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SEMICON Japan 2024

 

ケイ素を含有したDLCなどで豊田中研・森氏らが第5回岩木賞大賞

前回の贈呈式のもよう前回の贈呈式のもよう トライボコーティング技術研究会( http://www.tribocoati.st/ )、未来生産システム学協会(NPS)などからなる岩木賞表彰審査委員会は、「第5回 岩木トライボコーティングネットワークアワード(岩木賞)」の大賞に、業績名「ケイ素を利用したトライボ表面処理技術の開発」で森 広行氏・中西和之氏(豊田中央研究所)、太刀川英男氏(元豊田中央研究所、現アイシン精機)、優秀賞に業績名「真空装置用精密化学研磨」で三愛プラント工業が決定したと発表した。

 大賞を受賞した「ケイ素を利用したトライボ表面処理技術の開発」の受賞理由は以下のとおり。

 ケイ素を含有したセラミックス材料は水中で優れた低摩擦特性を示すが、大気中や油中での低摩擦は得られていない。また厳しいグローバル競争の中、自動車部品として高価なセラミックスのバルク材料は使いにくい。そこで森氏らはケイ素を含有したDLC (DLC-Si)およびアルミ合金溶射被膜(高Si-Al合金溶射被膜)というコストパフォーマンスの良い非平衡トライボ表面処理被膜を開発した。いずれの被膜でも、Si-OH基を基点として形成された吸着水が境界膜として機能して低摩擦特性を発現し、またDLC-Siの駆動油中での高摩擦特性は、特定添加剤の吸着量が増加する膜組成と表面粗さの制御で発現されるとした。すでに大気中無潤滑、水潤滑、油中で稼動する量産自動車部品数種に適用されており、今後の社会的・経済的波及効果の大きさが評価されての受賞となった。

 優秀賞を受賞した「真空装置用精密化学研磨」の受賞理由は以下のとおり。

 電子デバイスの製造・分析や加速器施設で10-7~10-9以下の超高真空環境が必要で、ステンレス鋼やアルミ合金、チタン製の超高真空装置が使用されている。これに対し、三愛プラント工業では、高い真空性能とデバイス汚染が発生しない清浄度を持つ、真空装置用各種金属材料の「精密化学研磨技術」を開発した。真空用金属材料の表面を研磨することで平滑化(吸着ガスを低減)するとともに、薄く緻密で均一な酸化膜を形成(拡散放出を防御)する「化学研磨」と、有機汚れ除去のためのアルカリ脱脂、金属塩残渣・重金属汚れ除去のための硝酸浸漬、微量パーティクル・イオン性汚れ除去のための純水洗浄などから構成される「精密洗浄」の組合わせにより確立した。すでにデバイス製造・分析用真空装置や先端学術用真空装置などに採用されているほか、航空宇宙やエネルギーなど広範な分野への波及効果が見込まれることが評価された。

 贈呈式と受賞業績の記念講演は、2013年3月1日に理化学研究所・和光研究所で開催される「シンポジウム:第15回トライボコーティングの現状と将来」で行われる。

 岩木賞は表面改質、トライボコーティング分野で多大な業績を上げた故・岩木正哉博士(理化学研究所元主任研究員、トライボコーティング技術研究会前会長)の偉業を讃え、当該技術分野と関連分野での著しい業績を顕彰するもので、トライボコーティング技術研究会が提唱し2008年度に創設、2011年度(第4回)からは未来生産システム学協会(NPS)が表彰事業を行っている。大賞は、開発技術が世界的に高い水準にあり新規独創性に優れたもので、かつ実用化されており経済的・社会的貢献が認められるものに対して、優秀賞は、開発技術が日本国内で高い水準にあり、新規独創性に優れたもので、かつ実用化されており社会的貢献が認められるものに対して贈られる。