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SEMICON Japan 2024

 

東レ、カーボンナノチューブ分散高性能薄膜トランジスタを開発

作製した単層CNT薄膜の様子と単層CNTに付着したP3HTのイメージ作製した単層CNT薄膜の様子と単層CNTに付着したP3HTのイメージ 東レ( http://www.toray.co.jp )は、同社が独自に開発した半導体ポリマーと単層カーボンナノチューブ(CNT)を複合化することにより、移動度※1)2.5cm2/Vs、オンオフ比※2)106と、高レベルの性能を示す塗布型CNT薄膜トランジスタ(CNT-TFT)の開発に成功した。現在、ディスプレイ用トランジスタとしての実証研究を進めており、材料開発と併せて実用化に向けた取り組みを行っている。

 優れた電気的・機械的特性を持つCNTは、すでにタッチパネルの透明電極などで実用化が始まりつつあり、TFTとしてもフレキシブルデバイス等への応用が期待され、開発が進められている。単層CNTをTFTに応用するためには、電極間に単層CNTの均一な分散薄膜を形成する必要があるが、単層CNTは互いに集まりやすい性質をもっているため、均一に分散したCNT薄膜を作製するのが難しく、またCNT間に残存する電気絶縁性の分散剤が電気の流れを遮ってしまい、充分なTFT特性が得られないという課題があった。

 同社では今回、新しい分子設計で開発した半導体ポリマーと単層CNTとを複合化することで、導電性を阻害することなく単層CNTの分散性を高めることに成功した。本材料を用いて塗布法で作製したTFTは、高い移動度を維持したまま、従来比1桁(10倍)以上高いオンオフ比106を示した。さらに、独自のゲート絶縁膜を適用することにより、CNT-TFTのもう一つの課題であるしきい値電圧※3)を0V近傍まで低減した。

※1) 移動度:半導体中の正孔・電子などのキャリアの動きやすさの指標。移動度が大きいと高速応答が可能になり、またTFTサイズを小さくできるため微細化にも有利。
※2) オンオフ比:TFT出力電流の最大値と最小値の割合。ディスプレイ用TFTの場合、オンオフ比が大きいほど明暗がつけやすい。
※3) しきい値電圧:TFTがオフからオンに変化する電圧。しきい値電圧が小さいほど、低電圧での動作が可能になる。