トライボコーティング技術研究会(会長:理化学研究所 大森 整 主任研究員)は10月2日、東京都板橋区の板橋区立グリーンホールで「令和8年度 第2回研究会(第163回研究会)」をリアルおよびオンラインによるハイブリッド形式で開催した。今回は、「第54回:マイクロファブリケーション研究の最新動向」、「第24回オンデマンド・マイクロ合同シンポジウム」との同時開催で、また、「第13回板橋オプトフォーラム(IOF)」との同時開催となる。
開催のようす

当日は、大森氏による趣旨説明の後、以下のタイトルで講演がなされた。
【特別セッション】
「横河電機の細胞イメージング技術と創薬の新たな可能性」横河電機 遠藤利朗氏、中西慶子氏
【基調講演】
「光でみる、光をみる-宇宙線観測最前線-」東京大学宇宙線研究所 荻尾彰一氏
【トライボセッション】では以下のような内容で講演がなされた。
「最適加工のためのインプロセス計測技術の紹介」ナガセインテグレックス/大森素形材工学研究室 井村諒介氏…加工現象には外的要因も含め、加工の状態、工具の状態、材料の状態など多くの情報が含まれていることから、加工現象(加工状態)をインプロセスで計測することが加工の高精度化、高能率化に必要不可欠である。ここでは、インプロセス計測技術として、研削盤に搭載するスピンドル内部に設置した複数のセンサから研削加工中の主分力や背分力という研削抵抗、加工トルクを検出できるようにしたスピンドルユニット(NPX(NAGASE Processing X-formation)スピンドル)を紹介した。NPXスピンドルから得られる実加工中の摩擦係数や研削抵抗によって、砥石の切れ味の変化や加工状態がリアルタイムに検出できるようになった。また、原点センサに同期してカメラや照明のタイミングを制御し加工機上で回転した砥石の定点を全周にわたり撮影できる砥面観察装置「GRIDE EYE」によって、研削工程における砥石表面の状態の変化を確認できるようになり、実加工時の加工現象がよりリアルタイムに可視化できる可能性が出てきた。さらに、上記のシステムで実加工中のセンシングデータを取得して、その加工結果などをAI技術と組み合わせて活用することで、加工結果の予測や工具の状態が把握できる可能性が見えてきた、と総括した。

また、【マイクロセッション】では以下のような内容で講演がなされた。
「ELID ラップ研削によるTi の鏡面研削における粗さ改善の試み」理化学研究所 大森素形材工学研究室 大森 整氏…チタン(Ti)は比強度が高く耐食性に優れるため航空機などの構造部材のほか、生体内に埋入するインプラント機器など幅広い適用がある。人工歯根や脊椎用インプラントにおいては、梨地状の凹凸を表面に形成することで骨芽細胞誘導による骨癒合に伴うアンカリング効果が得られることが報告されているが、ここでは冒頭、比較的粗粒度の砥石を用いたELID研削で積極的に研削痕を付与し、続いてCMP(化学機械研磨)を行い特徴的な周期的表面形状を創成することによって、細胞の付着・生育が促進されたケースを紹介。一方で、Tiを鏡面仕上げするニーズが存在することから、簡便な方法で鏡面仕上げが可能な方法として知見のある、異なる材料の同時研削による加工面粗さの改善を、ELIDラップ研削を用いて試みた。Tiと4種のセラミックス(SiC、Si3N4、ZrO2、Al2O3)を同心状、非同心状(碁盤状)にそれぞれ配置し、ELIDラップ研削で同時加工を行った結果、同心状の配置では、外側にAl2O3を、内側にTiを配置した組み合わせで同時加工した場合に、Tiを単体で加工した場合に比べてTiの加工面粗さが著しく改善した。非同心状にTiと各種セラミックスを配置した場合は、いずれも、Tiを単体で加工した場合に比べ、Tiの加工面粗さが著しく改善した。メカニズムとして、セラミックスはTiより研削が難しく、砥石の研削時の反力(切削抵抗)の多くはセラミックスと砥石との接触部分で発生することが想定され、これによって砥石とTiとの接触にかかる力がより小さくなり、Tiの単位時間当たりの除去量はセラミックスが想定、このことと、高湿なセラミックスの部分を研削する際に砥粒摩耗が進行して砥粒先端部の平坦化が進行することからも、Ti部の研削面粗さは単独での研削時よりも改善することが想定される、と考察した。

講演終了後は「IOF(板橋オプトフォーラム) Award企業展示・大学研究室ポスター発表奨励賞表彰式」が開催され、企業展示3件とポスター発表2件が表彰され、トライボ関連では、Award企業展示の最優秀賞にナガセインテグレックスが選ばれた。






