氏(鈴鹿工業高等専門学校 名誉教授)

論文賞

・橋本 悠衣 氏(豊橋技術科学大学)、桑原 春香 氏(奈良工業高等専門学校)、
今堀 弘佑 氏・稲葉 りえる 氏・Khoo Pei Loon 氏(豊橋技術科学大学)、藤田 直幸 氏(奈良工業高等専門学校)、髙橋 久弥 氏(サンピークス妙高)、伊﨑 昌伸 氏(豊橋技術科学大学、奈良女子大学、奈良工業高等専門学校)
題目:「化学溶液析出法と化学還元によるガラス基板上への低抵抗・密着性Cu層の形成」
(表面技術 第75巻 第9号 408~414ページ)

・宋 翰聞 氏(日本工業大学)、神田 久生 氏(物質・材料研究機構)、福長 脩 氏・角谷均 氏・竹内 貞雄 氏(日本工業大学)
題目:「ボロンドープ多結晶ダイヤモンド膜の反応摩耗特性の評価」
(表面技術 第75巻 第12号 627~633ページ)

技術賞

・水品 愛都 氏・河合 陽賢 氏(サン工業)、松本 太 氏・福西 美香 氏(神奈川大学)
業績:「耐薬品性を有する自己触媒型無電解Ni-Snめっき被膜の作製法の開発」

・高橋 尚久 氏・寺田 光貴 氏・熊切 亘 氏(サクラ工業)、右原 健寛 氏・栗本 佳祐 氏・村越 功 氏(ヤマハ発動機)
業績:「ナノ膜コーティングSixONy技術開発」

・二葉 敬士 氏・柴尾 史生 氏・上杉 幸弘 氏・横道 拓哉 氏・久米 くるみ 氏・田中 勇樹 氏・春田 恵利 氏(日本製鉄)
業績:「ヘアライン調Zn-Ni電気めっき鋼板の開発」

進歩賞

・村上 勇樹 氏(理化学研究所 環境資源科学研究センター)
業績:「ミクロ相分離溶液を用いたミディアムエントロピー合金電析手法の開拓」
(掲載:表面技術 第74巻 第10号 529~533ページ ほか)

技術功労賞

・原田 修司 氏 (日本パーカライジング 総合技術研究所 メディカルセンター)

・中岸 豊 氏 (元 奥野製薬工業)

・芝崎 忠行 氏(日鉄テクノロジー 東日本事業所 君津安全環境防災室)

・塚本 稔 氏 (JFEスチール スチール研究所 表面処理研究部)

・大口 祐介 氏 (JFEスチール スチール研究所 ステンレス鋼・鉄粉研究部)

・多田 悦子 氏 (スズキハイテック 管理本部 品質管理部)

会員増強協力者

・伊藤 智博 氏(山形大学 大学院理工学研究科)

・下条 雅幸 氏(芝浦工業大学 工学部)

・柳下 崇 氏(東京都立大学 大学院都市環境科学研究科)