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SEMICON Japan 2024

 

表面技術協会、第64回通常総会・協会賞など授与式を開催

 表面技術協会( http://wwwsoc.nii.ac.jp/sfj/ )は2月27日、東京・麹町の弘済会館で「第64回通常総会・各賞授与式」を開催した。

 当日は第63期事業報告、会計報告が行われた後、第64期事業計画・収支予算について審議、満場一致で可決された。事業報告では、要素技術の基礎的な内容を理解し、今後の研究開発・生産現場に活かすことができるように、「表面処理基礎講座ーものづくりのキーテクノロジーを初歩から学ぶー」ならびに同講座上級編などを開催。また実務的な内容として「めっきプロセスの基礎と評価実習」や「ドライプロセスの基礎と薄膜作製」などを開催したことを報告した。部会活動では、新たに「環境および機能性に関する塗料部会」が設立、「カーボン・プラスチック表面技術部会」が廃止され、活動中の部会は15となっている。事業計画では、3月と9月の講演大会の開催運営、表面処理団体協議会関連の事業推進を行うことなどを確認した。

 役員改選では、前期に引き続き会長に里見多一氏(日本パーカライジング 代表取締役社長)、副会長に金井 洋氏(日鉄住金鋼板 鋼板開発技術部長)、光田好孝氏(東京大学生産技術研究所 教授)が再任、今期より新たに柴田正実氏(山梨大学大学院医学工学総合研究部 教授)、中井 昇氏(関西ペイント SD研究所所長)が副会長に選任された。

挨拶する里見会長挨拶する里見会長 理事を代表して挨拶に立った里見会長は「当協会は非常に厳しい財政状況にある。“入るを量りて出ずるを制す”ということがまさに当協会に課せられた大きな課題ではないかと思う。ただ、協会活動の質を落とすことなく支出を抑えていくことが重要だ。そういった意味では、従来以上に創意工夫を重ね、魅力ある協会活動を通じて1人でも多くの新会員を募っていきたいと思っている。目標を達成するために全会員のご指導ご鞭撻を賜るようお願い申し上げる」と述べた。

表彰される松永氏表彰される松永氏 当日の席上では、「平成25年度表面技術協会-協会賞・功績賞・論文賞・技術賞・進歩賞・技術功労賞-授与式」が行われ、松永守央氏(九州大学・教授・学長)が業績「非晶質合金めっきの形成および溶融塩の表面処理への応用」で協会賞を受賞した。松永氏は電気化学分野で多様な研究成果を挙げているが、今回は特に、難還元性金属や合金めっきの一連の研究において、学術的な知見をベースに精力的に応用研究に研鑽を重ね、表面技術の学位および技術の進歩・発展に顕著な貢献をしたことが評価された。

表彰される森氏(左)と伊東氏(右)表彰される森氏(左)と伊東氏(右) また技術賞では、森 広行氏(豊田中央研究所 表面改質研究室 主任研究員)ら7名が「電動ウォータポンプ用DLC-Si被覆シャフトの開発」で受賞。この受賞グループは、ハイブリッド自動車に必要とされる電動ウォータポンプの開発において、水潤滑下における過酷な摺動環境に耐えられるポンプシャフトを実現するためにシリコン含有のDLCコーティング開発に取り組んだ。開発により、不動態被膜に覆われコーティングの密着性が劣るSUS304素材に対して有効な基板前処理技術を開発し、水潤滑下における耐摩耗性向上のための膜構造制御技術も開発した。さらに犠牲防食設計の観点からアルミ材ハウジングケースを犠牲腐食させることで、DLC-Si被覆シャフトの耐食性を大きく向上させることに成功している。これらの技術に基づき開発した電動ウォータポンプは,車両全体の燃費を2%程度向上させ、累計生産台数で200万台を越える生産実績を有する。また、電動ウォータポンプの世界シェアの70%を占め、今後さらなる増産が見込めるという。

 技術賞のもう一件は、内藤哲義氏(デンソー 部品エンジニアリング部 製造技術2室 製造技術課 担当係長)ら9名による「小型高速アルマイト設備および小型排水クローズド設備の実用化」。この技術は、自動車部品や産業機械部品などで幅広く使用されている高Si材ADC12のアルマイト高速化技術において、従来からの懸念事項であった不均一な皮膜成長をアルマイト浴種の検討により克服。さらに光触媒に着目したシュウ酸分解工程と金属イオン除去工程から成る環境負荷低減型クローズドシステムを考案した。特徴としては、ADC12上への均一なアルマイト処理における大幅な時間短縮と設備の小型化を達成し、さらに常時排水ゼロのクローズ化に成功したことである。

