物質・材料研究機構(NIMS)と東京医科歯科大学は、骨との結合が3倍速くなるコーティング法の開発に成功した。
矯正歯科用骨膜下デバイスは生体への侵襲が小さいという点で優れているが、骨の表面上で骨と結合する必要があるため、水酸アパタイトのコーティング処理をしても、治療に利用出来るまでには最短でも3ヶ月程度の待機時間が必要だった。そこで、この時間を短縮するために、物質・材料研究機構と東京医科歯科大学は共同して、デバイスの形状の最適化と新しいコーティング法を共同で開発したところ、従来のデバイスの3ヶ月後と同じ骨被覆率を1ヶ月で実現するコーティング法を確立した。
図:ラットの骨膜上に4週間埋植した後のチタン金属と骨の接合強度 今回開発したコーティング手法は、チタンに水酸アパタイト/コラーゲン骨類似ナノ複合体(HAp/Col)をディップコーティングする手法。HAp/Colは、物質・材料研究機構が東京医科歯科大学とともに開発した材料で、その人工骨としての有効性は、すでに臨床試験において多くの患者で確認されている。このコーティング手法の有効性は、直径0.5mm、長さ12mmのチタンワイヤーに水酸アパタイトをコーティングした材料(従来の製品に対応、以下HAp)や何も処理をしていないチタン金属(以下未処理)を比較対照として、材料を骨膜下に埋植する動物実験で確認した。接合強度をせん断強度試験にて測定した結果、図に示すように接合強度が未処理で2.8NであったものがHApでは6.0Nと2倍の改善を見せているが、さらにHAp/Col では16.4NとHApと比較して2.5 倍以上、未処理と比較すると5倍以上の改善が認められた。
手術後4週間の組織標本写真。上の二つはチタン材料(黒)と骨組織(茶色く染まっている)の間に軟組織(ピンク色に染まっている)が介在しているが、下のHAp/Colでは材料と骨が直接結合している。
今後は、実用化を目指し、企業との共同研究もスタートする予定で、所期の目的である歯科矯正用骨膜下デバイスだけでなく、人工歯根、人工関節など様々な分野での応用が期待される。