熱処理などで使用される工業炉・熱技術や関連機器の展示を行う「サーモテック2013」が、日本工業炉協会の主催で7月3日~5日の三日間、東京ビッグサイト東4ホールで開催された。サーモテックは、国内唯一かつアジア最大規模の工業炉・関連機器の見本市。1993年の開催以来、4年に一度開催されている。第6回目を迎える今回は「環境・熱・未来~見つけよう!熱技術の可能性~」テーマに、過去最大規模となる198社(国内180社、海外18社)が出展、三日間を通して約19000名を動員した。
当サイト関連では、独・スタンゲ社の製品を国内やアジアで販売している日本エス・テイ・ジョンソン商会がガス窒化・軟窒化炉の完全自動制御システムや窒化シミュレーションソフトウェアなどを紹介。シミュレーションソフトウェアは、窒化・軟窒化・酸窒化表面熱処理による鋼表面に形成される化合物層の厚さをコンピュータ上で予測する。パソコン上で窒化処理の処理パラメータ(温度、時間、ガス量、窒化ポテンシャル、カーボンポテンシャル、酸化ポテンシャルなど)を最適化に利用することで、処理のパラメーターを変更する際、つぶさにその効果を推測し、窒化処理の実感を得ることができるという。
オリエンタルエンヂニアリングのブース オリエンタルエンヂニアリングでは、制御技術を中心に、新センサ、全自動監視装置、最新設備パネル、PCVDコーティングなどのパネル展示を行った。中でも注目を浴びたアルミ、亜鉛、マグネ金型用の新表面処理「ブラックパールナイト」は、ヒートチェック対策として、金型表面に窒素濃度と深さを最適に制御した窒化拡散層を形成させている。また、その窒化層の上層には、黒色の焼付き、溶損、溶着、酸化、離型に効果を発揮する層を形成させている。この上層の黒い層は従来のPVD法等によるセラミックコーティングと違って熱膨張、収縮する金型母材と追従しやすいためクラックが入りづらく耐久性を向上させることができるという。この処理は同社で受託加工を行っている。
光洋サーモシステムのブース また、光洋サーモシステムは、浸炭・焼入れ炉、焼きなまし・焼結炉、真空熱処理炉などの紹介を行ったほか、自社ブース内で「熱処理の小規模化」、「真空浸炭」、「超高速浸炭」、「高性能断熱システム」についての講演を行い、多くの聴講者を集めた。
不二越のブース 熱処理以外では、不二越が真空脱脂洗浄装置「クリーンマスターJ」の実機を展示。金属熱処理の洗浄工程において炭化水素系溶剤を用いて油汚れを除去する同装置はシャワー、ジェット、スプレー、ベーパーの4種類の洗浄が行える一室横型の洗浄装置で、減圧下で安全に脱脂から乾燥までを自動で行なえるという。また洗浄液の保有量は280L、熱媒体油340Lと同社の浸漬方式の洗浄装置に比べて1/3以下に短縮している。さらに設置面積においても約35%の縮小が可能となり、省スペース化ニーズに対応している。同社では同装置のほか、熱処理炉やPVDコーティング装置など表面改質全般に渡っての提案を行った。硬さ基準片の専門メーカーである山本科学工具研究社は、圧子を試料に押し込み、材料の硬さを評価するナノインデンテーション用超微小硬さ基準片を紹介。この基準片は、押込み深さが1μm以下の領域を対象としていることから、組織の均一性や再現性に優れたタングステン単結晶材を用いており、試験面内の回転角度に対する依存性や個々の試験片のばらつきが少なく、均一な特性を有していることが特徴だという。同社では商品である基準片の紹介だけでなく、ロックウェルやビッカース、ブリネル、ショアといった様々な硬さの換算表を無料配布した。