 協会賞などの受賞者一覧は以下のとおり。

協会賞


・松永守央氏(九州工業大学 教授・学長)
業績「非晶質合金めっきの形成および溶融塩の表面処理への応用」

功績賞

・柏木邦宏氏(東洋大学名誉教授)
・平山良夫氏(平山技術士事務所)

論文賞

・平 章一郎氏(JFEスチール スチール研究所 表面処理研究部 主任研究員)、櫻井埋孝氏(同 西日本製鉄所 薄板商品技術部 自動車室 主任部員)、杉本芳春氏(同 スチール研究所 表面処理研究部長)、濱田悦男氏(同 スチール研究所 分析・物性研究部 主任研究員)、佐藤馨氏(同 スチール研究所 主任研究員)、橋本 哲氏(JFEテクノリサーチ 営業本部 主査)
「溶融亜鉛めっき鋼板の合金化挙動に及ぼす鋼板前処理の影響」
(表面技術 第62巻 第8号 403~410頁)

・褚 松竹氏(三菱伸銅 開発技術本部 若松開発部 主幹研究員、現岩手大学 工学部 応用化学・生命工学科 准教授)、熊谷淳一氏(同 開発技術本部 若松開発本部 開発部長)、沖田孝宏氏(同 若松製作所 品質保証部技師補)、玉川隆士氏(同 開発技術本部 若松開発部 技師)、岡田恒輝氏(三菱マテリアル 中央研究所 材料解析研究部 副主任研究員)、中矢清隆氏(同 中央研究所 電子材料研究部 副主任研究員)、加藤直樹氏(同 部長補佐)
「Cu合金へのSn/Ag多層めっきによる高温時接触抵抗安定化とそのメカニズム」
(表面技術 第62巻 第11号 559~567頁)

技術賞

・内藤哲義氏(デンソー 部品エンジニアリング部 製造技術2室 製造技術課 担当係長)、天草聖二氏(同 生産技術開発部 第5生技開発室 生産2課 担当係長)、横山光一氏(同 生産技術開発部 部品生産革新プロ室 担当課長)、倉野晋治氏(同 工機部 第2技術室 設計2課)、角谷 浩氏(同 材料技術部 表面技術室 表面技術1課 課長)、毛利 認氏(同 機能品技術2部 実験課課長)、平林孝弘氏(同 デンソーメキシコ アポダカ工場 機能品生産課 コーディネーター)、岩出孝信氏(同 部品エンジニアリング部 製造技術2室 製造技術課 課長)、山岡裕幸氏(宇部興産 無機機能材料研究所 グループリーダー)
「小型高速アルマイト設備および小型排水クローズド設備の実用化」

・森 広行氏(豊田中央研究所 表面改質研究室 主任研究員)、五十嵐新太郎氏(同 技師)、清水富美男氏(同 技師)、堀江俊男氏(同 主任研究員)、神谷直樹氏(アイシン精機 機関系技術部電動ポンプグループ チームリーダー)、服部修二氏(同 サブチームリーダー)、伊東厚直氏(アイシン精機 材料技術部 総括・品質チーム)
「電動ウォータポンプ用DLC-Si被覆シャフトの開発」

進歩賞

・藤井隆志氏(新日鐵住金 技術開発本部 先端技術研究所)
業績「斜め堆積/アノード酸化プロセスによる超撥水・超撥油表面の創製」
(表面技術 第60巻 第3号 166~169頁 ほか)

・望月千裕氏(日立製作所 情報・通信システム社 マイクロデバイス事業部 ミックスドシグナルLSI設計部 技師)
業績「電析Pd-Ni-P金属ガラス皮膜の作製および熱処理に関する研究」
(表面技術 第63巻 第5号 323~328頁 ほか)

技術功労賞

・白鳥晋一氏(JFEスチール スチール研究所 表面処理研究部)
・田上忠晴氏(同 缶ラミネート材料研究部)
・中尾善之氏(日鐵テクノリサーチ 君津研究試験センター 研究試験機 後処理めっき系班長)※新日鐵住金より出向中
・橋本 保氏(ユニゾーン 常勤顧問)
・宮川昌明氏(日本パーカライジング 技術本部 製造部 関西工場 工場長)

会員増強協力者

・板垣昌幸氏(東京理科大学 理工学部)
・佐々木成朗氏(成蹊大学 理工学部)