ASTEC2013/SURTECH2013開催、医療・エネルギーのキーテクノロジー、表面改質技術
「nano tech 2013 第12回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」や「ASTEC 2013 第8回 先端表面技術展・会議」、「SURTECH2013 表面技術要素展」など12の展示会が、1月30~2月1日に東京・有明の東京ビッグサイトで開催された。
ナノテクノロジーは、情報通信、エレクトロニクスから医療・健康、バイオ、環境・エネルギーまで、様々な重要課題解決のキーとして注目され、特に21世紀に入りクローズアップされている地球温暖化や生物多様性保持など環境・エネルギー問題、また、高齢化社会の中で必要とされる医療分野のほか、食品分野や化粧品分野へ向けた技術革新に貢献する大きなポテンシャルを持っている。nano techを中心とする12の展示会では、日本の新市場としても重要視される医療や新エネルギーの技術革新を支える新技術や新製品が披露された。
特にASTECとSURTECHでは、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティングやセラミックコーティングなどのドライコーティングから、めっき、撥水・親水性表面処理、ブラスト加工などの環境にやさしい表面改質技術や、その処理による材料の機械的特性などを評価する硬さや密着性、摩擦・摩耗特性などの試験評価技術などが紹介された。
パーカーグループブースでは、日本パーカライジングがアルミピストンなど軽金属の摺動部品への応用を可能にした複合ニッケル合金めっき「NCC-SPコート」を出展した。潤滑性に優れた分散材を用いた複合めっきで、低い摩擦係数を可能とし、摺動部品の寿命を飛躍的に向上させるとともに、摩擦によるエネルギー損失を低減させる。またパーカー熱処理工業は、優れた導電性と耐食性を持つ導電性ナノカーボンコーティング「σ-コーティング」を紹介した。燃料電池では耐食性と電気伝導性に優れたステンレス分離板が多用されるが、同コーティングはステンレスよりも高い導電性・耐食性を持つため、ステンレスよりも軽い基材が使えて省エネが図れるほか、速い成膜速度と低コスト化で、生産性と経済性を改善するという。
ナノテックではDLC薄膜を機能別、用途別に分類した「ICFコーティング」(真性カーボン膜)を展示、優れた導電性から太陽電池などへ、生体適合性から人工関節やステントなど医療機器などへ適用できる可能性を示した。同社ではまた、構造や水素含有量に違いのあるDLCを使い分けるため、平成21年度からニューダイヤモンドフォーラム、長岡技術科学大学と共同で経済産業省からの委託を受け、DLCの国際標準化を推進する活動を行っていることを紹介した。
丸紅情報システムズは、ユニオンツールが開発したDLCコート/ダイヤモンドコートの受託サービスを提案した。ダイヤモンドコートは主に切削工具や金型部品の耐久性向上による省資源化に、DLCコート「ULFコート」は自動車部品や機械部品の低フリクション化による自動車の燃費向上や機械の省エネや省メンテナンスにつながるとした。
今回もまた有害な重金属としてRoHS指令やELV規制などで規制の進む六価クロムの代替技術が多く紹介される中、ユケン工業は、完全クロムフリーで高耐食性のコーティング剤「メタスYC」を出展した。メタスYC-B(2コートベーク処理)+メタスYC-T(反応型の仕上げ処理)の組み合わせにより、キズ部でも安定した高耐食性を得られるほか、従来の処理に比べ焼付け温度が低い(約260℃)ため、素材の物性(展延性、靭性)に対する影響が少なく、処理コストの面でも有利という。
こうしたコーティングなどの特性を向上させる下地処理なども紹介された。たとえば日本スピードショアでは、ヤマシタワークスが開発した鏡面仕上げ技術「エアロラップ」を出展した。水分を含有した軟質研磨材をブラスト工法で投射することで、ワーク表面にダメージを与えることなく鏡面に仕上げていくため、たとえば続く熱処理工程での加工ダメージに起因する不良などの発生を防ぐほか、コーティング前に処理することで膜の密着性を向上させる。
また、表面改質膜の評価装置も多数出展された。
薄膜の機械的特性評価装置を専門に扱うCSM Instrumentsは、DLCなど硬質薄膜からポリマーなど軟質薄膜までの硬さ試験として、0.0015nmの押し込み分解能、0.005μNの荷重分解能を持つため、バルク材の影響を受けずに薄膜自体の機械的強度を測定できる「ウルトラナノインデンタ」を展示した。液体カップや温度制御機能を備えたバイオステージを用いることで37℃といった生体内での材料や薄膜をシミュレートした試験評価を可能にしている。
フィッシャー・インストルメンツは、めっきや塗装膜など表面処理の膜厚を非破壊で膜厚測定できる装置について、持ち運び可能なハンディータイプから設置型など使用用途に応じた測定機を展示した。協和界面科学は、機能性材料の量産手段として注目されるウェットプロセスコーティングや、電子デバイスの量産を印刷技術で行うプリンテッドエレクトロニクスが注目される中、半導体やフラットパネル、電池分野でキーポイントになる、機能性材料や電子デバイスが製品品質にどう影響し、品質向上にはコーティングや印刷プロセスにおける原料素材同士の界面挙動をいかに制御し最適化するかを、界面科学の視点から定性・定量的に解析・評価する装置を出展した。
ASTECやSURTECHで紹介された各種の表面改質は、たとえば材料にない低フリクション特性を付与することで省エネルギー化に、優れた機械特性を付与することで材料やそれを使った部品や機械を長寿命化させ、省資源化に寄与できる技術である。また、生体適合性や耐久性などを付与することでインプラント製品など医療機器の耐久性・信頼性を向上し、欧米に立ち遅れている我が国の医療機器市場を創出するキーテクの一つと期待されている。そうした表面改質技術とその開発を支援する各種試験・評価技術の発展によって、医療やグリーンエネルギーなど我が国の新たな産業の確立が促進される。