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SEMICON Japan 2024

 

産総研、ウエハー常温接合のための原子レベル表面平滑化プロセス

 産業技術総合研究所は、ネオン高速原子ビームを用いてシリコンの表面を平滑化することで接合部のひずみを大幅に低減させ、高い信頼性のマイクロデバイスが作製できる表面活性化常温接合プロセスを開発した。

 表面活性化常温接合はMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)封止やMEMS・IC集積化のためのダメージが低い接合技術として注目されている。しかし、接合表面には原子レベルの平滑性が求められるため、MEMSやICの作製プロセスにより接合面の表面粗さが悪化してしまうと、接合部のひずみが大きくなりマイクロデバイスに悪影響を及ぼす、あるいは接合すらできないという課題があった。今回、荒れてしまったシリコン表面に対しネオン高速原子ビームを用いて表面を平滑化すると、接合部のひずみが低減して接合強度が向上することを確認した。

 これまでの実験によりイオンビームによる精密加工の研究から、軽い元素を用いるとシリコン表面を荒らさずスパッタリングによる除去ができることが分かってきた。そこで、不活性ガスの中でも比較的軽い元素であるネオンを高速原子ビームのガス種として、既存の表面活性化常温接合装置を用いて、表面活性化常温接合への適用可能性を評価した。その結果、シリコンのバルク強度に匹敵する接合エネルギーが得られたという。これは従来のアルゴン高速原子ビームを用いて接合を行った場合と同程度であった。

 さらに、MEMSデバイスの作製を想定して、ドライプロセス(キセノン高速原子ビーム照射)により表面粗さ0.40 nm rmsまで荒らしたシリコン表面にネオン高速原子ビームを照射して、表面の平滑化を図った。その結果、ネオン高速原子ビーム照射と共に表面粗さが小さくなり、最終的に表面粗さ0.17 nm rmsにまで平滑化が可能であった。この表面粗さの値は、CMPにより研磨されたシリコンの表面粗さと同程度であり、ネオン高速原子ビーム照射により非常に平滑な表面が得られた。

 このプロセスにより、従来は接合が困難であった粗さの大きなシリコン表面でも接合が可能になるとともに、接合部のひずみの低減によるマイクロデバイスの性能向上が期待される。なお、この技術は既存の常温接合装置を改造することなく適用可能であるという。

平滑化が不十分なシリコン表面同士の接合界面(a)とネオン高速原子ビームにより十分に平滑化されたシリコン表面同士の接合界面(b)。透過型電子顕微鏡により観察したもので、シリコンの接合界面付近の白黒のコントラストがひずみを表している平滑化が不十分なシリコン表面同士の接合界面(a)とネオン高速原子ビームにより十分に平滑化されたシリコン表面同士の接合界面(b)。透過型電子顕微鏡により観察したもので、シリコンの接合界面付近の白黒のコントラストがひずみを表している