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SEMICON Japan 2024

 

シェフラー、厚さを数μmまで減らした約20種類のコーティング溶液を含むモジュラーシステムを開発

 シェフラーの表面技術センターは、厚さを数μmまで減らした約20種類のコーティング溶液を含むモジュラーシステムを開発した。このモジュラーシステムは、あらゆる要件に最適な溶液を提供するものだという。コーティングシステムを生み出すにあたり、同社のさまざまな事業分野の専門家が吹き付け、塗装、電気化学成長、物理気相成長(PVD)、プラズマアシスト化学気相成長(PACVD)など、幅広い手法を持ち寄った。

 シェフラーAGのCTO(最高技術責任者)で執行役員を務めるペーター・グッツマー氏は、製品開発における表面技術の重要性について次のように話している。「今日のシェフラーにとって、コーティングは、高い品質要件と密接に関係し、競争上の明らかな強みとなる設計、製品要素になっています。コーティング技術は、高い品質、継続的な改善、一貫した革新的な考え方という弊社の3つの基本原則を反映しています。この技術が弊社に非常に適合しているのは、そのためです」。

 同社において現在、コーティング技術が最も頻繁に使われている領域は自動車エンジニアリングで、特にタペット、ピボットエレメントなどのバルブトレイン部品で使われている。コーティングにより、カムシャフトと接触したときに発生する摩擦を最大50パーセント減らし、その結果、燃料の消費を減らすことができる。しかし、同じく同社が集中的に取り組んでいる電気駆動装置では、コーティングの要件が大きく異なる。酸化アルミニウムを使用したセラミック絶縁被覆は、さまざまな部品を電流から守る。セラミック絶縁被覆がなければ、強電流により、金属の溶解、潤滑油の急速な劣化、最終的には軸受の破損が引き起こされる可能性があるためだ。

 電車車両では、さらに高い電流が発生するため、電車車両でのコーティングの最も重要な役割は絶縁を提供することだという。また、腐食および摩耗保護、摩擦の最小化も鉄道車両では重要なパラメーターとなる。これらにより、たとえ潤滑が不充分でも、軸受の機能が確保され、湿気や汚れがあっても、軸箱軸受などで腐食が発生し、損害を与えることはほとんどないという。

 風車では、外径最大4mのころがり軸受が使用される。風力発電分野でのコーティングの最も重要な役割は、摩擦を軽減し、突然のタービンの起動時に高いすべり耐性と絶縁性を提供し、軸受を電流から守ること。同社は、エポキシ樹脂に浸したガラス繊維を使用し、最高20,000Vの電圧から軸受を守る発電機用軸受などを提供している。

 航空宇宙事業分野では、極めて高い安全要件が求められる。たとえば、エアバスは同社の旗艦旅客機であるA380にシェフラーの軸受を採用した。シェフラーは、A380のエンジンの三つのシャフトで使用されるメインシャフト軸受および多くの回転対称部品を納品しており、最大五つの異なるコーティングを施している。

 シェフラーの表面技術センターの所長であるティム・ホーゼンフェルト氏は、このようなコーティングへの需要は高まっていると述べる。「メカトロニクスシステムが普及すれば、当然のことながら、データ収集、信号処理のためのセンサー特性のニーズなど、コーティングに対する要求も変わります。Sensotectコーティングシステムでは、部品をセンサーに組み込んだり、センサーを部品に組み込んだりすることが可能です。さらに、被覆の厚みがわずか数μmのころがり軸受は、移動力に加えて、トルク、力、膨張、温度といった物理的な値を記録し、伝送します。これにより、車のトランスミッションや車輪軸受などの軸受荷重を絶えず測定、監視することができます。現在の傾向を踏まえると、このような追加情報の重要性は高まる一方です」。

 また、ペーター・グッツマー氏は、センサー技術に大きな可能性を見いだしており、「これまでのところ、先行開発の成果は上々です。機能開発は次の段階に進み、近い将来、シェフラーはセンサーコーティングを使ってデータを測定、伝送するころがり軸受を提供することでしょう」 と述べている。