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SEMICON Japan 2024

 

京大など、3次元多孔性材料で規則配列したナノ結晶薄膜の成長に成功

 京都大学、高輝度光科学研究センター(JASRI)、物質・材料研究機構の共同研究グループは、3次元的に頑丈な多孔性配位高分子(Porous Coordination Polymer:PCP)を特定の方向に配列(配向)させたナノメートルオーダーの膜厚を有する結晶薄膜の作製に成功し、この薄膜が可逆的なガス吸脱着反応の機能を有することを確認した。

 高いガス吸着特性と高い規則性(結晶性)を有するPCPは、ガス分子の高効率分離・濃縮機能や空孔内部での反応など様々な機能が期待できるため、異なる機能を持ったPCPを集積することで、高効率な燃料電池など、様々なエネルギー関連素子を作製することが可能となる。このような素子構築には、異種PCPを密着して集積するために、複数のPCP膜の結晶の向きをそろえて作製(配向成長)することが必要不可欠。しかし、これまでは平面的に剛直なPCP以外での配向成長には成功しておらず、機能の多様性と作製した素子の耐久性、集積時の異種PCP間の密着性を実現するためには、3次元方向に剛直なPCPの結晶を配向成長させる技術の実現が切望されていた。

 今回、研究グループは、配向成長に適切な基板とその表面加工、3次元方向に剛直性を示しながらも成長方向が制御できる骨格形成材料を選ぶことで、配向成長した3次元PCPのナノ薄膜作製に成功した。また、このナノ薄膜において、可逆的なガスの吸脱着反応が起こることに加え、骨格構造の変化を伴わずに吸脱着反応がおこなわれるといった剛直性を確認した。これらナノ薄膜の配向成長や吸脱着時の構造変化は、大型放射光施設SPring-8の高輝度X線による精密な回折実験により初めて確認できたもの。

 この研究成果は、異なる機能を持ったPCPを集積した新たな機能素子を作製する基盤技術となるため、ナノ薄膜での機能素子の研究開発が大きく加速され、燃料電池の高性能化などへの応用が期待される。

多孔性配位高分子(PCP)の構築と多様な機能:PCPは、金属イオンと配位子が自己集合することで規則的な骨格を形成する(図下部)。このようにして形成されたPCP内細孔では、ガス分離、貯蔵、凝縮から触媒反応、高分子合成などが期待され、光など外部刺激による状態や機能変化も期待できる。多孔性配位高分子(PCP)の構築と多様な機能:PCPは、金属イオンと配位子が自己集合することで規則的な骨格を形成する(図下部)。このようにして形成されたPCP内細孔では、ガス分離、貯蔵、凝縮から触媒反応、高分子合成などが期待され、光など外部刺激による状態や機能変化も期待できる。