大同特殊鋼( http://www.daido.co.jp )は、スリムバッチ真空浸炭炉「シンクロサーモ」の販売を開始した。
同品は、ギヤなどの浸炭処理品を平面的に並べた1枚のトレーを1バッチとして取り扱う。処理はギヤの1バッチで10~30個、重量で最大50kg。冶具を段積みして大容量のバッチを構成する従来型の浸炭炉と比べて1/10以下のスリムバッチ化を達成し、必要な時に必要な量だけ熱処理する「オンデマンド熱処理」を実現した。その結果、従来前後の加工工程間で発生していた中間在庫が削減される。また、窒素を用いた加圧ガス冷却方式の採用により、クリーンな生産ラインを構築できる。さらに、従来機のレシピ(熱処理条件)計算ソフト「浸炭くん」、操業支援システムなどのスキルフリー化機能を継承することで、生産ラインのスムーズな立ち上げを実現する。
従来型のガス浸炭炉は高温かつ爆発の潜在的リスクを抱えているため、前後の加工工程とは別の建屋に設置されることが多く、また、雰囲気ガスの微調整など処理品の品質に影響する設備の管理項目を現場の熟練作業者に依存する体制が課題とされてきた。一方、真空浸炭炉は、周囲への放熱がなく、爆発リスクが解消されたため、加工工程と同じ建屋内に効率的な生産ラインを構築することが可能となった。また、レシピ計算ソフト、操業支援システムなどのスキルフリー化 技術の開発により、熟練作業者への依存度が軽減されたという。
浸炭の前後工程である機械加工工程、さらに上流の鍛造工程では処理品が1個単位で流れるため、最近では、熱処理工程においてもバッチの大きさを極力小さくしたいというニーズに対応可能な真空浸炭炉が求められていたという。
同品は、ドイツALD社が開発した基本技術をもとに、大同特殊鋼が日本市場向けにカスタマイズして設計・製造する。今秋には同社滝春テクノセンター(名古屋市南区)にシンクロサーモの実証炉を設置し、見学・試作などの受け入れ体制を整備する。