新しい熱処理炉の全景 神戸製鋼所は、加古川製鉄所厚板工場の熱処理能力の増強策として熱処理炉の増設工事を行ってきたが、このほど完了し1月から本格営業運転を開始した。総投資額は約40億円。増設した炉はサイズ幅4.5m×長さ43.2mのラジアントチューブ加熱式連続熱処理炉1基。今回の熱処理能力増強に伴い、エネルギー分野向けの拡販に注力し、造船分野、建材分野と合わせて強固な事業体制を目指す。
厚板事業においては、原料価格の高止まりと製品市況の低迷、造船需要の減少、中国・韓国における設備能力増強等により厳しい事業環境が続いている。一方、新興国を中心とした世界的なエネルギー需要の高まりによって、LNG向けタンクや圧力容器、海洋構造物、ラインパイプ等に使用される厚板の需要は着実に増加している。
同社厚板分野ではグループ中長期経営ビジョン「KOBELCO VISION "G"」において、こうしたエネルギー分野向けを中心とした高付加価値製品の拡販による安定収益確保を目標に掲げており、厚板営業部にエネルギー分野担当のグループを設置する等の取り組みを行っている。
一方で同分野向け鋼材の多くは、製品の安全性の観点から強度や粘り強さ等の性能を向上させる圧延後の熱処理がルール化されており、受注量の拡大に向けて熱処理能力増強が喫緊の課題となっていた。
こうした熱処理能力ネック解消のため、同社は既存の熱処理炉1基に加え、さらに1基増設することを意思決定し今回の増設に至った。今回の新熱処理炉導入により、熱処理能力はほぼ倍増になったという。