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SEMICON Japan 2024

 

東京大学、ポストグラフェン材料として二硫化モリブデンを用いたトランジスタ

 東京大学 大学院 工学系研究科 量子相エレクトロニクス研究センターの叶劍挺特任講師、岩佐義宏 教授率いる研究グループらは、グラフェンに続く新たな原子膜材料として注目される二硫化モリブデン(MoS2)の電界効果トランジスタ(FET)を作製し、これが優れたトランジスタ特性を示すと同時に、電圧印加によって超伝導を発現させ、それを制御することに成功した。

 低消費電力化を目指したトランジスタ材料の研究は、酸化物や有機物を中心に進められているが、原子層厚みのグラフェンも有力な材料として検討されている。しかしグラフェンはバンドギャップが小さく、スイッチング特性に限界があるため、充分な大きさのバンドギャップを持つ材料の開発が求められている。研究グループは、古くから潤滑剤として非常によく知られる二硫化モリブデンを対象に選びFETの作成・評価を行い、ゲート絶縁体に電気二重層を使用したトランジスタを作製した。その結果、電圧の印加によって、MoS2が10K以下で超伝導になることが確認され、その転移温度を電圧によって連続的に変化させることに成功した。本研究は、超伝導の強力な制御法を提供するとともに、MoS2をはじめとする一群の物質がグラフェンに続く有力な原子膜物質となることを明らかにした。

 本研究により、最近ポストグラフェンとして注目を集めている原子層物質、MoS2が、FETの材料として優れているだけではなく、FETの構造のまま超伝導を発現するという、特異な性質を持つことが明らかになった。MoS2のような一群の層状物質には、グラフェンとは異なる新たな機能性が隠されていることが明らかになった。今後、これら一群の物質の原子膜デバイスが、大きく発展することが期待される。

電界効果による二硫化モリブデンの絶縁体-金属-超伝導転移電界効果による二硫化モリブデンの絶縁体-金属-超伝導転移